181-『オマエノ ノゾミハ ナンダ?』
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「...ん?」
目を覚ますと、見慣れた天井が映った。
起き上がると、そこは俺の部屋だった。
Noa-Tunの私室ではなく、地球の俺の部屋。
....なんだ、夢だったのか。
「まあ、そうだよな」
Noa-Tunはホールドスターで、俺たちの思い出の塊だった。
だけど、それと一緒に異世界に....だなんて。
あまりにもバカバカしい。
おまけに妹と戦うなんて、夢以外何があり得るというのだろう。
「妹を起こさないとな」
俺は起き上がり、外へと出る。
廊下を歩き、反対側の部屋へと向かう。
「....っと」
前の家では、この位置の扉は母親の部屋だった。
彼女はもう、俺の声を聴くこともない。
ただ置いた飯を喰らい、渡した金を宗教に注ぐだけだった。
彼女の心はもう空っぽだ、忌々しい神とやらに喰らい尽くされて。
今の家では、この部屋は物置に過ぎないが。
「憎いな....」
俺は思ってもいないことをつぶやきつつ、玄関側に向かう。
妹は玄関側に位置する一番広い部屋で寝ている。
「おはよう、お兄ちゃん」
「起きてたか」
部屋に向かおうとした俺は、トイレから出てきた妹に遭遇する。
俺は今日もアルバイトで.....
「お兄ちゃんは今日もお休みだよね!」
「あ....ああ」
そういえば、そうだったかもしれないな。
俺は妹の為にキッチンに向かい、食パンを二枚トースターに入れ、卵を一つ割ってフライパンで焼く。
妹はその間に顔を洗い、朝の支度を済ませて出てくる。
俺は目玉焼きを皿に乗せ、パンにバターを塗った。
卵は高いから、妹の分だけだが....喜んでくれるといいな。
「お前は学校だろう?」
「ううん、違うよ」
「じゃあ、なんで家にいる?」
俺はふと時間を見ようとして、時計がどこにもない事に気づいた。
ふと振り返ると、妹はこっちを見ていた。
「お兄ちゃん」
「どうした?」
「奨学金の話ね、断る事にしたんだ」
「なんでだ!」
俺はつい叫ぶ。
奨学金があれば、お前はもっと上の学校にだって。
「学校側から出したいと言われたじゃないか、どうして....」
「私、お兄ちゃんから離れたくないから....」
「.......」
違う、違う違う! これは現実じゃない!
俺が気付いたとき、周囲の空気は一変していた。
「下級学部長からお聞きしましたよ、ルカさんは優秀ですね、君ももっと頑張りなさい」
『お兄ちゃん、今日も100点取った!』
「なんで体調悪いのに出勤するんだ、迷惑かけるくらいなら休んでいいんだよ?」
『お兄ちゃん、大丈夫だから。ちょっとはバイトを休んでも....私、もっと食べる量減らせば....』
「ルカさんの奨学金についてですが、保護者に認定されているあなたに相談したいのですが.....」
『お兄ちゃんから離れたくないから、奨学金使ってまで全寮制の学校に行きたくない――――モット、モット養ッテヨオオオオ.....』
「うわああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
俺は叫んだ。
なんでそうなるんだ。
お前は、だってお前は、俺なんかに縛られないで、もっと上の世界に行けるだろう。
どうして、俺なんかと一緒に居たがるんだ。
いつの間にか、掛け時計はグルグルと回り、外は明暗を繰り返していた。
「俺は.......お前の世界に俺は要らないんだ! 完璧で.....万全で.....その輝きに、俺という汚点は必要ない!」
もしそれが叶わなければ.........
『――――オマエノ ノゾミハ ナンダ?』
望み?
そんなもの決まっている。
妹が俺の事を忘れるように、世界そのものを破壊したい。
俺そのものを破壊することは俺にはできなくても、世界が壊れれば妹は俺を忘れるだろう。
それでいいんだ。
俺の人生に価値なんかない。
俺の存在に価値なんかない。
俺は駄目な兄だった。
才能もない人生に、価値などない。
全部破壊して.....
『ソノ ノゾミ カナエヨウ――――』
直後。
俺は跳び起きた。
周囲はNoa-Tunの、俺の私室だった。
「.....酷い夢だったな」
だが、妹が奨学金を断るはずがない。
親のせいで定職に付けなかった俺を見ていた妹が、俺がいかに頑張って彼女を大学に進ませようとしていたか理解しているはずだ。
だから、もしこの戦いが終わった時は――――
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