164-円卓の指揮
「よく帰ってきた」
俺は、帰還したカレン.......改め、ドライにそう言った。
ドライは、ビシッと敬礼を決め、
「はっ、Noa-Tun連邦二十二大指揮官所属、第三指揮官ドライ、帰還及び着任いたしました」
ドライの名乗った第三指揮官というのは、俺が急遽定めた二十一席の指揮官枠だ。
統治構造を、彼らが管理するという名目であり、俺もその内の一席を持っている...つまり、俺を含めて二十二席になる、というわけだ。
Noa-Tun連邦の対外的な最高責任者はノーザン・ライツであるため、その整合性を保つためでもある。
そして、帰ってきたのはカレンだけではない。
「それから、ナージャ。どこで何をしていた?」
「ん。......エミドの放棄ワームホールを制圧。技術保護及び再起動の対策を行った」
「饒舌になったか?」
「エミドから人語のデータベースを回収。その際の映像記録をもとに、より効率的な対インターフェース的アプローチ手段を獲得」
ナージャはより饒舌になっていた。
以前よりも補語が多くなり、日本語の扱いが上手くなった。
「帰還時に構造物を視認。時の揺り篭を複製した?」
「ああ」
「託したのは私。気に留める必要はない。然し乍ら、設計者として、完全な設計図を譲渡したいと請願する。宜しいか?」
「有難い限りだ」
「その対価として、食堂の期間限定提供メニューである『爆盛りよくばりパフェ』の無制限提供を申請する」
「無制限は許可できないな、日に三十食までであれば許可する」
「妥協案を承諾」
ナージャは、すっかりスイーツの虜のようだ。
ここまで戻ってきたのも、エミドのワームホールの座標を特定してわざわざ潰しに掛かったのも、全部ここの甘味を気に入っての事らしい。
交渉は楽だが........ちょっと動機が弱いよな。
いつ裏切られるかドキドキしている。
「さて、ドライ。お前にはすでに専用機を用意している」
「過ぎた待遇であります」
「いいや、指揮官など本来不要。しかし、それを知った上で俺はこの指揮官枠を作り出した。それ即ち、現場に赴き不慮の事態に際した場合、適切な知識と思慮を持ち、最良の決断を下せる指揮官が必要になると考えている。それ故に、護身を十分に行ったうえでの指揮を執れる専用機が必要だ」
俺たちは話しながら、指揮官機専用ドックに移動する。
そこには、整備中のマルクトとタウミエルがあった。
その横に視界を逸らすと、ハエのような形をした艦があった。
ハエというと格好悪い印象を受けるが、他の指揮官機に比べて一回り大きく、異質な印象を受ける。
「この船はオギエル、妨害者という名にちなみ、電子戦装備に特化している」
「小官に扱えるでしょうか」
「安心しろ、貴官にはインプラントを贈呈する」
竜人は身体が頑丈だからな。
実験時に、人間では不可能な百を超える数のインプラント副作用に耐えて見せた。
「それらがあれば、直接戦闘をせずとも指揮を行いながら戦闘を支援できる」
「はっ!」
ちなみに、俺にも指揮官機がある。
ただし開発中だが。
開発ネームは『KETER』。
俺が肉体的に弱すぎるので、何をして先頭指揮で有利に立ち回るかが課題となる。
「さあ、解散だ。お前はもうこの国の最高責任者の一員、ルルにもいつだって会えるぞ」
「はっ!」
カレンに行った施術は、人格を切り替えるものだ。
彼女は常に正気だが、オフの時は常に以前の人格と同じように振舞う。
要は、仕事モードとオフモードである。
「オーロラ、指揮官を至急確保したい、獣人の中から候補者を選んでくれ。ティファナは除外、彼女には別にするべきことがある」
『了解』
オルトスはただの前座だ。
宇宙殲滅には、より多くの指揮官が要る。
俺はそのために、指揮官を増やすように命じる。
オルトスから拾ってもいいんだが.....知識がない方が再教育の効率が良くなる。
もう、以前のような人格を破壊して...云々の作業ではないからな。
「さあ、次はクロトザクと、ビルジースプライムだな」
俺は身を翻すと、エレベーターへ向かった。
その横に、ケテルとなる巨大な機体があったが、俺はそれに気を留めることもなかった。
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