雨嫌い
超短編小説です。この主人公とエノキダケ君の話はこれから書きます。どうなるのでしょう??
雨は嫌いだ。急ぐ時に限って降ってくるし、色々とめんどくさい。
まぁまぁな土砂降りの中、俺は自転車に乗って信号が変わるのを待っていた。
特に少し強い霧雨。こいつは本当に、鬱陶しい。自由奔放にあっちこっち舞うから、色々なものが濡れる。例えば眼鏡。雨よけの帽子とレインコートを被っていても濡れる。あとはズボンもだ。足を動かすたびにレインコートに逃げられ、足がビチャビチャに濡れて寒い。おまけに雫が耳をレインコート越しに叩くから、周りの音も声も聞こえない。
雨が好きなのって大体変わり者だよな、と思う。それか、水溜りを飛び越え飛び越えて母親の元へ向かう幼い子供。そりゃあ、まぁ、僕も昔はそうだったけど…さ…。
「え」
思わず声が漏れた。今いる道の反対側に、傘の中から手を出して雨の程度を確かめ、頷き、傘を折り畳んだ人が居たのだ。その人はみるみるうちに濡れていったが、気にも留めていないかの様に歩いている。
「えぇ」
信号が変わったので自転車を漕ぎ始めたが、さっきの人のことはずっと気になっていた。長身で、少し猫背で、長めの前髪で。例えるなら成長しすぎたエノキダケみたいな人だった。こんなに雨が降っているのに傘をささずに…。濡れたかったのだろうか。いや、そんな濡れたい欲が出る奴なんて居るのか。それかもしかしたら本当にあの人はエノキダケで、水分を欲していて…。…いやいやいやいや。ないないないない、と首を振った。色々な人がいるのだ、と思うことにしよう。
その約半年後にその人と再会し、何なら親友になる運命にあることを俺は知らなかった。
今後をお楽しみに!