225-結婚式へ向けて
「ツェーンとツヴォルフが死んだか」
俺は呟く。
新規の指揮官だからあまり惜しくは無いんだが、人間として付き合っていくには癖がなく悪くない者たちではあったため、残念ではある。
『ですが、彼女たちが残した人格データと思考パターン、機体操作データのサルベージには成功しました。恐らく再現できるかと思われます』
「ああ、そうしてくれ」
特に思い入れも無いので、10と12はドローン指揮官でも構わないだろう。
俺はそう返すと、アドアステラの進行予測ルートに目を向ける。
「この分だと、二週間以内にユグドラシル星系周辺に到達するな」
『はい、既にユグドラシル星系への戦力集中を始めています』
「ああ」
俺は再び頷く。
現在ユグドラシル星系は、アドアステラの脅威に曝されているのと同時に、ある一つの大きなイベントのために動いている。
それは、俺とルル、ネムの結婚式である。
最初俺たちがこれを発表したとき、ディーヴァは文句を言うと思ったのだが....
『.......婚約者じゃろ?』
『ああ』
『だったら、祝うべきじゃよ!』
と、応えてくれた。
勿論、俺はそれを真意だとは思わない。
彼女を騙した形になったのだから、その思いにいつかは応えるつもりだ。
「獣人の中では一大イベントらしいな?」
『そのようですね』
元はと言えば、獣人から俺に生贄として捧げられた二人。
俺が苦情を入れて花嫁にはなったものの、正式な婚姻の儀式は行われていなかった。
だからこそ、俺が結婚の話に同意したことで、彼らの中での式典のような役割のイベントが企画されているようだ。
時間が無いのであまり大きな規模の事は出来ないのだが、しかし復興したイルエジータの豊かな自然を切り拓き、その式典に備えているそうだ。
カリブディス式典仕様の建造も始まっており、大きなイベントになると俺でもわかる。
だから、同時に....
「悔いは残らないな」
俺は、ザヴォートから出航していくヤハウェ級式典仕様を見つつ呟く。
こうしている間にも、時神の鍛冶場では対アドアステラ・流歌の装備が開発されている。
アルテアはキネス技術の神秘の塊だったので、有難く解体して素材にした。
どういう理屈か知らないが、彼女は死なないらしいのでバラバラ殺人のような光景であっても普通に喋る。
どうも本体は霊体に近いようだ。
ガンズ星系から回収したキネス能力者に実験を繰り返し、俺の能力でどんな事が出来るのか、装置などでどこまで引き上げられるのかを時神の鍛冶場の時間加速能力で短縮して行っている。
「......」
俺の乗機はケテル。
今まではアバター級の内部に組み込まれていたが、流歌に対する対策がある程度目途が立ってきたため、現在は秘匿ドックにて最終調整を行っている。
「そういえば、ネクサス防衛ビーコンの設置は上手く行っているか?」
『はい、準備は終わっています』
六つのビーコンを破壊されない限り消失しないフィールドで、アドアステラの侵入を防ぐ。
あの船は強いが、所詮一隻である。
流歌は絶対に、俺を狙ってくる。
他はどうでもいいのだから、ビーコンを破壊しに回るだろう。
そうしたら、P.O.D、A.O.I装備艦で囲んで轢き潰す。
……それで勝てるとは思えないが。
しかし、それは重要ではない。
「この辺で切り上げるか」
今日はルル達の衣装を選ばなければならない。
俺は報告書を一旦保存し、立ち上がった。
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