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【完結】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀  作者: 黴男
終章

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234-守るべき者の為に

流歌と狼頭の亜人....ファイス、そして全身鎧の大男、ケインは、Noa-Tunの内部に突入していた。

だが、彼等を阻むものは当然存在する。


「くッ.......子供を平然と!」


Noa-Tun内部には、訓練中の少年兵がいる。

シンはそれらを各所に展開し、「偶然」遭遇するように仕向けていた。

気絶させる余裕などなく、殺すしかなかった。


「ファイス避けろ!」

「なっ!?」


そして、奇襲するようにワームⅡが襲い掛かる。

精密射撃だが、ファイスには当たらず、ケインに到達する前に流歌がシールドで防いだ。

ケインが右腕を構え、機械腕の中で引き金を引いた。腕から放たれたイオン誘導式大電流が、ワームⅡを即座にショートさせる。


「行きましょう、時間がありません」

「ああ」

「そうはさせない」


三人が移動しようとしたその時。

別の通路から声が掛かった。

全員がそちらを振り向けば、そこには軍服を着た少女が立っていた。

雑に被った制帽は、頭にある角で抑えられている。


「...お前は?」

「オレはドライ、恨みはないが死んでもらうぞ」


それと同時に、ドライは半竜形態に変身した。


「...カル様、ファイス。ここは僕がやるよ!」

「だが...」

「僕に任せて! ...ここまで、来たんだもの!」


流歌とファイスは駆けていく。

全身鎧の男、ケインは、ドライに向き直る。


「行くよ」

「ガァアアアアアアアアッ!」


ケインとドライは、同時に衝突する。

両者の膂力は本来であれば、ケインが大きく負けている形になる。

しかし、ケインが装備しているパワードスーツは、王国製から大きく改良を重ねられ、今ではドライにも匹敵できる力を得ていた。


「!?」


押し返されそうになり、ドライは動揺する。

今まで、機械には負けたが、生身の人間に負けたことはなかったからだ。


「くッ!」


ドライは半歩退き、それから後ろへ大きく跳ぶ。

一度距離を取るための行動だったが、それはケインにとって好機にしかなっていなかった。

彼が右腕を構え、引き金を引くと同時に――――


「な、何....これは.....!?」


大電流が、形成された伝導層を通ってドライに到達する。

電流がドライの体を焼き、彼女は苦痛に耐えきれずに叫ぶ。


「がっ、ぎゃああああああああ!!」

「よし!」


ケインは、自分の武器にある程度の自信を持っていた。

人間相手でこれが効かなかった事は無い。

ドライもまた、未知の攻撃に対して苦しんでいた。

しかし。

だが。


「(こんなものか?)」

「(あまりにも......)」

「(生温い)」


ドライはそのうち、ある感覚に気付いた。

自らの主、シンに受けさせられた、実験という名の拷問。

その中で受けた苦しみに、永劫とも思える時間と回数受けたその苦しみ。

時間の加速した実験施設で、一日の流れる時間の何倍も受けた苦痛。

それに比べれば......大電流程度、大した痛みではないのだと、気付く。


「ガッアアアアアアアア!!!」

「えっ!?」


翼を広げたドライは、少し上に飛び出す。

そして、体内に溜めた空気を高速で後方に噴射し、ケインに向けて滑空した。

滑空と言っても、その速度は弾丸のようであり、動体視力は強化の範囲外にあったケインには予測不可能回避不可能の一撃となった。


「ッらァ!!」


ドライは壁にぶつかる直前で身を翻し、翼を畳んで壁を蹴る。

そのままケインに向かって跳び蹴りを喰らわせるが、ケインはこれを防ぐ。


「.....やるな!」

「ご主人様がよくやる動きだからね!」


ドライはそのまま、ケインの顎を蹴り上げようとしたが、ケインはこれを足で防ぐ。

彼女はもう片足で跳躍し、翼で一瞬浮き上がった直後、防がれた脚で一回、二回、三回と蹴りを入れた。


「(装甲材は、多分Noa-Tun基準のものより二段階下、衝撃ではなく切断に弱い....なら)」


蹴りを入れた瞬間の感覚だけを頼りに、ドライは相手の攻略手段を探る。

その時、ケインが右腕を構えた。

それは危機であり、好機。


「ッ、ォォォォォォオオオオオオオオオ!!」


巻き起こったのは衝撃波。

ケインが放った電撃が到達する前に、形成された伝導層が、ドライの咆哮――――即ち空気の爆発により押し流される。


「(本当はずっと、怖かった.......)」


ドライは戦いの中、そう空想する。

父親たちの独断で、里は滅びかけ、自分は果てない拷問に曝された。

その拷問を憎んだこともあったが、父親と自分たちの一族がやった所業を前に絶句した。

戦闘機を撃墜し、主人の妻を誘拐し、その配下の獣人を襲い、獣人族の女王に対して暴行を働いた。

挙句の果てに獣人国に対して侵略を仕掛けた。

力とは、振う者の意思に全て託される。

持たざる者に対して振るうのは、あまりに愚かだ。

ドライは、そんな大罪を犯した身内が居ながら、許されたのだ。

