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お屋敷探検 厨房編その2

 ロルフから出汁を作って欲しいと言われたので、ネフに頼んで骨と筋を貰って厨房に戻った。

 こっちの世界の男性は皆んな紳士的なので、骨と筋はエルが運んでくれたよ。

 ロルフは解体したお肉を運んでた。血抜きをやってみるみたい。

 ネフは解体した場所の片付けをしてから、厨房に戻るみたい。


 ロルフに厨房の洗い場を教えてもらって、まずは手を洗った。

 そして、運んでたもらったお肉の血抜きだ。


「あの、まずは時間がかかるので、お肉の血抜きからやりましょう。まぁ、やることはお肉を水に漬けるだけなんですけど……。ロルフ、とりあえず血抜きしたものとそうでないものの違いを知ってもらいたいので、少量の肉を試しに血抜きをしてみましょうか。」

「おう。そうしよう。」

「はい。じゃぁロルフ、お肉を少し切り分けてもらっていいですか?あと、そのお肉を水に漬けるので入れ物の用意をお願いします。それと、出汁を取るので大きめのお鍋を貸してください。エル、骨はこちらにお願いします。1回洗うので……。」

「わかった。すぐに切り分けるな。おい、誰かスープ用の鍋を持って来てくれ。」

 ロルフが他の人に指示を出して、鍋を持ってきてもらった。

 

「ユーカ、ここに置けばいいか?」

 エルが流しの中に骨が入ったものを置いてくれた。

「はい。大丈夫です。」

 上の方にある骨から洗っていった。

 鳥は骨が細くて数が多いんだよなぁー。

 

「あれ……?」

「どうした?」

「あの、この流しなんですけど、高さがあるし深さもあるので流しの下の物が取りずらくて、ちょっと……」

「フフッ。ちょっと待ってろ」

 そう言って、下の方にある骨をエルが取って渡してくれた。

 優しいけどなんか悔しい……どうせ小さいですよーだ。

 うーん。調理台とかも、私にはちょっと高いな……。


 よし。全部の骨が洗えた。

 5羽分だからまぁまぁ量があるな。

 これに水を入れて、あとは火にかけるだけなんだけど、この量は絶対持てない気がする。


「あの、これに水を入れて火にかけるだけなんですけど、ちょっと重いので手伝ってもらってもいいですか?」

 エルが近くにいたので聞いてみる。

「もちろん。私が運ぶよ。」

「水も入っているので重いですよ。」

「このくらいなら大丈夫だよ。」

 そう言って軽々と鍋を持ち、コンロに持って行ってくれた。


 こちらのコンロは魔法で火が着くらしい。どういう仕組みか知らないが、綺麗な石に魔法陣が書いてあって火を点けたり調整したり出来るらしい。

 お水も同じように石に魔法陣が書いてあって手を翳すと水が出るようになっているらしい。


「さて、あとは火にかけるだけです。沸騰してきたら弱火にして、灰汁が出てくるのでそれを丁寧に取りながら煮込むと出汁が取れますよ。」

 ロルフもお肉を水につけた後、骨を洗うところを見ていたので、近くにいたからそう説明をしておいた。

「そうか。骨を洗ったのはなんでだ?」

「それは、骨にも血が着いていたでしょう。血があると味が良く無いのでしっかり洗ったんです。」

「そうか。この出汁というのは鳥の骨しか取れないのか?」

「いいえ。今回は鳥でしたけど、牛とか豚からも取れます。それに、私がいたところでは魚や海藻から出汁を取ることが多かったです。」

「牛に豚……魚と海藻……。」

 ロルフが怖い顔で悩み始めてしまった。

 

「うーん。牛や豚はこの混乱が収まれば手に入るだろうが、魚と海藻がちょっと難しいかもしれない。」

 エルが悩みながらも話してくれた。

「なぜですか?海が近くにないとか?」

「いや、この領地にも海はある。ただし、海の近くは全て崖になっていて魚を取るのは難しいんだ。だから、他の領地から取り寄せることはあるんだが、大体が干した魚で生の状態では手に入らない。」

