219-電光石火の発進!
『アルゼンスキー造船所、放棄されてより221年経過していますが、現在内部に複数の熱源反応を確認しています』
ジャンプアウトすると、前に大きいシップヤードが見えた。
殆ど廃墟同然だが、サーマルビューを見れば内部に人間やアクティブな機械が存在するのは明白だ。
『どうされますか?』
「攻撃を開始しろ」
艦隊が攻撃を開始する。
シップヤードに攻撃が集中するが、どうやらフォースフィールドがあるようだ。
射撃が弾かれている。
強度が相応に高いようだな。
「......スカイスラッシャーを起動しろ」
『しかし、それではルカ様を巻き込むのでは?』
「知らん、やれ」
『はい』
赤黒い閃光が、フォースフィールドごとシップヤードを斬り払う。
爆発炎上するシップヤード。
そこに、容赦なく追撃を仕掛けていく。
『次元振動を感知、ワープドライブが起動する際特有のものです』
「両舷増速、シップヤードの出口に向かえ」
『了解』
アドアステラを逃してはならない。
あいつは必ず、他国に逃げてでも復讐に来る。
だが、他国に逃げさせてはいけない。
彼女は俺と直接戦わなければならない。
それが「計画」なのだ。
『アドアステラを確認』
「インターディクション・ランサー発射」
『インターディクションフィールド収束、照射します』
主力艦専用のワープ妨害装置で、アドアステラの動きを止める。
ここで撃墜する事も出来るが、それは違う。
『では、「煽り用ムービー1」を再生します』
煽り用ムービー1とは、ローカル通信での王国兵の断末魔の叫び声をコバルトが収録し、オーロラが繋げたものだ。
俺たちへの憎悪、王国への憎悪、母や友への懇願。
これを聞かせれば、流歌は怒るだろう。
そして、ムービー2に移る。
徹底的な調査により調べ上げた、彼女の親友、仲間、戦友、知己。
その全てが死ぬ様を、死んだ後の無様な死骸を。
全て集めたものを再生する。
実はさっきまで編集中だったが、王太子が死んだので最後のページを埋める事が出来た。
『お兄ちゃんッ....!』
「ああ」
そして、映像の再生は終わった。
ああ、流歌が怒っている。
お前は終ぞ、その顔を俺に向けなかった。
本物の怒りを、憎しみの混じったその顔を。
向けてほしかった、俺が本当に欲しかったその顔を。
「さあ流歌、これでも俺と戦わないと宣うか?」
『でも.....』
「迷うな、それともお前の仲間たちは、その程度の存在だったか? ......ある兄弟は、お前が無事だったことを喜んで死んだぞ。お前の友人だと譲らなかった傭兵は、ただの一撃で死んだ。この星系を治める――――お前を愛していた矮小な男は死んだぞ。最後まで騎士を演じて、殉じたな」
『......貴様ぁ!! ブライトエッジ子爵を....!』
「間男は黙って居ろ」
確か彼女の仲間の筈の男....ケインといったか?
どういう関係か知らないが、兄妹の会話に口出ししないで欲しいものだ。
「さあ、再びお前に問おう。俺と戦え、反論は許さない。お前は――――」
『戦うよ、お兄ちゃん。私は――――お兄ちゃんを止める』
「いい覚悟だ、お前を本拠地で待つ」
『アドアステラ、亜光速に到達。ランスを振り切られます!』
「追うな、今は逃がせ」
『はい』
ワープ妨害ランスを振り切ったアドアステラは、そのままワープに入りどこかへと消えた。
『良かったのですの?』
「ああ」
『妹君なのでしょう、司令官』
ジャンプで追って来たらしいビナーから、通信波が飛んでくる。
この反応、俺の真意でも覗いたか?
「俺の心を読んだな」
『申し訳ございません、つい』
「良い。他言無用だぞ」
『その慈悲に感謝を』
「知ったのならいい。帰還後、ツヴァイとドライ、ノルンを呼べ。それとなくだ。彼女らにも手伝わせる」
『はい』
俺はそう言った後に自分の手で通信を切り、オーロラに命じる。
「進路をユグドラシル星系へ。これが最後の戦いだ」
『分かりました、貴方の傍に』
アドアステラに備えるため、アバターはジャンプドライブを起動。
帰りはジャンプブースターは無い。
複数のストラクチャを経由しながらの帰還になるだろう。
いよいよ「計画」も大詰めだ。
俺がこの世界に来てから、ずっと布石を置いてきたそれ。
妹と会うか、元の世界に侵略の手を伸ばしたときに行うはずだったそれ。
それが、ついに終わる。
「空虚だったな」
俺は呟き、自室へ戻るのであった。
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