Against scarlet
◆
黄のルベールを象徴する豪華絢爛に相応しき国王の間にて。
王の座で頬杖をつきながら、白髪の悪魔である“第一の罪”『憤怒のラース』が険しい顔付きで視線を向ける。
「──ラスト。“奴”はまだ見つからんのか?」
静かに発せられた圧迫感の強い声に返すのは薄水色の髪が美しく映える女の悪魔、“第二の罪”『色欲のラスト』だ。
「──ごめんなさい、ラース。あれからグリードとプライドが探し回っているのだけど、まだみたいね」
「──あ、あのぅ。ボクも、探しに行こうか……?」
そこに巨漢の悪魔である“第七の罪”『暴食のグラトニー』がたどたどしく会話に入る。
しかしそれには目もくれずにラースは怒りを露にして告げる。
「どうやら貴様らは事の重大さを理解していないようだな。あれを野放しにすればどうなるか。今ここで──確かめてみるか?」
威圧感、圧迫感を纏うそれは正しく、悪魔の如き存在感であった──。
◆
かつては豊かさの象徴であったクリム共和国。
農作物や家畜、広大な海に面した漁業体制など。
他国には真似できない程の産業地として名を馳せていた。
そんな大国も今では、廃屋を連ねた無人の土地と成り果てている。
そしてその中心地となる城の前にて、集まった四人は当面の計画内容の確認をしていた。
のだが。
「──以上になるけど、問題ないわね?」
「私は大丈夫だけど……」
代表してエリカが話終えたところでユリィが返事をするも、彼女の視線の先には予定外の人物がこれでもかといわんばかりの堂々たる態度で立っていた。
「──ん?何だ、終わりか?ならさっさと行動に移れ。お前らが働かなけりゃ、俺の酒が底を尽いちまう」
「……オレら、オッサンの為にやる訳やないし」
「てか何でいるんだよ、“ロディー”さん?」
その男は海賊の船長の格好をしており、朝も早くからグビグビと酒を飲んでいる。
実際に海賊なのではなく、単なる趣味でこの格好をしているだけなのだが。
この一見変わったロディーと呼ばれる男こそが彼らSEEKER'sのメンバーを引き合わせ、結成させた張本人であった。
「何でだって?そりゃあお前らがサボらないよう見張りに来たに決まってるだろ?ハハハッ!!喜べ!!」
豪快な笑い声を上げる男を他所に、四人は引き攣った表情でヒソヒソと話し始める。
「ねぇ、どうにかならないの?この男が居ては邪魔にしかならないじゃない」
「て、言われてもねー。こっちの言う事なんて聞かないからなー」
「おいおい、これじゃあ作戦どころじゃないぞ……。レオ、何とかしてこい」
「イヤやし。めっちゃダルいわー」
それぞれの感想が出たところで、ロディーが怒声をあげる。
「おい、お前ら!何くっちゃべってやがる!ピクニック気分で来たんなら、家に突き返すぞ!」
そこで再度、ヒソヒソ会議が始まった。
「……誰か教えてあげなさい。朝からお酒をグビグビ飲んでいては、もうピクニックに行くどころの話ではないのよ、って」
「まあそうなるよねー。完全に自分のこと言っちゃってるからなー。じゃあシン伝えてきなよ?お家に突き返されて下さいって」
「嫌っすよ……。余計に絡まれるのが目に見えてるじゃないっすか……」
「へー、嫌なんだ?まさかとは思うけど、エリカさんか私に行ってこいって……言ってる訳じゃないよねぇ……?」
「ち、ちゃうで!シンは責任持って行くんやて!コイツはそーゆー男や!」
「……えーと——」
そこまで話してシンは渋々動き出す。
これ以上ムダな時間を費やす訳にはいかないし、何よりユリィの矛先がたった今自分へと向けられてしまったのだから。
「あ、あのー……。ロディーさん?俺たちこれから忙しいから──」
「ああ!?んな事ぁ知っとるわ!いいからさっさと働けっ!!」
怒号を飛ばされたシンは、とても面倒臭い気持ちで一杯になっていた。
(あんたがいるから動けねーのに……)
この男は能力を持たない、そもそもメンバーにも数えられていない、つまり一般人にも等しい戦力である。
故にこの場に置き去りにしては後が心配だし、連れて行くにもやはりお荷物なのだ。
どうしたものかとシンは顔を目一杯歪ませる。
そんな事を考えていたシンへと、ロディーはやや不思議そうな顔をして問い掛けてくる。
「ん?二人足りないじゃないか。あの“性悪女”と“生意気小娘”はどうした?」
「ああ、『クレハさん』なら遅れて来るから。『リーナ』の方はお墓参りに行くってさ」
「ったく、緊張感が足りんな。……まあいい。それよりお前ら、抜かるなよ!敵は強大な悪魔どもだ!」
(みんな知ってるし……。それにあんたほど緊張感がない人間を、俺は見たことがねーよ……)
シンが内心でぼやくも構わず続けるロディー。
「それと、忘れるなよ?“お前らに教えた力”は有限だ。くれぐれも無駄な消耗はするんじゃないぞ!」
いきなりの真面目な話に皆が戸惑う。
けれどこればかりは、まともに受け止めるしかない。
ロディーはこの世界においての“最重要人物”なのだから。
「じゃあ、お前ら──行ってこい!!」
そう仕切ったロディーが皆の葛藤(?)を知ってか知らずか、半ば強引に四人を送り出す。
その内三人の両の瞳は、神々しい『金色』に煌めいていた──。




