221-グンポート包囲戦
シン達が絆を確かめ合っている間。
コバルトはグンポート星系に軍を展開させていた。
ランスロット級戦闘巡洋艦とホーリーオーダー級要撃型巡洋艦、パラノイア級フリゲートで構成された中規模の艦隊が、グンポートを巡回しているのだ。
『ワープアウト反応を検知、星系内スキャン開始』
ゲートの周囲は、1m間隔でワープ妨害コアと推進妨害コアが展開されており、ここを通る唯一の敵――――アドアステラを確実に逃さないようにしている。
『位置を特定しました。ワープ軸線上にインターディクションフィールドを展開します』
バスチオンから出航した主力艦――――ビクトリオン級支援母艦が、インターディクションフィールドを展開する。
それに合わせ、星系中から集まってきた艦隊が一点に集中する。
『事前の戦闘よりデータ回収。敵は爆雷でインターディクションコアを焼き払ってくる可能性が高い。パラノイアを左右広範囲に展開する』
インターディクションフィールド内に、何かが現れる。
コバルトはそれが何かを確かめようとした。
その時。
『ッ、罠!』
それが爆発した。
重力振動が巻き起こり、艦隊とゲート周囲のコアが押し流される。
そこにアドアステラがワープアウトし、ゲートに向かって加速する。
『.....計画を修正します、起動』
直後。
ゲートがA.O.Iの白い光に包まれて崩壊する。
そうする事で、アドアステラは行き先を失った。
一瞬立ち往生するアドアステラに、パラノイアが飛び出してワープ妨害を仕掛けた。
『全艦攻撃開始』
現在前線に配備されている艦船は、全て対アドアステラ用の改装が施されている。
シールドに回す出力を極限まで抑え、全てのエネルギーを増幅器に通して膨大なものへと昇華し、P.O.Dの振動波を纏わせて放つ、アドアステラのシールドと装甲に対する最適解であった。
『砲撃により三隻をロスト』
『陣形変更、マルチ隊形を維持』
アドアステラのシールドは崩壊し、装甲をP.O.Dが削り取っていた。
速力を維持しながら、アドアステラは砲撃で艦隊を殲滅していく。
アドアステラをドローンが取り囲み、P.O.Dでその装甲を焼き払う。
修復される傍から燃えていく。
撃ち落とそうとも、代わりが現れる。
『終わりです』
最早アドアステラは完全に足止めされた。
装甲の修復が切れれば、船体がバラバラにされてアドアステラは沈むだろう。
『この程度ですか』
自らの主とオーロラが対策しろといった存在は、結局他の艦と何も変わらなかった。
コバルトは失望したようにそれを眺め、
『....!?』
そして目を見開いた。
アドアステラが光を放ったからだ。
噴き出した光は、艦隊の放つ砲撃を完全に防いでいた。
『有り得....ません......』
コバルトは、アドアステラに起きた驚異を即座に演算。
そして、絶望した。
防がれたエネルギーは霧散しているのではなく、完全に消失している。
『これが、理外の力....キネス』
シンが使ったそれを、流歌も持っている。
だがそれは、シンが持つものとはレベルが違った。
『シン司令官の能力は、あくまで消滅はさせるものの、熱量を消失させることはできない....しかし、熱量が完全に消失しているため、別系統の力と見るべきなのでしょうか?』
直後。
閃光が走る。
『全艦、ロスト.....!?』
全ての艦が艦体を貫かれ、動力を失って沈黙する。
アドアステラは光を失い、方向を変えてワープアウトした。
『有り得ない.....有り得ないのです......こんな事は』
過去に観測したアドアステラの情報から、対策を講じたつもりだった。
しかし、それはあくまで「アドアステラ」だけの力なのだ。
今起きた現象は。
「奇跡」と呼ぶほかないそれは、流歌が持つ力。
『敵の進軍地点を予測、艦隊を集結させます』
コバルトは、初めてアドアステラの危険性を認識した。
囲んで叩けばいい存在ではないのだと。
『分かっていただけましたか?』
その時、通信でオーロラが割り込んできた。
戦闘報告を受けてコンタクトしてきたのだろう。
『現在、ガンズ星系から回収したキネス能力者サンプルを消費して実験を行っています。時の揺り篭内部でキネス関連兵器を開発している最中ですので、少々お待ちください』
『宜しいのですか? キネスはまだ未知の力では....』
『素質さえあれば誰でも使うことのできる力のようですからね』
コバルトは帽子を被り直す。
それは、コバルトなりの困った表現であった。
『とりあえず、キネス防御コーティング材を前線に輸送します』
『ありがとうございます。』
アルテアの骨から削り出したという聖遺物の源を、コーティング材として運用する方針となったのであった。
実は、シンの破壊能力を一度だけ防ぐ事も出来るのである。
『では、私はアドアステラを引き続き追跡します』
『ええ。ただし――――撃沈だけはしないように。』
『はい』
必ず撃沈しろ。
しかし撃沈するな。
矛盾した命令を受けつつ、コバルトは敬礼をしたのであった。
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