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【完結】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀  作者: 黴男
終章

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232/247

226-結婚式-演説-

その日、獣人たちにとって、史上最大とも思えるその日がやってきた。

彼らが崇める獣神より高位の存在である星空の帝王が、自分たちの方法で結婚式を執り行うと言ってきたのだ。

準備はこちらでする、と帝王は言ったが、ティファナ女王はこれを却下。

少しでも御恩に報いるためと、まだ復興で忙しい中の獣人国を引っ張っての大事業が始まり、今日に至る。

これでも、普段軍役に出ている男衆が戻ってきているため、かなり余裕を持って準備することが出来たのだ。


「皆様、お集まりいただきありがとうございます」


ティファナは、式典会場の壇上で、集まった面々に頭を下げる。

規則正しく並べられた筈の席は、獣人たちによってくっつけられたり退けられたりしているものの、出席できる全員がそこに座っている。

端の方には指揮官用スペースがあり、そこでは全員が真剣な表情で座っている。


「...獣人は、虐げられる種族でした」


ティファナは目を伏せて語り出す。

騒いでいた獣人たちはそれを察して、一斉に黙り込む。


「人間を信じていたのに、人間は欲に塗れた種族でした。私達は追い詰められ、衰退しました。...ですが、私達は救われました。それが救いと思わない方もいるでしょう、しかし、確かに...救われたのです」


ティファナは閉じた眼窩に、さる日の光景を浮かべる。

食糧不足、奴隷として攫われ、消えていく同族たち。

そして、運命の日。

穢らわしい獣人を地上から抹殺すべく、六カ国が集い獣人国を包囲したあの日。

ティファナは、その日はまだ王でも何でもなかったのだ。

腕っぷしが強いだけの小娘であり、死を待つ事に怯えていた。


「あの日の光景を、私は恐ろしいとも思いました。あの空を飛ぶ天使には、矢も届かず、剣も通りませんでした。その代わり、轟音と共に人間が飛び散るのが見えました。光を放って、人間が焼け焦げるのも。...私達獣人が、束になっても敵わないでしょう」


ドローンは、人間達の抵抗の一切をシールドで無効化し、装備していたタレットで一方的に虐殺した。

それを見たティファナは、不気味な高揚感と、ざまあみろと思う感情、同時に恐怖を感じた。

それは「救い」だったのだろうかと考えたのだ。

ただ巨大な化物が、自分達ではなく、人間に牙を向けただけなのではないかと考えたのだ。


「けれど、それを使役するのは、星空の帝王様でした」


宇宙についての知識がないティファナは、シンの事をより神秘的に捉えていた。

しかし、同時に彼の本質を見抜いてもいた。


「彼の方に私たちを救うつもりは無く、同時に滅ぼすつもりもありませんでした。人間はただ、目障りだから滅ぼされたのです」


シンは獣人に対して興味があったものの、干渉を躊躇っていた。

だが、コミュニケーターとなった人物があった。


「ですが、ルルシア様やネムリー様が...怖くなった私達が、生贄にした...してしまった彼女達は、帝王様の慈悲をこちらへと向ける手伝いをしてくれました」


当時の長老達は、圧倒的な力を持つ帝王に対して、献身と服従の意を示すため、亡き王の忘形見であるルルシア・レート・アールシアと、ネムリー・レート・アールシアを生贄として捧げたのだ。

しかし、星空の帝王は、彼女達を娶った。

それが同情か、それとも享楽の一環だったのか、獣人達には結局分からなかった。

ルルとネムは、窓口として機能し、シンが獣人達が庇護を受けるための条件を提示する結果に繋がった。


「戦士達の犠牲と共に庇護を受けた我々は、自然と共に生きる事を許されました。他国から侵攻される事なく、平和に暮らせると...そう思っていました」


しかし、当初は彼らにとって遠い星空の出来事であった戦争。

それは、イルエジータにも身近になった。


「エミドの侵攻。それによって私達の大地は焼かれ、腐り、多くの民が死にました」


無論、それは人間も例外では無い。

多くの人間の国家が、エミドの侵攻に巻き込まれ滅んだ。


「たった数ヶ月前の出来事です、忘れないでしょう、けれど...」


ティファナは顔を上げ、周囲を見渡すように促す。

焼け野原だった草原は緑を取り戻し、不気味に赤黒かった空は、澄んだ青色を取り戻していた。


「星空の帝王は、この星を蘇らせてくれました。これが、私たちにとっての二度目の救いです。かつての人間達の侵略よりも恐ろしい滅びに瀕した私たちを、彼の方は対価を求めず救ってくださったのです」


実際は子供を捧げてはいたが、彼等が無事に星空の城で生活しているのは獣人達も知っており、手紙が月に数度やり取りされている。

彼らが常に後ろめたい思いをしているのに対し、星空の帝王は常に堂々としている。


「――――さあ、これが我々の、与えられ守られてきた歴史の終わりです! 私たちは、これからも星空の帝王に報いるのです! .......ご清聴ありがとうございました」


ティファナは頭を下げる。

獣人たちがそれに拍手を捧げようとしたその時。

強い風が吹いた。


「おい!」

「あれ....」


雲間を切り、艦隊が降下してきていた。

純白に染められ、旗に似たデザインが各所にあしらわれている。


「さあ、宴の支度を」

「「「「「「「オオオオオオオオオオッ!!」」」」」」」


ティファナの命令で、獣人達が動き出す。

獣人式の、花嫁と花婿を祝う儀式が、今始まったのだ。


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