自分たちの一族が攫った獣人の少女、その少女自身の嘆願によって。


「オラアアアアッ!!!」


ドライは、床を踏み砕いて加速し、ケインの前に肉薄する。

そして、爪を伸ばしてケインに斬りかかる。


「なっ、えっ!?」


爪の一撃をガードしたケインだったが、切断に耐えられずにその腕に傷が入る。

それを見たドライはにやりと笑う。

彼女の中にある闘争本能が、そうさせているのだ。


「(オレは......いつだって爪弾き者だった)」


ケインの電撃波を躱し、ドライは回想に身を浸す。

女でありながら、戦闘系に生まれてしまった自分。

幼い頃から一緒だった友達と引き離され、自分は血で血を洗う種族の先鋭だと知らされた。

だからだろうか。

ルルに出会った時、戦いと凶暴さの中に潜んでいた、優しさが芽を開かせた。

それは身勝手な慈悲とも、強者の余裕とも揶揄できる。

しかし、それは戦士には不要なものだ。

特に竜人の戦士には。


「(蹂躙し、尊厳を奪い、苦しませ、そして殺す!)」


ケインのチェストプレートを蹴り砕きながら、父親から教わった竜人の教義を暗唱する。

竜とは圧倒的な存在である。

ゴミ虫にかける慈悲など無く、その必要もない。

敵対した時点で滅ぼす。

それ故に、自分たちはその教義をもってやり返されたに過ぎない。


「(でも、本当は......)」


花を愛でたかった。

他種族とも仲良くしたかった。

それは今でも叶わない願いだ。

竜人族は獣人から憎悪の対象になり、そもそも星空の帝王の配下の時点で恐れられ、同族からは恐怖の視線で見られる。

だが、それは当然の結果なのだ。

無限とも思える程の時間の増長の末に、強さに驕ってきた自分たちが掴み取った結果に過ぎない。


「これで最後だな」

「はぁ....そうみたいだ、やっぱりご主人様には敵わないや」


ケインのヘルメットが砕け、その顔が露になる。

青年の顔だ。

だが、その顔は死への恐怖でもなく、戦いの歓喜にも染められていない。

ただ、悔しそうな様子だ。


「負けるのが悔しいのか?」

「ううん、ご主人様みたいに、強くなれないのが....悔しいだけだよ」

「..........」


ドライは理解できなかった。

死ぬというのに、主に力で勝てないのが悔しい事なのか? と。


「どうして悔しいんだ?」

「だって........守るって言ったのに......守る人より弱かったら、意味がないでしょ?」

「.....!?」


その概念は、ドライの中には無かった。

自分が守るほど弱い者は、今まで会った者の中にはいなかった。

けれど、守らなくても、守りたいと思った人物ならいた。


「(ルル.......)」


地下牢で会った時、ドライはルルを守りたいと思った。

実際には守る必要がない程に、彼女は強かった。


「(ずっと気付かなかったのか)」


心は決まった。

ドライは床を踏みしめてケインに迫る。

ケインは右腕を構えるが、引き金を引いても電撃が出ない。

ドライはケインの右腕を掴み、床に引き倒す。

そして、爪を構え――――


「ごめんね」


その体を両断した。

ケインはそれに呆然とした顔をしながらも、最後の一瞬で笑って言った。


「押し入ったのは僕らだし.....いいよ」


ドライは自分が知らなかったことを知った。

それだけで良かった。


「.....戦闘指揮所に戻ります」


ドライはそう呟くと、廊下を戻っていった。







「ここが....」


流歌とファイスの二人は、巨大な大扉の前に立っていた。

流歌は自らの持つキネスの感受力で、シンの力の痕跡を追っていたのだが.....

戦闘指揮所ではなく、この場所に辿り着いたのだ。

扉は開いているが、先は霧に覆われていて分からない。


「.....っ!?」


その時。

流歌は霧の中に人影を見た。

その人影はどんどんと明瞭さを増し、そしてその人物が姿を現す。


「貴方は.....」

「私の名前は、アインス。.......貴方達を、ここで足止めするように命令されています」

「やるしかないみたい」

「そうですか...」


アインスが指を鳴らす。

すると壁が開き、ゲブラーとケセドが姿を現す。


「私の任務を全うします」


それと同時に、アインスの背後にタウミエルが降り立った。

アインスはそれに乗り、タウミエルがアイカメラを輝かせた。


「......流歌様、御先へ」

「ファイス.....」

「直ぐに追いつきます」

「分かった」


流歌はゲブラーとケセドによる威嚇射撃を容易に超え、扉の向こう、霧の中へと去っていく。

不満げなゲブラーとケセドに、アインスは微笑む。


「あの方が何とかしてくれます」


同時にファイスがゲブラーに襲い掛かるが、ゲブラーは盾で殴打を受け流し、そのまま床に組み伏せた。

爆音とともにゲブラーが吹っ飛ばされ、ファイスが起き上がる。


「どうやら、問答している時間はありませんね」


音を立てて、分厚い扉が閉まり始めた。

少しでも時間を稼ぐため、アインスは言った。


「扉を開ける鍵は私が持っています、もし主に手助けをしたいなら――――私の屍を越えていくことです!」

「言われなくとも」


スラスターを起動したタウミエルは、ファイスに向けて猛然と襲い掛かった。


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