125-同盟と好敵手
それから数日後。
妾は、水槽の中で目を覚ました。
体はもう動かぬ、あまりに多くの内臓や筋繊維を失い、手も足も潰れたのを壊死する前に切断したとのことじゃ。
唯一左腕と手だけが、妾に動かせる唯一の部位。
うう...シンとのいちゃらぶ生活の前にこんな姿にしてくれおって、あの騎士絶対に許さんぞ。
『接続』
妾は脳内でそう呼び掛ける。
この水槽の中から動けぬ妾じゃが、別に不自由はしておらぬ。
妾に接続された器具が、妾を精神ごと、このNoa-Tunの各部にあるセンサーを制御できるようにしてくれているのじゃ。
『......そうだ、ビージアイナの資源分布は非常に理想的で、アイスベルトもほとんど残っている』
『接続されているゲートも破壊しましたし、採掘艦隊を増産しますか?』
『ああ、主力艦の残骸を転用すれば、生産ペースも上げられるだろう?』
『はい』
「シン!」
何やら話しているシンに、妾は話しかける。
向こうから見れば、妾はスクリーンに写っているように見えるはずじゃ。
『どうした? 飯の時間はまだだぞ』
「妾がお主の姿を見にきて何が悪いのじゃ? 少し話そうぞ」
妾はシンを誘う。
その時、ネムという少女が妾に叫んだ。
『ディーヴァさん! お姉ちゃんが少し話があるんだって!』
「......分かったぞよ、シン。お仕事頑張るのじゃぞ!」
『ああ! 当然だ』
シンに別れを告げ、妾はとある一室の監視カメラへ向かう。
そして、
「来たぞ。して、何用じゃ?」
部屋の中を確認しながら、そう言った。
部屋の中には、シンの妻だという女二人...ネムと...ルルじゃったかのう? と、ナージャとかいう得体の知れぬ女、アインスとツヴァイの作戦指揮を統括しておる二人がいた。
『あなたが新入りよね!』
「そうじゃが...?」
『私達、あなたに言いたいことがあるのよ』
むっ。
もしやこれは、女同士の牽制というやつじゃろうか。
妾は格が高すぎたために遭遇する事はなかったが、当然知識としては知っておる。
「何じゃ? 申してみよ」
『私たちは、シン様の妻です、ですから...』
お邪魔虫は失せよ。
彼女らはそう言いたいのじゃな、と妾は瞬時に理解した。
『私達と一緒に、シン様を落としましょう!』
「なに?」
じゃが、彼女らは妾に、意外とも思える提案をしてきた。
...これは面白い。
あの男は、自分の妻にすら気を許さぬというわけか。
『シン様は、本当に鈍感です...だから、私達は、誰か一人でもシン様に好きになってもらえるように、協力しようと思っているんです、どうですか?』
「そうじゃのう...」
確かに、それは面白い提案じゃ。
魅力的でもあるし、出来ればイエスと頷きたいところでもある。
じゃが、
「お断りさせて頂こう」
『なっ...どうしてですか』
「妾が彼に抱いているのは、決して恋だけではないのでな」
妾はあの男に、父性を願っておる。
何より...
「勘違いするでない。妾はお主らの敵ぞ。敵である事で、切磋琢磨し合える...そう、好敵手というやつじゃ」
『独り占めなんてずるい!』
ネムという女が叫ぶ。
妾は笑う。
「ふふふ...独り占めされたくなければ、妾に勝って見せよ」
お義父さんを手に入れるのは妾の方じゃぞ。
正妻などに負けはせん。
『シン。独占 許可:不可 ぱふぇ制限...』
「ナージャは食い気だけだもんね!」
『肯定』
「「............」」
この場にいるアインスとツヴァイだったか? それにナージャも。
彼を好いている様子じゃ、ライバルは多いのう...
『おおーい』
その時、扉が開いてシンが入ってきた。
妾は急いで回線を切り、マイクから音だけ拾う。
『何だ、皆ここに居たのか』
『どうしたんですか?』
『いや...ビージアイナ内部に潜伏している海賊勢力のことについて相談があったんだが...取り込み中か?』
『い、いえ! 大丈夫です!』
やはり。
シンには打算や匂わせなどという作戦は通用せぬ。
好いてもらいたくば、正攻法で挑まねばならぬ。
妾はそれを知り、妖しく笑いながら本体へと戻るのだった。
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