ざまぁされて処刑の日
「ユシヤよ。何か言いたいことはあるか?」
王様が俺に冷たい目を向けながら聞いてくる。
ここは王国の処刑場。
今からここで処刑されるのは……俺だ。
初期のころからパーティにいた幼馴染のソリオをいじめ、追い出したがソリオはそこから這い上がり、今では王国を滅亡から救った英雄だ。
逆に俺はソリオの妨害をして様々な悪事をしていたことがばれて勇者の称号を剥奪、斬首されることになった。
俺とソリオ、どこでこんな違いが出たのか牢の中で考え続けたが答えは出なかった。あいつなら、最後の最後まで俺を信じたあいつなら答えを知っているかもしれないと思った。
「では…… ソリオに一つ質問をさせていただけませんか?」
「よかろう。誰かソリオを連れてまいれ!」
その数分後ソリオは旅をしていた頃と変わらない笑顔で俺の前に立った。
「やぁ、ユシヤ。私に質問があるって聞いてけど、何かな?」
「俺がお前を追放する前からお前は俺に何かを期待しているが何を期待しているのか牢の中でずっとかんがえていたがわからなかった。お前は俺に何を期待していたんだ?」
その言葉を聞いたソリオは少し悲しそうな顔をしてこう言った。
「私たちは幼馴染で旅の最初からずっと一緒に旅をしてきたよね。私の知るうちではあなたが一番好感を持てたから誘ってくれた時はすごく嬉しかった」
あぁ、そうだったな。あの時のお前の笑顔をまだ覚えているよ。
「けれどあなたは王様や町の人たちから期待されるようになってから変わっていった。そんなあなたを見るのは辛かったけどいつかまた忘れていた気持ちを思い出してくれることを私は信じ、期待していたんだよ」
忘れていた気持ち?
困惑している俺にソリオは珍しく語気を荒げて語り掛けてくる。
「思い出して! あなたは何がしたくて勇者になったの!? 私を誘った時あなたはなんて言ったの!?」
ソリオを誘った時……俺はなんて言った?
俺たちの始まりはスラム街にある小さな学校で、たった一つのパンをみんなで分けて食べるような苦しい生活だった。
そこの最年長だった俺とソリオはみんなにそんな生活をさせたくなくて……あぁ、そうだ。
『俺は俺たちのように飢える人がいない世界を造りたい。その世界ができたとき、ソリオに隣にいてほしいんだ。俺と一緒に旅に出てくれないか?』
その言葉を聞いたソリオは一瞬だけ泣きそうな顔になったが直ぐいつもの笑みに戻った。
「思い出してくれた?」
「あぁ、思い出したよ。なんでこんなことを忘れていたんだ俺は。名誉やお金を得るのは貴族たちを動かすためだったのにいつの間にか手段が目的になり、大事なことを見失うとは…… 本当に俺は勇者失格だな」
自嘲気味に話す俺に言葉を返さず国王を真っ直ぐ見つめたソリオは驚くことを言い出した。
「賭けは私の勝ちです。王様、私の願いを覚えてますよね?」
「ユシヤが初心を思い出し反省できたのなら処刑を取り消す、だったな。いいだろう。ここまで思い出せたのなら今度は道を踏み外すことはないだろうからな」
そう言って俺を見る王様の眼は先ほどとは打って変わって優しい目をしていた。
「実はな、ユシヤ。お前の処刑をしないでほしいという嘆願書が何枚も来ていてな。それも個人で出されたものではなく村や町の者の連名で出されたものが、だ」
「ユシヤは確かに道を間違えたかもしれない。けれど多くの人を助けたいという思いが消えたわけじゃないことを知っている人たちはたくさんいたんだよ」
「その者たちは騎士団や冒険者が間に合わなかった地域の者たちだが、お前が身を削って戦い命を救ってくれたと言っている」
嘘だろ……!? あの時は仮面をつけて魔法で姿を変えていた。そうそう見破られることはないと自負していたのに……
「なんでバレたって顔してるね? 『陽の鳥』使ったらそりゃバレるよ。その技使えるの現状ユシヤだけだし」
「まぁそんな訳でな。お前が今回の事件を起こしたこともみんな知っているが民を守るために戦ったことも知れ渡っている」
だから野次や怒号はほとんどなかったのか。やけに少ないと思ったよ。
「だが」
王様の顔はいつもの厳しい顔に戻っていた。
「罪は罪だ。勇者の権利剥奪と今回犠牲になった者の家族に1億の慰謝料を払うこと。数ヶ月の謹慎を命ずる」
「はい。今度こそ王や民を裏切らないことを剣に誓います」