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【完結】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀  作者: 黴男
シーズン1-クロトザク戦線

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sub-02 こうじょうけんがく

ザヴォートへと着艦した俺たちは、職員用通路を辿り中央制御室へ進入した。

基本はオーロラが運用しているこの工城において、この部屋は新たな製造プランの作成と設計図の読み取り専用の場所となっている。


「凄い数ですね...」

「文字が浮いてる!」


戦闘指揮所とは違い、ここは一人でも動かせるようになっているため、席は病院の待合室みたいな長いのが一つ。

空中に浮いたモニターを、空中に浮いたコンソールで操作する。

まあ、基本はオーロラに指示するだけでいいんだが。


「オーロラ、工場見学がしたいんだが」

『お任せください』


この工場にはメンテナンス用の通路が張り巡らされていて、オーロラはその経路を作ってくれた。

すぐに迷うほどに入り組んでいるからな...


『先程の職員用通路に道をあけておきました』

「わかった...行くぞ」


俺たちは通路を戻り、途中に開いていた穴から工場内部へと侵入する。


「緊張するか?」


楽しそうなネムとは逆にルルは猫耳が伏せられていたので、俺は聞いてみる。

強制するようなことではないしな。


「いいえ...その、怪物のお腹の中みたいで...」

「ああ...分からなくはないな」


宇宙空間に音が響かない以上気付きづらいが、ザヴォートの内部では常に機械音がしていて、彼女たちの可聴域でしか聞こえないような電子音や、遠くでの作業の音が反響しているはずだ。

それはまるで、怪物の胃袋の中にいるような気分だろう。


『ようこそザヴォートへ。今日はフリゲート...フェイルノート級の製造現場をお見せいたします』

「任せた」


俺たちは経路を辿り、組み立て場所に到着する。

そこでは、無数の部品が組み立てられ、ある場所に集結していた。


『フレームは金属ですが、高速形成装置で作成し、部品と合体させることで仮組みを終わらせています』


どういう技術なのか熱された金属が内部フレームを形成し、ほぼ瞬時に冷えて完成する。

後は装甲の取り付けだけである。


「部品の組み立て場も見たいんだが」

『お任せください』


俺たちは通路を少し戻り、板渡しになっている橋を渡る。

渡り切ろうとしたところで、対岸でルルが固まっているのを見た。


「ネム、しばらくここにいてくれ」

「うんっ!」


俺はルルの所まで戻る。


「やっぱり怖いか?」

「い、いいえ!」


まあ、怖いよなぁ。

ホールドスターの修理中に慣れたけど、ここも落ちたら死ぬレベルで高い場所だ。

空調の関係上、風も吹いていてもし吹き飛ばされたら――――と考えると渡れないだろう。


「......嫌がらなきゃいいんだが、俺にいい考えがある」

『司令官、それは大抵うまく行きませんよ』

「....なんでお前がそのネタを知ってるんだ」


このまま問答していても仕方がない。

俺はルルを抱きかかえる。


「あ、あのっ!?」

「勇気はいくらあってもいい!」


俺は橋を渡り、対岸まで向かう。

そして、降ろした。


「どうだ? 危ない橋は渡ると怖くなくなるものだ」

「....その、ありがとうございます」


残念そうにお礼を言われた。

何なんだ....とはいえ、父親になったようで新鮮だな。

結局、どんなに強い武器を持っても、どんなに満ち足りた生活があっても、隣に生きた人間がいないと退屈なんだとよく分かる。


『こちらが部品の生産ラインになっております』

「なるほどな」


俺たちの前で、螺旋状に連なる生産ラインが動いていた。

上から下へ、部品の一つ一つでしかなかったものが組み合わさり、下に行くにつれその形がはっきりしていく。


『ここでは時間ごとに部品の生産ラインを変えています』

「なるほど、効率的にはどうなんだ?」

『同時生産も可能ですが、フルに回すと燃料消費が増大するため、今は一つの生産ラインのみで行っています』

「そうか」


クロトザク戦線だが、損耗が無いためそこまで急ぐ必要はない。

正直なところ、ここまで慎重に進める必要あるか? とは思うのだが、長期作戦の会議をしていると、いつもオーロラが「そんな単純な作戦じゃないですよね? ね?」みたいな視線を向けてくるので、無駄に精密な戦略を練らざるを得ない。


『これで工場見学は終わりですね』

「いや、待て」


装甲の取り付けラインを見終わった俺たちだったが、俺はまだ満足していない。


「ドローンと戦闘機の製造ラインを見に行こう」

『.....現在戦闘機の製造は行っていませんので、緊急で生産ラインを動かしますが、よろしいですか?』

「ああ、構わない――――折角だから、特殊機体でも配備するか」


俺はディスプレイを操作して、Noa-Tunから設計図を転送する。

「スワロー・エッジ」という、高機能戦闘機だ。


『何にお使いになられるのですか?』

「俺が乗りたいなあって」

『後で練習できる環境を整備いたします』

「頼む」


俺たちは工場を下まで降りていく。

そこでは、ドローンの製造が行われていた。

大量生産、大量消費を主とするドローンは、先程までの艦船よりも高速かつ精密な作業で次々と作られていた。


「ここが、あの天使たちの生まれる場所なのですね」

「ああ」


天使というか、どちらかと言うと殺戮の悪魔のような気もするが、説明するのが面倒くさいので訂正はしない。


「お姉ちゃん、天使って食べられるのかなぁ....」

「お腹が空いたの? 大丈夫、帰ったらご飯だと思うわ」


この姉妹は微笑ましい。

だけど、これでも両親がいないんだよな.....


『こちらが、戦闘機の生産ラインですね』

「お、始まるぞ」


戦闘機の生産は、先程のドローンの簡易版だった。

「スワロー・エッジ」は、SSCの限定コンテンツ「移動帝国交錯」で得られる超が付くレアな設計図を使って作るモノだ。

軽量化と高速化のため、装甲は殆どなく、代わりに通常の戦闘機よりも強力なシールド出力と、バカげた機動力を持っている。

まあ、ホントに高いんだが........


「俺が乗るなら凄い戦闘機じゃないとな」


絶対生き残れないとまずい。

俺が出撃するような状況なんて、そうそうないと思うけどな。


「かっこいい.....」


その時、ルルが目を輝かせていた。

俺が視線の先を見ると、戦闘機だった。


「乗りたいか?」

「はっ....いいえ、神の馬に乗るなんて....」

「神の馬じゃないが、乗りこなすのは難しいかもしれないな」


神馬はダメだって。

変な金色の置物を買わされるからな。


「.....もし乗れる事があったら、乗ってみたいです」

「そうか」


俺は頷く。

スワロー・エッジは赤の他人に渡すものではないが、ルルは家族だ。

彼女が乗りたいのなら、乗せてやるのがいいだろう。


「オーロラ、スワロー・エッジを紺色に着色しろ。ルル専用機だ」

「あ、あの!?」

「安心しろ。勝手にいなくなったりはしない」


彼女が乗れるようになるまで、スワロー・エッジはずっと格納庫にいるだろう。


『それでは、ザヴォート工場見学はこれで終わりです。これが記念品です』

「記念品まであるのか....」


俺たちは、それぞれ同じ場所が欠けた歯車を貰う。

作業機械の摩耗でこうなったんだろうな。


「えへへ、お姉ちゃん、シンさま! お揃いだね!」

「ああ、お揃いだな」

『お帰りはあちらです』


オーロラに先導され、俺たちはシャトルへと戻るのだった。


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