174-指揮官としての葛藤
という訳で、俺たちはロスミア星系を完全に制圧した。
順調すぎて涙が出るほどだが、まだまだ油断はできない。
前線には惑星資源の開発設備を置き、資源を持ち逃げする準備を整えている。
王国側がそろそろ盛り返してくるはずだ。
「どうだ、新規資源はあるか?」
『はい、今まで入手し辛かった鉱物がいくつか採取されています』
「そうか......その資源を使って作れるもののリストはあるか?」
『不完全ですが、こちらになります』
俺はオーロラから貰ったリストを閲覧する。
その殆どは艦船に積む装置だが、中には重要なものもある。
例えば、ジャンプドライブ安定化装置とかな。
ニッケル合金を多く使うので、ゲーム時代はその採取に奔走したものだ。
「確か、惑星表面上にある工場設備は....」
『建造には王国の設備を流用しています。撤退時に破壊しますが、何もサルベージできないように細心の注意を払っています』
「データコアの改造版は出来たのか?」
『はい、抜かりなく』
データを格納するデータコアの改造版。
それは、分解した瞬間に高濃度の放射性物質が噴出するもので、オーロラによる無人工場だからこそできる代物だ。
「兵站の確保は?」
『滞りなく。現在、ガザツ星系に送った第一次輜重艦隊が帰還中です』
「第二次、第三次は?」
『現在カルヴァールトコルデに第三次、ビルジースプライムに第二次輜重艦隊が待機しています』
「分かった」
ヘカトンケイル級ジャンプドライブ搭載型超大型輸送艦。
それが三隻と、ワンダラー級大型輸送艦を十隻ずつ連れた、食料と物資輸送艦隊だ。
ヘカトンケイルは純粋な輸送艦だが、ワンダラーにはミサイルとドローンによる戦闘能力がある。
並の迎撃艦隊では、勝てないだろう。
『それから......回収した囚人はどうされますか?』
「ディーヴァに引き渡す。帝国の囚人だしな、欠片くらいの忠誠心は持っているだろう」
『分かりました』
ロスミア星系を攻撃した際に、護送中の囚人数人を確保した。
囚人達は皆、前線で捕虜になった帝国人。
恐らく元軍人であり、ディーヴァに渡せば処分を下してくれるだろう。
少なくとも、俺にはどうしようもないしな。
「戦闘準備だ、次はハダウガゴを攻める」
『既に準備を行っております』
ハダウガゴは巨大なアウトポストを抱える、いわば前哨基地のデパートだ。
そこを攻めるには、第十六アウトポスト――――つまりは最大の前哨基地に駐留しているらしい大規模艦隊を撃滅する必要がある。
今までの戦いを超える、最大の戦いが始まる。
「新型艦船も複数投入する、燃料確保は出来たか?」
『はい。以前より開発を進めていた掘削設備が完成し、燃料の確保が容易になりました』
まあ、そうだろうな。
今更確認した意味は特にない。
特に確認するべき事項も無くなったので、俺は作戦指揮所を後にする。
エレベーターを降り、第七ドックにある秘匿ドックの入り口へと向か――――おうとした時。
俺は一人の人間と会った。
「.......どうした、こんな場所で」
「その、司令官に直接尋ねたい事があったので....」
「なんだ」
レンファ...だったか。
確か、死んだアズルのガールフレンドだったか?
「転属希望を願いたいのですが.....」
「どこに? 聞こう」
しかし、あまりこういう事を言うつもりはないが、兎人族は体つきがかなり目に悪い。
ティファナもそうだった。
俺は性に興味はないのだが、同族に襲われないのだろうか?
「......私も、戦闘機に乗りたいです」
「ダメだ」
「....どうしてですか!?」
「今は戦時だ、新兵訓練をやっている暇はない」
「じゃあ、戦争が終わったら.....」
「それなら構わないが、能力で選抜される以上、今の立場から大きく変わることはないだろうな」
「...はい」
俺はレンファが俯き、去っていくのを見た。
よくわからないが、あの目は見たことがある。
「...」
同情はしない。
例え死んだ者の友や恋人が、別の戦場で戦いたいのだと言っても。
ドクトリンに変更はなく、これからも変わることはない。
オーロラがいれば全て滞りなく回る。
獣人は戦闘機のパーツでしかない種族だ。
そう考えるのは楽なんだが...
「難しいもんだな」
俺は胃痛を感じつつ、自分の部屋と戻るのだった。
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




