148-ルル・ネム奪還戦(後編)
『見つけたぞよ! 第二惑星の地下基地にいるようじゃ!』
「だったら、振り切るしかないな!」
俺たちは、エミドのフリゲート級六隻に追いまわされていた。
アステロイドベルト内なので回避に専念できるが、奴らの射程はとても長い。
重力制御で加速しているマルクトは、その性質上曲がるときに特有の癖がある。
それを相手に見抜かれたら終わりだ。
『....しかし、変じゃのう...』
「何がだっ!?」
シュッツェ・フリューゲルスで威嚇射撃を行いながら、俺は叫ぶ。
ディーヴァは、疑問を口にした。
『奴らの艦内には、人間が一人だけ乗っておる。じゃが、動きに理性も感情も感じられぬのじゃ』
「ふーむ....そいつは、使えそうだな――――オーロラ、SSハンターを使って敵を拿捕しろ!」
『了解』
直後、異次元から飛び出したトラバサミのようなものが、次元の狭間に敵のフリゲートを飲み込んで消えた。
『何じゃ....あれは?』
「SubSpaceハンターって言ってな、通常の艦船は次元断層に入り込んだ瞬間に推力を得られなくなるのを利用して、敵を捕まえる技術だ.....まぁ、拿捕くらいにしか使えないけどな」
SSハンターは、通常空間に出るエネルギーを確保するためにクロトザクのワープフィラメントを使っているので、回数制限と資源の制限が厳しい。
なんとか、敵の機関システムを解析できれば、それも解決しそうではあるけどな。
『それで、どうするんじゃ?』
「とりあえず、四隻排除する。その後、ヨグ=ソトスとドッキングして、潜航する」
そして、異空間を伝って直接三人を迎えに行く。
そのためにも、まずは敵を減らしてアステロイドベルトを抜けないとな。
「次の岩塊を回避するタイミングでA.O.Iを発射する!」
『了解じゃ!』
どうせ敵は岩塊を斬って襲ってくるだろう。
俺はそう踏んで、マルクトが岩塊を回避するタイミングで、後ろに向けてA.O.Iの軌道を入力する。
直後、岩塊を斬ってエミド艦が飛び込んでくる。
そこにA.O.Iを発射し、迎撃させる暇もなく吹き飛ばした。
『残り二隻じゃ!』
「アステロイドベルトを離脱! ヨグ=ソトス増速! マルクトの座標に合わせろ!」
『了解です!』
「フリーデン・フリューゲルモード解除! 減速する!」
『あんまりやりたくないのじゃが!』
マルクトは自由の翼を解除して減速し、代わりにシュッツェ・フリューゲルスをシールド発生器として使用し、直接エミド艦にぶつけてその動きを止めさせる。
『浮上します、接続口展開!』
「今だ!」
『承知!』
マルクトはヨグ=ソトスとドッキングし、直後シールドが両断されてエミド艦が向かってくる。
「急速潜航!」
『異次元バラスト放出! 次元断層内に入ります!』
こうして、P.O.Dを掻い潜った俺たちは、異次元空間へと逃げ込むことに成功したのであった。
暗い基地内部で。
三人は身を寄せ合っていた。
暖房器具も使えないため、寒さが襲ってきているのだ。
だが、そこに衝撃が襲ってくる。
「きゃっ!?」
「なにっ!?」
「て、敵の襲撃でしょうか....!?」
衝撃は大きくなり、次の瞬間。
床を破って、ブリッジが顔を出した。
その横に書かれている紋章は、Noa-Tun連邦のもの。
「悪い、しくじった!」
『申し訳ございません、座標の計算に誤差が生じました』
「だから先に潜望鏡を出しておけと....」
「「シンさま!!」」
ルルとネムの顔が一挙に明るくなり、小さい足でシンに駆け寄る。
「悪いことをしたな......だが、こうして迎えに来たぞ」
「ありがとう、ございます!」
「.......ツヴァイト」
そしてシンは、鋭い目でツヴァイトを見た。
「.....二人を守ってくれて、ありがとう」
「過ぎたる光栄でございます」
ツヴァイトはそう言うと、流麗な礼で以て応えた。
シンはそれに苦笑すると、すぐに真剣な表情に戻る。
「さあ、急ぐぞ。アインスたちの艦隊を回収する必要がある、乗り込め!」
「「はい!」」
「分かりました!」
全員が乗り込み、ヨグ=ソトスはその場を後にするのであった。
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。




