167-開かれた戦端
「かなり複雑なことになってるな」
俺は呟く。
ネムが回収してきたデータを、ネムを撫でまわしながら解析した結果を見て。
『敵の前哨基地は一つのみ、ゲート周辺には警備艦隊が交代制で常駐しています』
「加えて、帝国の前哨基地はひとつ残らず破壊されている。即ち、パーラット星系は前線でありながら、辺境なんだ」
帝国との通信途絶。
それと同時にエミドの侵攻が起こったため、俺たちはゲートを破壊したきり王国に手出ししていない。
王国は、帝国がエミドか、それ以外の勢力の怒りを買って壊滅したと判断したようで(これについては実際にラムブレードが回収したデータの中に情報があった)、王国軍は撤退、通常の正規軍に加え、星系群と併せて防衛を行っているようだ。
『そう仮定した場合、帝国軍基地跡と事前に入手した艦艇データを一部流用できる可能性があります』
「だろうな」
俺は頷く。
「こちらで回収した王国軍戦艦のデータをサルベージングしたが、やはり帝国のデータとあまり相違はない。双方のドクトリン理解はある程度は共通していたようだ」
パーラット星系はまさに最前線であり、激しい戦場の後を無数に散見する事が出来た。
そして、双方の夥しい数の残骸も。
推進器をやられて離脱できなかった艦も無事で残っていた。
「ちなみになんだが......ディーヴァ」
『ん。なんじゃ?』
俺は抱いた疑問を口にする。
「帝国側の装備に、インターディクション....つまりワープ妨害の設備があったが、どうして帝都防衛にこれを使わなかった?」
『...詳しいことは分からぬ。前線指揮官の判断じゃろ』
「そうか」
この未熟な文明において、ワーププロセスに妨害できる技術力。
最後に出てきたデカい船と言い、ビージアイナ帝国は相手にして申し分なかったようだ。
「よし。オーロラ、兵站を整備しろ。ディーヴァ、最後の指揮官会議を開く」
戦端を開くときが来た。
俺は指示を飛ばし、オルトス王国との戦端を開く準備をさせた。
『メインシステム、戦闘モード』
『燃料状況:100%』
数時間後。
艦隊はパーラット星系に展開し、艦隊は王国軍と交戦した。
そして、その中にはアインスの乗るタウミエルも含まれている。
ユリシーズのカタパルトから飛び出したタウミエルは、敵艦の上部に回り込む。
恒星を背にして接近し、
「変形します」
『許可する』
許可を得たアインスは、コックピットの右下部にあったレバーを左に回して引っ張った。
『変形機構を起動します』
タウミエルの先端部が突出、エンジンの推進器部分が下に倒れて脚が出る。
つま先の部分が脚の内部から展開され、脚の後部から外れた機構が推進器に再接続され、推進器が下を向く。
コックピットがコンシールドに覆われ、機種部分が収納される。
左右翼の側面から現れた腕が、係留が解除された対艦砲を握った。
かくして変形は終了した。
タウミエルは旗艦の甲板に降り立ち、両腕の対艦砲を構えた。
『エネルギー伝達完了:オーバーロード発射可能』
「発射!」
タウミエルは旗艦の艦橋をその手で吹き飛ばしたのであった。
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




