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【完結】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀  作者: 黴男
終章

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236-罪と罰

ケテルが放った拳は避けられた。

流石、流歌だ。

その身体能力は野生の獣にも勝る。

だが、それを読んでいない俺ではない。


「甘い!」


俺はケテルの両肩に装備されたミサイルポッドを起動する。

計36発の破滅エネルギーが充填されたミサイルが起爆し、流歌を追い詰めた。

いつの間にか流歌は、両手に武器を持っていた。

棒から、碧い光が突き出た剣のような形状の双剣だ。

昔、何かのSF映画でそんな武器を見たような気がする。


「はぁあ!!」


唐突に、碧い光がブレる。

明瞭さを失ったその光が縦横無尽に走り、ミサイルの群を斬り払った。

成程、迎撃も出来るのか。


「なら...」


俺は『枢機握る破滅の手』を起動する。

本来この武器は、俺の力を増幅するものだ。

左手はあらゆる作用の破壊、右手は...


「死ね、流歌!」


万物の消滅。

右手から放たれた光を、流歌は回避する。

だが、掠ったマントが綺麗に消滅し、流歌はそれに驚いた様子だ。

すかさず俺は流歌へと肉薄し、殴打を喰らわせる。

先程とは違い、流歌は拳を跳躍して回避して、そのまま機体を登る。


「お兄ちゃんのバカあああああああ!」

「くっ! フロートシステム起動!」


俺はケテルの背にある六対の翼を起動する。

流歌からは、翼が緑色に輝いたように見えるだろう。


「きゃあっ!?」


俺は機体を上昇させ、乱暴に流歌を振り解いた。

彼女の体が落ちていくのが見えた直後、流歌は仮面を解除した。

何をする気だ、俺がそう思った時。

蒼雷が流歌の周囲に巻き起こった。

キネス能力だ、そう思った瞬間に、俺は機体のシールドを全開にした。


『シールド、残り20%』

「チィ!」


直後、稲妻が走りケテルのシールドが大きく減衰する。

これが流歌の力か....


「大きすぎる.....修正が必要だ」


俺は呟く。

同時に、コンソールの下部を操作し、とある機構を作動させた。

次の一撃を受ける前に。


「起動――――『因果はわが手に(キネスキャンセラー)』」


俺の力は、破壊と破滅を司る。

それが滅ぼせるのは、全てだ。

キネスとて、例外ではない。

俺は流歌が放った雷を、俺の力を振るって消し飛ばした。

同時に、流歌が「起動」していたキネス能力が解除される。


「なんで!?」

「さぁな」


俺は流歌に右手を向け、放った。

外れたその攻撃は、壁を消滅させたりはしない。

この場所は全部、対キネスコーティング材で出来ている。

艦船に塗布する程度しか確保できなかったのは、このフィールドがアルテアの半身部分をそのまま使った合金で出来ているからだ。


「......」


ケテルは回し蹴りを流歌に食らわせるが、流歌はそれを空中で止めた。

これもキネス能力の一環らしい。


「稲妻を出すだけじゃないんだな」

「私のキネス能力は――――”万能”。既にある能力以外の全てを使えるんだよ、お兄ちゃん、だから私を捨てないで....」

「その力は危険すぎる、排除しなければ」

「どうして――――」


流歌の声を無視し、俺は再びミサイルを放つ。

逃げ場を失った流歌は、全方位に雷を放ってミサイルを排除する。

その雷が俺に到達する前に、俺は『因果はわが手に』でそれを消し飛ばす。

まるで、陣取り合戦のようだ。

流歌が稲妻で場を埋め尽くすか、俺が全てを消し飛ばすか。


「お兄ちゃんはやっぱり....ッ、いつだって強いね」

「そうか?」

「私は厳しい修行のうえで、ここに立ってる。キネスマスターの称号も貰った。でもお兄ちゃんには敵わない。だってお兄ちゃんは、努力の人だから」

「俺の努力なんて、天才のお前の一歩に比べたらカスのようなものだ....俺はそれが、憎い!」


本当は分かっている。

努力はその結果ではなく、積み重ねた事実こそが重要だと。

天才に勝てないのは事実であり、しかし秀才になる事は出来た。

だが、それでは意味がないじゃないか。

俺は流歌の汚点になってはいけないんだ。

なっては....