「そうなんですか。というより混乱って、魔獣による被害のことですか?」

「あぁ、精霊の森には魔獣がいて普段は騎士団や冒険者が退治しているからそこまでの被害は無いのだが、何年かに一度魔獣が大量発生して街の方まで押し寄せてくることがあるんだ。その大量発生が今年起こって数日前にやっと終わったところなんだ。」


 「そうだったんですね。」

「あぁ、だから今が大変な時期で、領内各地に被害があったから食料が少なくて限られているんだ。ほかの領地からも支援されているんだが、食料も移動させるから日持ちするものが多くて……。」

「そういうことだったんですね。なんか、大変な時に来てしまいましたね。」

「ユーカは気にせず過ごしてくれ。こちらに来たばかりで知らないことも多いしね。」

「はい。」


 復興の最中ってことかな。だったら、なにか協力できることがあればいいんだけど……。まぁ、こちの事を何も知らないから出来ることが何かも思い浮かばないけど……。

 そんなことを思っていたら鶏ガラの鍋が温まってきたみたいだ。ちょっと背伸びしないと見えずらい。


「ロルフ、鍋を見てください。こうやって茶色っぽいものが浮き出で来るんですけど、これが灰汁というものです。これがあると味が良くないので、取り除きたいんですが、何か掬うものあります?」

「おう、ちょっと待ってな。すぐに取ってくるから。」

「料理長。これどうぞ。」

「おう、ありがとう。」

 なんか、厨房にいたほかの料理人の人も気になったのか近くに来ていて、その中の一人がお玉を持て来てくれた。


「ユーカ、これでいいか?」

「はい、ありがとうございます。」

 背伸びをしつつ鶏ガラのから灰汁を掬うが、やりにくい……。

 

「おい、そんな状態じゃ危ないから俺がやる。」

 そう言ってロルフが代わりに灰汁すくいをしてくれた。

「おねがいします。沸騰させると良くなので弱火にしてゆっくり煮込むようにしますね。」

「おう。それにしても、小さいから大変だな。」

「はい……。」

 ちょっと落ち込む……が気にしない。


「あのロルフ、夜のスープ用の野菜を使ってもいいですか?絶対に食べ物は無駄にしないので……。」

「いいぞ。ユーカは料理も慣れているみたいだし大丈夫だろう。」

「ありがとうございます。では、この鳥の骨を煮込んでいる間に、野菜を切りましょう。ロルフ、私はこの厨房に慣れていないので、誰かに手伝ってもらってもいいですか?」

「もちろん。昼の準備があるやつ以外で手が空いてる奴は、手伝ってやってくれ。」

「おう。」

 二人の人が手伝ってくれるみたいだ。


「あの、まずは野菜をきれいに洗いましょう。できれば、野菜の皮も無駄なく使いたいので……。」

「おい、皮も使うのか?」

「はい。食料が貴重なんでしょう?無駄なく使えるようにしたいので、皮からも出汁を取りましょう。」

「また出汁か……。」

「意外と野菜からもいい出汁が出るんですよ。」

「まぁいい。楽しみだ。お前たち、ユーカの言うとおりに作業してくれ。」

 ロルフが二人に言ってくれた。

「はい。わかりました。」

 

