214-黒い死神たち
『VIGILANTS』。
それは、コバルトの制御下にありながら、自律戦闘を行う戦闘機群の事である。
大型母艦のホルスから、操縦席を含めて全て黒塗りにされた艦載機が次々と飛び出す。
そのデザインは、一般的な戦闘機のものではなく全翼機に近いものだ。
通常のスラスターに加え、二基のMSDを別個に搭載しており、通常航行速度が恐ろしく速いのである。
『攻撃開始』
ワープアウトしたVIGILANTS編隊は、一斉にMSDを起動。
たった一瞬で距離を詰め、下部に搭載した二基のブラスターから必殺の一撃を叩き込む。
傭兵の乗る船というのは、基本的に軍船とは大きく異なる。
火力に特化したり、速度に特化したり。
規格から大きくかけ離れた改造を受けていたりするものが多いのだ。
しかしその殆どは、戦艦以下のものであり、王国の戦艦より強いといった風ではなかった。
アプレンティス傭兵の強さは、船の強さではない。
対応力であった。
『撃墜』
『撃墜』
『三機撃墜されました』
味方を大きく失いながらも、傭兵艦隊はVIGILANTSの戦闘機を五機撃墜していた。
戦闘機の持つシールドは、巡洋艦レベルであるため、それを抜くのは容易な事ではない。
しかしそれをやってのけるのが、「レゾナンス」の対応力と指揮能力であった。
『プライマリ変更、旗艦を特定しました。集中攻撃!』
だが。
その対応力は、通常の相手...海賊を相手取る時にのみ有効なものだ。
続けてワープアウトした五十機のVIGILANTS編隊が動き出し、レゾナンス旗艦に肉薄、即座に撃破した。
その途端、艦隊の動きが一斉に乱れた。
明らかに統率を失っている。
『プライマリ変更』
次に狙われたのは、海賊の改造艦であった。
巡洋艦の火力タイプであったが、数十機に張り付かれて無事でいられるはずもなく、一瞬で残骸と化した。
『プライマリ変更』
次の標的は傭兵の中でも火力の分布レベルが一番高い艦であった。
これもまた、張り付かれるまでに二機を撃墜したものの、張り付かれた瞬間にシールドを抜かれて、物言わぬ残骸と化す。
『プライマリ変更』
最後の標的は、哀れにも状況に取り残されたゴールド傭兵の駆逐艦であった。
なんとかワープしようと試みるが、その前に到達した弾丸によって蜂の巣にされた。
『フリーファイア』
ついに、一方的な狩りの終わりの時である。
猟犬たるVIGILANTSの戦闘機は、それぞれが独自の評価基準で定めた優先ターゲットに向けて動き出した。
『戦闘終了』
そう長くは掛からなかった。
艦隊は壊滅し、ほぼ同時刻に最後のステーションが大量の死体を撒き散らして爆縮崩壊した。
ファラフォーム星系にNoa-Tun連邦に対抗可能な戦力はもう存在せず、惑星上の人間たちもただ死を待つのみである。
こうして、守護者を失ったかつての第二首都圏は、生命の息吹を感じさせない冷えた静寂に包まれるのであった。
『連邦軍全艦隊に通達。ファラフォーム星系は壊滅した。繰り返す、ファラフォーム星系は壊滅した。これより、我々は包囲網を形成し、王都オルトスプライム最終決戦を行う』
そして、アインスによる全体通達が行われた。
栄華を誇った王国も、今やたった一星系しか持っていない。
地球と同じの、未開の国家と同様であった。
「ようやくか」
『はい、少々手こずりましたが...』
「最後はあいつがどう出るかだな」
シンは呟く。
アドアステラがどう出るか、それ次第で今後の全てが決まる。
アドアステラは主力艦にも致命傷を与えられる存在であり、放置は厳禁だからである。
「これより連邦全域を最大警戒態勢へと移行する! 全艦隊待機状態! 首都星系への攻撃は六時間後に行う!」
シンはそう命じた。
ついに、一ヶ月にも渡る戦いに決着がつく時がやってきたのだ。
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




