183-前線、蒼、そして化身
SSCにおいて、大規模な艦隊を動かすことは大きなリスクを背負う事になる。
挟撃されたり、襲撃されるからだ。
しかし、ここで一つの要素が登場する。
それは、集結エリアの設定だ。
前線へのポータルを開ける圏内の星系にステージングエリアを設定し、そこに艦隊を移動させる。
勿論ジャンプポータルを使い、比較的安全にだ。
『ディースティナ星系への艦隊集合率は98%を完了しました』
「よし、上々だな」
既に現地にはアインスとツヴァイがおり、向こうの前線用自律AIとともに行動している。
『司令官は...その、本当に良かったのですか?』
「ん? AIの反乱なら問題ないと言ったはずだ」
『いえ、私というものがありながら、あのようなAIを...』
「必須だったからな、オーロラとの接続が切れたら前線は一気に困難に陥る」
少数で多数を運用するのは不可能だ。
だからこそ、オーロラよりも戦闘とデータ処理に特化したAIをオーロラから分離させる形で作成した。
「大体、コバルトはお前の娘みたいなもんだろう」
『ですが...』
『お呼びですかっ、司令官!』
その時、通信に元気な声が割り込んでくる。
同時に、空色の髪の少女のホロ映像が投影される。
「呼んでないぞ」
『失礼致しましたっ!』
彼女の名前はコバルト。
オーロラから分離した独立型戦術AIだ。
何でもできるオーロラとは違い、彼女の得意分野は戦術と戦略。
まあ、兵士の健康、メンタル管理も仕事の一端ではあるが、彼女にはオーロラのような慈悲はプログラムされていない。
一見すると親しみやすく見えて、その内面は酷薄で冷徹だ。
そうでもなければ、俺の「計画」における駒にはできない。
『そうですね...私の娘ではあるのでしょう、司令官』
「だろう?」
残酷で冷徹だが、信頼がおける。
話が逸れたが、まだ終わっていない。
ディースティナ星系に展開した俺たちの軍は、主力艦隊のうち二割ほど。
98%が通常艦船であり、残りの2%は全て主力艦である。
『それから、司令官。...第四指揮官の教育が終了したため、前線に向かわせました』
「ああ」
アインス、ツヴァイ、ドライ、そして...フィーア。
帝国の生き残りで、協力したいと言ってきたので再教育して指揮官にする事にした。
その教育期間が終わったということだろう。
彼女は俺とアインスの両方に忠誠を誓うように心に刻まれている、指揮官として在りながら、アインスの副官のような立ち位置でもあるわけだ。
本物のお姫様は羨ましいものだ、勝手に部下が付いてくるからな...
「アバター級の完成はいつだ?」
『少々お待ちを。...4日程後ですね』
「分かった」
とはいえ、俺も戦場に出なくてはいけないこともある。
兵士たちの士気向上、敵勢力の動きを阻害する...所謂「誘い」並びに現場の環境把握などなどのためだ。
そこで俺は、例え乱戦になったとしても生きて帰れる艦を設計する事にした。
コスト度外視の一品もの。
強襲型揚陸艦アバター。
換えが効かないという面では俺と同じだと思ったオーロラが、「化身」という単語から連想したAvatarという名前にしたそうだ。
大量の新装備と高コスト装備を詰め込んだ、鹵獲されたらどうするんだってくらいの船だが、マルクトとケテル用のホルダーがあったりして、一応戦闘に使うことは考えているのだなと納得させられる構成だ。
『生存を考えていらっしゃるなら、大型にした方が良いかと思いましたが...』
「でかいといい的だからな。被弾面積を減らし、かつシグネチャフェイカーで弾を逸らす。」
あの船で前線の視察に出る...予定だ。
それが終われば、すぐにこちらも前線に展開する。
既にオルトス王国首都星系への進路は確保できている。
ただ、道中の制圧がまだ終わっていないだけだ。
そして、数時間後。
ようやく王国が動いた。
クライスト・ジークと呼ばれる星系で、スキャンに敵らしき反応が引っ掛かったのだ。
「敵戦力の詳細を」
『アドアステラ級重巡洋艦を筆頭に、戦術駆逐艦、護衛艦、巡洋艦、戦艦、大戦艦まで確認しました』
「来た...か」
俺は頷く。
ついにやってきたか、流歌。
むざむざ死にに......な。
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