 そこからは、みんなでジャガイモ・人参・玉ねぎ・キャベツを洗い、皮むきと野菜切りをした。

 数が多いが、さすが料理人。皮むきも切るのも早かった。

 私は、作業台が高くてほとんど指示を出すだけだった……。戦力外かも……。


 ジャガイモ・人参・玉ねぎの皮とキャベツの外葉の硬いところは鶏ガラの鍋に入れて一緒に煮込んだ。


 血抜きの為に、水に漬けていたお肉の様子も見てみる。

 私たちが野菜を切っている間に、ロルフが、時々水を変えていたから大分いいのでは……。

 うん。水がきれいになってきたからいいかな……。


「ロルフ、もうそろそろお肉の血抜きは終わりでいいと思う。」

「そうか、じゃ、試してみるか。」

「はい。そういえば、調味料って塩の他に何かあります?」

「胡椒は少しあるけど、これも他の領地から取り寄せているからあまり量が無いんだ。あとは、砂糖とビネガーくらいしか無いな。これも少量しかないが……。」

「そうですか。では、砂糖と塩を少しもらえますか?」

「おう、塩はいっぱいあるから好きに使っていいけど、砂糖は本当に少量しかないぞ。味付けするには足りないと思うが良いのか?」

「はい。一握りくらいあれば大丈夫なんですけど、あります?」

「おう。そのくらいなら大丈夫だ。」


 そう言って塩と砂糖を取りに行っている間に私は、血抜きしたお肉にフォークを突き刺し味がしみこみやすいようにした。

 お肉が少ないからすぐに終わりそうだ。

 エルにお願いして、お肉を漬けていた入れ物に新しいお水を器の半分くらい入れてもらった。

 ロルフが戻ってきたら、エルに入れてもらった水に塩と砂糖を一握りずつ入れてもらい調味液を作った。

 本当はハーブとか胡椒とか入れてつけるといいし、塩分濃度5%くらいがいいんだけど、秤が無いからしょうがない。適当だ。

 これに漬けたら、お肉がジューシーになるはず……。

 

 お肉を漬ける前にちょっと味見をしたが、ちょうどいいのでは……。

 ロルフにも一応味見してもらう。

「この液に漬けて焼くとお肉がジューシーになるんです。本当は2時間以上漬け込んだ方が良いのですが、今回はお試しで時間が無いのと、お肉の量が少ないから揉みこんで短縮しますね。」

「おう。でも、こんな塩と砂糖の水で変わるのか?」

「それは、食べてみてから言ってください。」

「おう。」


 10分くらいお肉を揉みこんでから、ロルフにお願いして弱火でじっくり焼いてもらった。

 さっそくみんなで試食だ。

 うん。血抜きしたから臭みも無いし、液に漬けたからジューシーに仕上がっている。本当はお醤油とかが欲しいが、まぁ十分でしょう。

 周りの様子を見てみると、みんなが驚いた顔をしていた。


「おい。すげーな。こんな臭みのない肉は初めてだ。それに、肉がパサパサしていない。」

「あぁ。今まで食べた肉で一番おいしい。」

 ロルフとエルが驚いて声を上げていた。

 そのほかの料理人さんも、それぞれがおいしいって言ってくれている。


 やっぱり、血抜きは大切だよね。

 

「よし、残りの肉も血抜きをして、同じように液に漬けよう。旦那様にも食べてもらわないと。ネフ、そこの肉を水に漬けてくれ。」

「はい。すぐにやります。」


「ユーカ、最後の味付けの時は絶対に揉みこまないといけないのか?」

「いいえ。あれは、短時間で仕上げたかったから揉みこんだだけで、時間があったら漬けておけば大丈夫ですよ。」

「そうか。なら、もっと簡単なんだな。」

「はい。」


「肉がこんなに変わるんだ。スープの方も期待できるな。」

 ロルフがそんなことを言うので、笑ってしまった。

 

 スープの様子を見たが、まだ少しだが灰汁が出ている。

 もうすこしだなぁ……。


 そのあとは、ロルフから日本での食事や料理についていろいろと聞かれたので、料理について語り合ってしまった。

 その間、エルは横でニコニコしながら口を挟まずに聞いていた。

 

 そんな感じでお料理談義をしていたら、なんとお昼ご飯の時間になってしまった。

 ちょっと作業してるとあっという間だな……。


 ロルフにしばらくすると灰汁が出なくなってくるから、ザルで別の鍋に漉して、スープの方に切った野菜を入れて塩で味を調えれば完成だと説明してから、エルと一緒に食堂へ向かった。


 スープは完成しなかったけど、夜のスープは絶対今までのよりおいしくなっているはず……。

 楽しみだな。

 でも、あれしか材料が無いのはパターンが限られるから考える方も大変だろうな……。

 スパイスとかがあればもう少し違うんだけど……。うーん。こちらで食べらているものが全部見られたらいいのに……。まぁ、復興途中なんだから難しいか……。

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