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LOST HEAVEN  作者: 宵空希
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Gloom

激闘を何とか退けたシンは、気が抜けたようにその場で立ち尽くしていた。

超越を使用した反動もあるのだが、自分が戦っていた相手に驚いていたという理由も付け足されて。

そんなシンに声が掛かる。

「シン、大丈夫なの?さっきの異様な気配は……いえ、今はいいわ」

シンの元へ来たエリカが問うも、途中で止めたのは様子を察しての事だ。

やがてゆっくりとエリカの方を向いて、シンはようやく我に返る。

「……ああ、エリカさん。すいません、逃げられました。あの悪魔、ヒイロさんだったんすね」

「貴方、気付いてなかったの?……そうね、貴方は彼に会った事がないものね」

シンはヒイロの事を知ってはいても、実際の面識はなかった。

シンが聖騎士隊に加入する頃には、既にヒイロはロレイヌには居なかったからだ。

(ヒイロさんは悪魔、なんだよな?でもあの時確かに、俺はあの人に突き飛ばされた。まるで自分の力に巻き込ませないようにして……)

振り返る。

けれど分からない。

ただ漠然と思うのは、ヒイロという存在の不透明さであり、そして。

(それだけじゃない。あの人に触れられた瞬間だってそうだ。……両目が熱くなった。……あれは、何だったんだ?)

少なくとも今回の件で多くの謎が生まれた。

しかしそれはヒイロに限ってではない。

「まあいいわ。一先ずユリィ達のところへ戻るわよ。悪魔達も彼を追って行ったのでしょう?」

「多分。ルベール方面だったんで、とりあえずは大丈夫かな……ってあれ、カレン様は?」

シンの問いに複雑な表情でエリカは伝える。

「彼女ならもういないわ。こっちも逃げられたのよ」

そう返したエリカの脳裏には、離れる直前でした彼女とのやり取りが過る──。


「これだけはハッキリさせておくけれど、私にはヒイロを殺すつもりなんてないわ。私は彼を目覚めさせる為に戦っていたの」

「目覚めさせるって、どういう事?まさか居眠りしながら戦っていた訳ではないでしょう?」

「そうね。言ってしまえば、そういう事なのかしらね。今のヒイロは自我のない人形状態なの。それが今の彼、“第八の罪”『幽鬱のグルウム』。最も危険な悪魔よ」

「八?悪魔は七体ではなかったの?」

「ええ、大々的に知られているのは七つだけね。けれど事実上ヒイロが八体目の悪魔。……私はそれに対抗する為、ヨハンの立てた計画に協力しているの」

「ちょっと待って。彼と貴女が協力関係だって言うの?」

「ええ。もちろんヨハンのした事は決して許されないし、私にも許すつもりはない。でもだからこそ、私は姉としてその責任を負わなければならない。それに何より私だってとっくの昔から罪人よ。裁かれるべきなのは、姉弟揃って同じだわ」

「……そう。それで?貴女達は、わたくし達と行動するつもりはないの?悪魔を討つなら協力するべきではなくて?」

「申し訳ないけれど、私には別にやるべき事があるの。……彼がこの場から離れた以上、私達に戦う理由はないわね。ここで失礼するわ──」


振り返りながらも解せないことばかりだ。

けれど全ては聞き出せずに、文字通り逃げられてしまった。

「……えーと、エリカさん?カレン様は何か言ってたんすか?」

思案していた自分が深く考え込んでいた事に気付き、エリカがシンに返答しようとした。

その瞬間。

二人は気配を察知して、同時に振り返った──。

「──あー、いたいた。いやー、ここに来るの初めてだからさー。どこに行けばいいのか分からなくなっちゃって」

「……はぁ、貴女だったのね」

気楽そうに言葉を発しながら現れた彼女は短目のオレンジ髪で“頼れるお姉さん”といった雰囲気を醸し出す女性。

それがクレハ・ミカヅキと言う名の、SEEKER'sのメンバーだった。

彼女は別の大陸の生き残りであり、この大陸以外の能力保持者は彼女だけ。

そこでロディーにスカウトされた、と言う経緯でチームへと加入したのだ。

「まあ二人に会えて良かったよー。私が遭難してちゃ、救って貰う側になっちゃうからねー」

「……クレハさん、ほんと運だけはいいっすよね……」

現地についての確認は入念に、入念に確認した。

にも関わらずこの有り様なのだから、半ば呆れながらシンは声を漏らした。

「運だけの女みたいにゆーな!……シン、私に会いたかったでしょう?キミは運がいいね。一番初めに私と会えた」

「……。」

満面の笑みを見せる彼女に対してどう返せば良いのかわからない、と言うより返すのがめんどくさい。

内心でそう思っていたシンを他所に二人は話を進める。

「で、これからどーするんだっけ?あ。もう悪魔退治、終わっちゃったとか?」

「はあ?そんな訳ないじゃない。貴女は避難している人達の警護だって、何度説明すればいいのよ?……ちょうどわたくし達も戻るつもりだから、ついて来なさい」

「へーへー。どこへなりとも」

何とか着地点に収まった会話を最後に、三人もこの場を後にした──。

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