お屋敷探検 騎士団編その2
魔法の練習部屋は、思っていたよりもずいぶん広かった。
いや……めちゃ広い……東〇ドームよりも広いと思う……。
「ルディ、この部屋の鍵を頼む。」
「おう。」
「ユーカ、ここは魔法専用の練習部屋だ。ここの空間にも父上の魔法陣があって、この部屋で魔法を使っても外には影響がないようになっている。新人の魔法の訓練などにも使っているんだ。」
「そうなんですか。」
「よし。では早速やってみよう。」
「はい。エル。」
「頑張れよ。」
「ありがとう、ルディ。」
「まず魔法の使い方だが……基本的にはイメージが必要だ。そのイメージに魔力を使うことで魔法が使える。君の場合は精霊の力も借りることになるから、イメージはとても重要だ。まずは、魔力を感じる事から始めるか。」
「魔力……」
「そうだ。そういえば、精霊のヒューはどうした?」
「えーと、確か指輪の中で休むって言ってました。ヒュー。」
エルにそう言われたので、指輪に向かって声をかけてみた。
「なに~。」
そう言って指輪から出てきた……本当に指輪の中に居たんだ。狭くないのかな……。
「ヒュー、これから私、魔法を使ってみるんだけど、一緒に居てくれる?」
「そうなの。ユーカが魔法をつかうの?うん。ユーカのお手伝いするね。まかせて。」
「お願いします。」
「エル、ヒューが力を貸してくれるみたいです。」
「そうか。ユーカ、先に言っておくが、私にヒューの姿は見えないし、声も聞こえないからヒューが何か言っていたらこちらに教えてもらえると助かる。」
「はい。」
エルはそう言って手のひらに水の玉を出した。
よく見ていたが、わからん……。
「うーん。あんまりよくわからないなぁ……。」
「ユーカ、ユーカなら魔力の動きが見えるはずだよ。」
「ヒュー、どういうこと?」
「うん?だって、ユーカは見えるでしょ?」
「見えるって何が?」
「えっ?魔力が……。」
「うん?」
「ユーカ、どうした?」
「エル、ヒューが私には魔力が見えるって言ってるんですけど……。」
「ああ、魔力視があるのか。なら、見えると思うぞ。魔力は光のように見える。」
「そうなんですか……。もしかして、人の中に見える光のことですか?」
「あぁ、それだ。私には様々ないろが見えるはずだし、ルディは赤色が見えるのではないか?」
「はい、見えます。なら動きも見えるのか。エル、もう1回魔法を使うところを見せてもらえますか?」
「もちろん。ではやってみるな。」
おお、エルの中心(お腹の辺り)に見えた虹色の光が右手の方へ移動してきた。
おっ、手首のあたりで色が青に変わった……。
手の上に青色の光の玉が見える。
あれが魔力か……。
うん?青色の玉が水の玉になってる……。
なんか、二重に見えるから気持ち悪いな……。
でも、なんとなく魔力の移動はわかった。
「エル、魔力が移動する様子は見えました。ただ、自分で動かせるかわかりません。」
「そうか。まぁ、魔法はイメージだからな。私が魔力を動かした通りにイメージしてみればいいのではないか?」
「そうですね。やってみます。」
目を閉じて、エルが魔力を動かしていた通りにイメージしてみる。
たしか、お腹のあたりにあった魔力を手の方に動かしていって、掌の上に青い光を出して丸くなっていく感じ……。
「ユーカ、目を開けてみろ。」
「えっ」
エルに言われた通り目を開けたら、掌の上に青色の光があった。
瞬きをしたら、水の玉に見えるようになった。
「おお。成功した!」
「やったな。」
「はい。でもエル、魔力を見ると青い光なんですが、水の玉にも見えて、見え方が二重で気持ち悪くなりそうなんですけど……。」
「それなら。魔力を見たいときは目の上に膜を張るようなイメージをするといい。それで、魔力視を切り替えるんだ。」
「やってみます。」
「どうだ?出来そうか?」
「はい。できました。これなら気持ち悪くならないです。」
「そうか。それは良かった。」
それからは色々とやってみた。
水や炎を動物の形に変えてみたり、風を使って掌の上に小さな竜巻を作ってみたりしてみた。
土でヒューの人形を作った時は、ヒューが嬉しそうにしていた。
エルにもヒューはこんな感じだと教えることができた。
うん。イメージ通りに動くから楽しい。これなら何でもできそう。
そんな様子をルディは驚いたように見ていた。
そして、エルと何かを話していたみたいだが、魔法に夢中で聞いてなかった。
<エルとルディの会話>
「おい、エル!これは、ヤバいんじゃないのか。ユーカは全属性使っているぞ。それに、魔力視と精霊視も持っているのか。」
「あぁ。ちなみに、精霊との契約も済んでいる。」
「全属性使えて、精霊と契約ってことは、精霊も全属性か!」
「あぁ、精霊王らしい。」
「精霊王って……マジかよ」
「あぁ、だから他言無用でと言ったんだ。このことが知られればユーカは狙われる。父上が保護する予定だが、まだ手続きが終わっていないからな。」
「そういうことか。」
「あぁ。父上が保護者ならば、手出しができるものは限られるからな。-それに、保護している間にユーカ自身が魔法を学べば自衛出来るしな。」
「確かに。最強の魔法使いリーヴェス・レッテフォートの庇護があれば安全ではあるな。」
「このことは、まだ公表していないから言うなよ。」
「おう。言わねえよ。てか、言っても誰も信じないだろう。精霊王の契約者なんて。」
「まぁ、そうだけどな。」
「絶対に言うなよ。もし、お前の口からどこかに漏れたとしたら父上が黙っていない。」
「まじか。辺境伯様のお気に入りか。」
「そうだ。ちなみに、母上にも気に入られている。」
「そうか。それはまずいな。」
「あぁ、母上は怒らせてはいけないからな。」
「あぁ。どこにもいうつもりはないが、気を付けるよ。」