「いけないんだあああああああああああッ!!」


ケテルの両腕から展開された発射口から、爆雷が飛び出す。

予想外の攻撃に流歌が止まった隙を突き、俺は左手を流歌に向けた。


「え....ウソ!?」


放った光は、流歌の全身の装備の機能を停止させる。

光の武器も、シールド発生装置も、その全身に目立たないように着込まれたパワードスーツもだ。

爆雷に囲まれた流歌は、キネスに頼るしかない。

その選択肢を、『因果はわが手に』で――――


「負けない......私はお兄ちゃんと、一生幸せに暮らすんだ!!」


俺の力が押し返された。

碧い雷が広間中を覆い尽くし、爆雷も、ケテルのシールドも吹き飛ばす。

収束した雷は、球体となってケテルへと飛んだ。

俺も『因果はわが手に』の収束率を上げて、その雷を左手で掴んだ。

だが、


『左腕部、中破しました』

「なっ!?」


受け止めきれなかった。

左腕部が雷によって打ち砕かれ、ボロボロになる。

後一発撃てるかどうかの瀬戸際だ。

仕方ない。


「幸せに.....? お前は、俺と幸せに暮らす気なのか?」

「え...そうだけど」

「最も罪深い男と、か?」

「罪って......何?」


俺は誰にも言わなかった事実を告白する決意をした。

俺が誰も信用できなくなったその理由を。


「父親がいただろう」

「うん」

「彼は――――俺が殺した」

「え――――」


正確には、俺が殺されかけた、とも言う。

だが、事実としては俺が殺したようなものだろう。


「あのゴミは、あろうことか流歌を普通の小学校に通わせるなどと宣ったんだ。だから俺は、あのゴミに対して、ありとあらゆる精神攻撃を仕掛けた」


その結果は、実が腐るという結末で終わった。

あの父親は....


「俺を旅行に連れてってやると言って、山奥に誘い出した。そして、俺を人知れず殺そうとしたんだ――――だが俺は許せなかった。だから無力化して殺した」


俺の首を絞めて殺そうとしたあのクズは、俺が組み伏せた。

体格差など関係ない、関節の位置と力のバランスさえ分かっていれば困難な事ではない。

その後、その辺にあった石で昏倒させて、車に乗せた。


「警察は、崖下に落ちた車ばかりを捜索するだろう。俺は疑われもしなかった」


正直なところ、死体が発見され、打撲痕が見つかって居れば俺に疑いが向くはずだった。

だが父親の死体は、操縦席から飛び出して――――どこか深い暗闇に消えていった。


「だが、仕方ない事だったんだよ、流歌。罪は罪だけどな.....流歌は優秀な教師の下で然るべき教育を受けるべきだと俺は思った。だから、あの男は邪魔だった」


優しいだけのあのクズ。

なあなあで物事を済まして、何一ついい方向に向かう事がなかった。


「その後、俺たちは親戚のおばさんに引き取られたよな。おばさんを洗脳するのは楽だったが、お前は小学校で虐められたな」

「でも、全員やっつけたし.....」


妹は浮いた。

試験が必須の小学校に入れたのに、知識量も学習速度も、教師陣をはるかに上回っていたためだ。

当然、ガキどもにいじめられたが、自分で跳ねのけた。

これが、最初に「俺は要らない」と思った事でもある。


「とにかく、これが俺の罪だ。そんな男と、お前は一緒にいるべきじゃない」

「お兄ちゃん.....」


これで最後だ。

俺は拳を振り被る。


「――――お兄ちゃんは、宗教が嫌いだって言ったよね」

「? ああ」


だが、唐突に差し込まれた質問に俺は停止する。

脈絡のない質問だ。


「宗教は嫌いだ。自分の考えだけを押し付け、相手の考えには耳を貸さない」

「でもそれって――――お兄ちゃんの事だよね?」

「......何?」


その瞬間、俺は気付いた。

俺は流歌の考えを聞いていなかった。

全部流歌に押し付けて、俺だけがスッキリしようとしていた。

それは、確かにそうだ。

だが.....


「ああ、そうだな」

「分かってくれた!?」

「だが、お前の力は危険で、俺はお前を憎んでいて、俺は罪を背負っている」


言い訳を並べ立てて、俺は破滅願望に身を委ねる。


「勘違いするな、お前は俺を憎悪するべきなんだ。憎悪しないなら――――お前は異常者だ!」


俺は振り被っていた拳を、思い切り振り下ろした。


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