166-王国偵察
ついに、オルトス侵攻作戦の先鋒を俺たちは開いた...
というわけではなく、まずは下準備からだ。
「今回俺たちは、平和な平和なビージアイナ帝国ではなく、ビージアイナが閉鎖されて警戒中の王国元最前線へと出る事になる。行軍及び撤退は常に妨害されると思え」
『はい』
一方向型のアクセラレーションゲートを使い、ラムブレードを敵地へ侵入させる。
ネムには少し頑張ってもらい、敵地を遮蔽しながら偵察、及びネットワークから情報を盗み出す。
情報の監視システムにもよるが、オーロラならある程度はバレずに盗める。
そして、ラムブレードはジャンプピンガー発生器が装備されているので、それを使って、シグマスカウターとプロトスカウターを送り込み、潜伏させる。
シグマスカウターにはジャンプポータルを生成する装備があるので、ラムブレードはそれを使って一度帰還するというわけだ。
「ネム、アジェッタには到着したか?」
『はい。もうストラクチャの周囲にワープしています!』
アジェッタとは、王国最前線であるパーラット星系に最も近い星系である。
そこから加速ゲートを使い、パーラット星系へと飛ぶ。
シップスキャンのような技術はこの世界では一般的ではないようなので、ラムブレードはそのまま遮蔽し、付近の人工物にワープして偵察する。
その手筈だ。
「では、本時刻より作戦を決行する。ラムブレードは10分後までに加速ゲートへと移動せよ」
『了解!』
ネムの元気な返事を聞きつつ、俺はネムを失うのではないかという憂慮を振り切ったのであった。
ネムはラムブレードを加速ゲートの前へと止めた。
加速ゲートは横幅の大きいラムブレードであっても、容易に収まるほど巨大である。
ネムが操作すれば、いつでもゲートシステムを起動出来る。
『指定時刻となった。ネム、ゲートシステムをフェーズ2に移行しろ』
「はっ、はい!」
ゲートシステムのフェーズ1とは、ゲート側の重力運河が船を認識している状態のことだ。
フェーズ2に移行した瞬間、船はゲートとゲート、もしくはゲートとその先を繋ぐ超空間トレースへと侵入する事になるのだ。
「っ...!」
ラムブレードは速度を上げ、超空間内を突き進む。
その衝撃は大したものではないが、しかしそのゲート内の異様な光景に、ネムは息を呑んだ。
すぐにラムブレードはゲートを抜ける。
その先は、未知の世界の外縁部である。
「(遮蔽装置、起動)」
ラムブレードは遮蔽装置を起動して、光学・磁気・熱源・重力的トレースを隠蔽する。
こうすることで、その船は何にも見つからなくなる。
ネムはコンソールを操作して、近辺を広域スキャンする。
すると、天体の周囲に一つ、強いシグナルを放つ構造物を発見した。
「よく分からないもの、ありました」
『よし。ではそれの遠距離地点までワープせよ』
「はい」
ラムブレードはワープ姿勢に入り、そのままその構造物に向けて飛んだ。
光速を超えて飛ぶラムブレードは、ものの数秒でそれに辿り着く。
「これは...?」
通信を一度切り、ネムは呟く。
そして、録画機能をオンにしてそれを撮影、偵察用スキャナーでバレないよう時間をかけて構造物のスキャンを行う。
結果、王国語で「パーラットⅠ前哨基地」という名称が明らかになった。
「っ!?」
その時。
前哨基地の近くに、数隻の艦隊がワープアウトしてきた。
そちらもスキャンすると、「王国軍 グラベム級戦艦」という名前が明らかになる。
それらを記録したネムは、間違いなくここが王国の前哨基地であるとの確信を得た。
続けて、広域スキャンを行い、付近に映った六つの人工物の調査に出る。
しかし奇妙なことに、その全てがまだ真新しい残骸であった。
「...ダメです、ここも破壊されてます」
『遮蔽を解いて、広域スキャンをしながらデータディスクか何かを回収しろ』
「はい」
ネムはラムブレードを人工物に近づけ、調査を開始する。
サルベージ用のドローンを展開し、人工物の残骸を漁ってデータバンクやディスクを回収、それらを船のカーゴホールドに入れ、すぐにその場所を離れる。
「シンさま...司令官。敵のものと思われる構造は一つだけで、他は全て残骸でした」
『よし。わかった、安全地帯にワープしてジャンプピンガーを展開せよ、こちらの船を送り込む』
「はい」
帰ったらいつものように頭を撫でてもらおう。
そう思いつつ、ネムはラムブレードを何も無い場所に転進させる。
そして、ワープドライブを起動するのであった。
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