The beginning of the end
◇
悪魔はなぜ存在するのか。
ではなぜ人間は生まれたのか。
コインからは表も裏も失くせないように、相反する生物が誕生した理由。
それは世界の創造主が、神が二つに分かたれたからだ。
これから始まるのは、そんな神々による争いを終着点へと誘う為の。
最後の物語である──。
◆
(──俺は、何を守りたかったのだろうか?)
何も見えない真っ暗な闇の中で、一人の男は後悔の念に駆られていた。
(いったい俺に何が出来た?……誰も救えなかった。誰も……何も……)
自分が今、何処にいるのか。
生きているのか死んでいるのかさえも分からないまま、只々嘆き続ける。
それだけだった。
(……最後にあんな顔、アイツにさせたのか。本当に……無様だな。……何だ?眩しい──)
まるで死ぬ事すら許されないかの様に、突如として“それ”は現れた。
闇を切り裂く、一筋の光と共に。
『──いつまで悲嘆に暮れているつもりだ?』
突然かけられた声に男は一瞬戸惑うも、すぐに立て直して声の主に耳を傾ける。
姿は見えない。
そしてどうやら、その者は人間ではないようだ。
この異様なまでの存在感を真似できる人間など、いる筈もないのだから。
例えるならそれは、神とでも言うべきか。
いや或いは、悪魔のそれか。
(……誰だ?)
男にとっては既視感のあるやり取り。
けれど前回と違うのは、それが未知の存在だということ。
纏っているのは恐怖すら覚える程の神々しさであり、その反面、邪悪そのもののような歪なオーラだ。
そんな男の考察を他所に、その者はここで素性を晒す。
『堕天した神、とでも言えば察しがつくか?』
そんな者と会話が出来てたまるものか。
男はそう思うも口にはせず、この時点でおおよその見当をつける。
(……なるほど。用があるのは、悪魔としての俺ってことか)
その回答に満足したのか、少しだけ威圧的なオーラが和らいだ。
そうして堕天した神は告げる。
『そうだ。お前にはまだ役割がある。さあ来い、こちら側の世界に。お前は──“特別な悪魔”だ』
暗闇に浮かぶ光の線を最後に、男の意識はそこで途絶えた──。
物語は終幕へと加速する。
全ては地上に生きる者たちに委ねられた。
“人類の救済を企てる神”と、“人類の滅亡を謀る悪魔”が織り成した。
壮大な物語の結末を──。




