222-プライアリート追撃戦
プライアリート星系に入ったアドアステラは、包囲を躱しつつ惑星へと降下していた。
『状況は?』
『ギャラハッドを旗艦とするドラゴンスレイヤー艦隊が追撃中です』
アドアステラが降下しているプライアリートⅡは、分厚い氷が複雑な断層を形成する構造の惑星である。
アドアステラを追うのは、装甲型巡洋艦を旗艦としたドラゴンスレイヤー級駆逐艦である。
実体弾は大気中で減衰しないため、アドアステラ追撃に任命されたのだ。
『ポイントDに追い込みます、最終兵器『ジャッジメント』エネルギー充填開始』
あくまでも、地上でアドアステラを追うのは猟犬に過ぎない。
本命は、軌道上に展開する主力艦「プロビデンス」。
最終兵器を展開し、エネルギーを充填。
追い込んだ地点にそれを撃ち込み、アドアステラを吹き飛ばす算段であった。
『ポイントDを外れた....!?』
『――――敵に未来予知が出来るやつが居るな、コバルト、グノーシスを出せ』
『了解!』
軌道上にワープアウトする大きな艦影。
それは、超大型ミサイルを満載した主力艦であった。
『ランダム地点に大型A.O.I投下します』
フジツボのようにグノーシス級超大型戦闘輸送艦を覆っていた大型A.O.Iが剥がれ落ち、推進剤を吐き出させながら惑星へと落ちていく。
大型A.O.Iは、地面へと突き刺さると同時に炸裂し、半径一万kmの範囲を消滅させる。
アドアステラはそれを回避し、コバルト達が構築した「網」の中へと追い込まれていく。
『キネスを使わせろ』
『了解です! A.O.Iで囲みます!』
範囲内全てのものを消滅させるA.O.I。
それで包囲し、キネス防御を恣意的に発動させるつもりなのだ。
『A.O.I起動、アドアステラ...上方向に離脱!』
『キネス防御は未使用の模様』
『A.O.I発射中断! ジャッジメントを使用しろ』
シンの命令で、軌道上に居たプロビデンスが巨大なレーザーを放つ。
だが、レーザーを撃たれた瞬間、アドアステラはほぼ垂直に上昇、転進して大気圏を突破する。
『アドアステラ、ワープベクトルを確立中』
『ワープ先を特定します、ゼノシス発進』
現地に存在するストラクチャーである「ハウザー」から、ワープ妨害型戦艦「ゼノシス」が数隻発艦する。
二対のリングが左右舷に接合されており、それがワープ妨害の制御を担っているのだ。
『キネスキャンセラーは開発中ですので、不意打ちで仕留めてください』
『了解です』
ゼノシスは一斉にワープを開始し、アドアステラのワープ軸線上に展開すると同時にインターディクションフィールドを展開し、機雷をばら撒きながら離脱した。
『アドアステラを捕捉』
アドアステラがフィールド内に捕まり、接触した機雷が爆発する。
爆発は大したことがないものの、放たれた重力波がアドアステラのレーダーを一瞬阻害した。
近距離に出現したグレンライカ艦隊が、ボムを直接撃ち込む。
爆風に巻き込まれつつ、グレンライカ艦隊は半数を失って離脱する。
爆風の中から、ボロボロになったアドアステラが離脱する。
『メルディクション艦隊、遮蔽解除! 攻撃開始!』
メルディクション級戦闘偵察型巡洋艦。
それらが虚空から現れて、砲撃を左右からアドアステラに浴びせ掛ける。
アドアステラが一瞬輝くものの、メルディクション艦隊は墜ちない。
コーティングが、キネスによる攻撃を一瞬防いだ為である。
『このまま囲めば...』
『アドアステラ、ワープブースターの使用を確認。インターディクションフィールドを振り切られます!』
『くっ...!』
ここを抜かれれば、ビルジースプライムまでジャンプゲートを使わなくとも一直線である。
それだけは避けたいと、コバルトは焦る。
だが、アドアステラのワープ速度が先程より早く、ゼノシスでは回り込めない。
『コバルト、ビルジースプライムには指揮官が居ます。ここを突破されたのは残念ですが...』
『はい、お任せします』
どちらにせよ、ジャンプゲートは既に破壊されている。
アドアステラが移動するためには、二日という時間を要する。
『次こそは...』
『ええ』
コバルトはホログラムの唇を噛み締めた。
アドアステラを止められなければ、その船は喉元にナイフを突き立てる。
そんな確かな確信を抱きながら。
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