149-楽園の守護者
「ジェキド様」
エミドの本拠地にて。
スキンヘッドの男が、美麗な少女に話しかけられた。
「どうした? キシナよ」
「B-143225星系付近で戦闘が発生。こちらの艦隊が全滅しました」
「Ve’z艦隊との交戦か?」
ジェキド・イーシャティブは、自らの秘書であるキシナにそう問うた。
先のVe’zとの戦争で、エミドは自らが保有するワームホール星系、『クライアレン』を失っている。
それ故に、その戦闘がVe’zによるものだと勝手に思ったのだ。
だが、
「いいえ、全滅したと思われていたNoa-Tun連邦なる組織による襲撃です。使用された艦船は以前に確認したあらゆる艦種とも一致せず、指揮官機が撃沈されたため、全艦船が機能を停止した模様」
「何だと?」
ジェキドは生涯において、遥か昔に体験した感情を思い起こした。
それは、「驚愕」。
たかだか人間の勢力が、エミドの艦隊を全滅させた。
遥かに優れた技術力を持つVe’zではなく、Noa-Tun連邦が。
「.............キシナよ、現れた艦船を解析せよ! それは脅威になり得る。秩序を崩し、世界の滅亡を招くやもしれん!」
「はっ」
「それから。四十二大星國船団から、一番、二番を招集せよ」
「はっ」
四十二大星國船団。
それは、エミドの上位戦力であり、番号が若い順に忠誠度が高く戦力的に強いのだ。
一番と、二番。
それは、エミドの本戦力と言っても過言ではない。
「.......人間が、少し技術を持ち粋がったところで。それは、秩序を乱し、最終的に滅びを齎して終わるだけなのだ。過ぎた技術を求めず、ただ繁栄せよ――――それが宇宙の意思なのだ」
誰もいなくなった玉座の間で、ジェキドは静かに呟くのであった。
「さて。オーロラ、秘匿データコンテナα-22を開封しろ」
『了解。データを解凍します――――これは!?』
「気付いたか」
俺は先の戦いで、敵の弱点を解析した。
オーロラとの共同調査の結果、エミド艦船のシールドは多層構造で、一枚一枚の隙間からエネルギーを浸透させ、拡散させる効果を持っている。
レーザー兵器が通用しないわけだ。
だがしかし、この兵器群は違う。
「PARADISE-GUARDIAN艦船群。これの製造を開始する」
『しかし.......』
「ああ、そうだ。こいつらは――――強すぎる。だが、お前もその想定はしているだろう? 相手がこちらの戦力を分析し、対策を講じてくる、もしくはより上位の戦力を投入してくる可能性を」
PARADISE-GUARDIANとは、SSCにおける外部勢力侵略への対抗戦力である。
ヴォートンパルス・リリーサーと呼ばれる特殊な武装を持ち、本来の艦船とは全く異なる運用法で用いられる、高級にして高等な艦船群である。
実を言うと、Noa-Tunに搭載されている最終兵器『OSSS』もこれと同じ原理だ。
敵艦に向けて真っすぐに宇宙弦を構成し、シールドに向けて高圧エネルギー電流を放射、シールドを破壊して船体をズタズタに引き裂き、直後付近の艦船に向けて電流が伝播し、同じことを減衰率が最大になるまで繰り返す究極の兵器である。
「当然ながら、資源が必要になる。だが、俺はこれに限られた資源を投入する価値があると信じている」
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