211-決戦・風呂場大作戦(前編)
数日後。
一堂に会した指揮官メンツの前で、ディーヴァは堂々と提案した。
『シンの風呂を覗かんか?』
と。
当然、その場にいた面々は一様に同じ表情をした。
「こいつ何言ってんだ?」
といった風に。
だが、ホログラフィックのディーヴァは得意げに胸を張る。
『妾は知っておる、シンはいつも、裸体を見せぬ事を』
シンは立ち入り禁止の寝室で着替えるうえ、Noa-Tunの制御システムから独立したシャワーのみのシャワールームで体を洗う。
その為、指揮官たちは彼に何かしらの重い感情を持ちながら、その素肌すら見たことがないのである。
「ですが、シン司令官はいつものように....まさか!」
『そうじゃ! 今日はシンが前線に来る日じゃ...つまりは、指揮官用の共通浴場を利用するはずじゃ!』
ジスト星系に係留されたホールドスターに、シンが出向いてくる。
用事は不明だが、しかし、チャンスがあるのは事実であった。
この場にいるメンツは、
シンに直接口説き落とされたディーヴァ、
シンの妻としてもうすぐ思春期を迎えるルル、
内心で彼に恋するアインス、
同じく淡い恋心を抱くフュンフとゼクスであった。
まだ恋という感情を知らないネムや、ルルにしか興味のないドライ、王国人を殺すことに情熱を燃やすフィーアは呼ばれていない。
加えてズィーヴェン、アハト、ノルンはファラフォーム攻略戦に出ており、ツェーン、エルフ、ツヴォルフは復興した帝国のリゾート地のシエラ星系で休暇を楽しんでいる。
「だけど...」
「覗くより、いっしょに入ったほうが...」
『シンはああ見えて結構恥ずかしがり屋じゃぞ? 理由をつけて追い返されるに決まっておる』
「そうですね」
アインスはそれに賛同する。
シンは性に対して興味のない人間だが、それ故に軽率になり過ぎる事もない。
異性と裸の付き合いなどするはずも無いだろう。
「では、計画を立案しましょう」
アインスの言葉で、全員が頷く。
先ずは、シンの入浴時間についてだ。
『シンはのう...時間人間じゃからな、覗くにしてもかなり時間は限られるじゃろうな』
「シン司令官は連邦標準時06:30と22:00に入浴する筈です」
アインスはシンのガチファンの為、予定も把握している。
同時にルルも、競うように言葉を紡ぐ。
「シン様は確か、湯船があるお風呂だと15分くらい滞在する筈です」
「であれば、チャンスはあるでしょうね」
食い気味にアインスが頷く。
「現在時刻は15:00。ですから、準備を始めましょう」
「ええ」
三人は浴場に移動する。
男女に分かれてはいるが、指揮官権限を使って三人が浴場内へと入る。
車椅子のフュンフとゼクスはとりあえず、別室で作業用ドローンにアクセスし、それを浴槽の側に設置する。
『石像そっくりに塗るぞよ』
作業用ドローンはアインスによって固定され、塗装されて風呂場にだいぶ溶け込む石像と化した。
次に三人は、風呂場のホログラムに細工する。
『お風呂は15分まで!』というものを、『お風呂は30分浸かりましょう』に変えたのだ。
これでシンがそれに従うかは分からないが。
「後は、空調システムを調整しましょう」
湿度が一定以下にならないように調整し、もやが生まれないようにする。
そして最後に、シャワーのシステムを調整し、オンオフを遠隔で切り替えられるようにした。
「これで、嫌でもお風呂に入る筈です!」
『おぬし、中々恐ろしいことを考えるのう...』
発案者はルルであった。
喜ぶ彼女に対して、ディーヴァは僅かに引いていた。
作戦決行まで、残り8時間。
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




