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LOST HEAVEN  作者: 宵空希
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Divine & Devilish

「ヒイロ、君はこの世界の能力をどう捉えている?」

「また唐突だな」

「僕はね、時々思うんだ。君たち悪魔がいるように、それに対抗し得る力が存在するのではないかってね」

「それが能力保持者だと?」

「どうかな。能力には優劣があり、用途も相性も様々だ。でも確かに圧倒的な力も存在する。僕はそれこそが“神が与えし力”なのではないかと思っている」

「なるほど。つまりお前は、それらの対立こそが真理なり宿命だと、そう捉えているって事か?」

「そうだね。それで君の考えが聞きたかったんだ」

「ふっ、考えも何もないだろ?お前が言ってるのは全て、情報を得た上での知識だ。お前自身の考察のように話してるが、実のところ初めから知っている。違うか?」

「くくっ。さて、何の話かな?」

「……けどまあお前の言う通り俺が悪魔側なら。ヨハン。お前は“神の側”、なのかもな──」




強い風が吹く。

春先のこの時期は毎年桜を咲かせた木々が立ち並ぶ、自然の色濃いロレイヌ連邦国。

そんな花見シーズンも今では荒廃した大地が辺りを占めており、かつての彩り豊かだった風景は何処にもなくなっていた。

地盤が崩れていたり、大きくひび割れていたりと。

そんな殺伐とした過去を彷彿させる戦場跡地で、シンがライルへと声を掛ける。

「間一髪でしたね、ライルさん。すいません、お待たせしちゃって。いやー準備に時間が掛かっちゃったんすよ!……誰かさんのせいでな」

面食らっていたライルが立ち直り、何とかそれに応じる。

「……いや、助かった!誰か、と言うのは。まあ、聞かんでおこう」

ライルは一瞬だけ視線を向けるも、助けられた恩義からかそれ以上の追及はしなかった。

「……ん?なんや、なんでオレを見るん?……まーえーか」

「白々しいんだよ!お前以外に誰がいるか言ってみろ!馬鹿レオ!」

怒号を上げるシン。

敵にしてみれば、何処からどう見ても隙だらけである。

にも関わらずプライドは先手を打てずにいた。

その理由は先程のやり取りで見せた、シンの奇妙なまでの動きのせいである。

(私の避ける方向まで読んでいた?厄介な能力のようですね……)

推測は逆に疑心暗鬼を及ぼす。

故にプライドは警戒態勢のまま迂闊に手を出せない。

それを察したシンがプライドへと向き直り悪魔の名を呼ぶ。

「さて、と。相手してやるよ、傲慢のプライド」

「観念しーや。オレのトモダチは強ーなったんやで。おまえなんか目でもないわ」

空かさずレオも挑発するように畳み掛ける。

けれどプライドが怯む事はなかった。

例え相手がどんな能力であれ、自分が負けるとは微塵も思っていない。

彼女は正真正銘の悪魔であり、その力もまた悪魔の如きモノを秘めているのだから。

「確かに、言うだけの事はありそうですね。ですが私は認めてなどいませんよ?ゲスの如き分際が私よりも格上だなんて。──“第三の罪”『怠惰のスロウス』」

「オレはレオや。そんなキザったらしー名前なんかいらん」


大罪の悪魔達には強さの段階がある。

第一から第七まで、数字が小さいほど実力が上なのだ。

つまり四番目の位地につくプライドよりも、三番目のレオの方が格上という構図になる。

しかしそれはあくまでも万全の状態でなければ参考にもならないのだが。


「……まあいいでしょう。くだらない茶番は面倒なので、纏めて始末してあげま──」

そこで突然、何者かの声が掛かる。

「──なーにしてんのカナー?」

「……見ての通り、害虫の駆除ですが」

「アハハ!それぐらい見ればわかるよー!そうじゃなくって、ラースが怒ってるんだってばー!いつまで時間を掛けるのかってネ!」

現れたのは、見た目は幼い少年。

だが歴としたプライドと同じ悪魔の一体である。

栗色の髪に整った顔立ちで端から見れば女の子にも見える、西洋人形の様な少年だ。

「……興が醒めました。では──」

そう言って早々にプライドは踵を返す。

この場に残った少年の悪魔は三者を見回した後、納得したかのようにレオに告げる。

「命拾いしたね、スロウス?今のキミじゃ本気のプライドには勝てないでショ?」

「……よけーなお世話や、ヘンタイ」

(今のレオ?本気のプライド?)

シンは不思議に思うも後で聞けばいいと、彼はこの時そういう選択をしてしまった。

だから気付くのは少し後になる。

現時点でのレオとプライドの決定的な差を。

「アハッ!ボクには褒め言葉なんだけどナー!じゃあネ!」

嫌に陽気な少年の言葉を最後に敵は去って行った。




「あの子供も悪魔なのか?今まで見た事がなかったが」

そんなライルの問いに、なぜかレオは嫌々ながらに答える。

「……あー、アレは五番目や。『嫉妬のエンヴィー』ゆーてな。怒らすとほんまにめんどーやで。ネチっこ過ぎて頭おかしなるわ……」

「そう、なのか」

詳しくは分からないが、レオの口振りからして余程のくせ者なのだろうとライルは解釈した。

「まあ立ち話もなんだ。良ければ来ないか?歓迎するには少し寂しくもあるがな」

「有り難いっすけど、今は遠慮しときますよ。俺達この後仲間と会う約束しちゃってるんで。その後でまたそっちに行く予定っすから。それじゃ、また」

シンが断りを入れ早々とこの場を後にしようとしたところで、ライルが声を掛ける。

「二人とも気を付けろよ。今奴らはルベールを根城にしている。大戦以降は滅多に出て来ないが、鉢合わせも当然あり得る」

「りょーかいっす!それじゃ、ライルさん達も気をつけて!」

そうして二人は歩き始める。

目的地はかつてのクリム共和国。

先に来ているであろうメンバーと合流する手筈であった。

「はー……、アイツには会いとーない……」

「まだ言ってるのか?さっさと覚悟決めろって。待たせるとまーたエリカさんに怒られるぜ?」

凍り付くような笑顔で金色の横髪をかき上げる姿が思い浮かび、シンは身震いをした。

だがむしろ懸念点はそこじゃない。

「いや、それはまだえーんや。ホンマに苦手なんは、もう一人やろ……」

苦虫を噛み潰したような表情になるレオ。

それを見たシンもまた、自分と同じ想像をしていた事に苦笑いを浮かべる。

「そりゃー、な。まあ、そうなんだけどさ……」

分からない訳がないとシンは胸中でぼやきながら、二人はハァっ……とため息をついて顔をしかめた。

かつての面影を残しながらも、威圧的な風格をある意味で激化させてしまった彼女。

パッツン前髪に長い桃色のロングヘアーを一つに束ねた、ユリィその人を思い浮かべながら──。

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