【90話目】 力の差
俺たちの間に立って、拳を受け止めているディーオンは静かに佇む。
「お前ら……いったい何してやがる」
そう言ってディーオンは俺たちを交互に睨みつける。
その一言とディーオンの鋭い視線で俺は今戦う気力を無くし、ディーオンに対する恐怖で体を震わせていた。
それはゼンも同じようで、俺と同じように何も話せず体を震わせているだけだった。
「まったく、喧嘩するのが早ぇよお前ら」
俺たちが体を震わせているのを見たディーオンは俺たちから手を離し表情をやわらげながら言った。
途端に体の震えが止まる。
「ユウト来たばっかりで上司に喧嘩売んなよ?ゼンもだ、どこほっつき歩いてんだ行くぞ!じゃあな!!今回の件はなかったことにしておいてやるよ!」
さっきの表情と空気が嘘のように変わる。
そしてディーオンは俺に忠告を入れて、ゼンを引っ張りながらその場を立ち去った。
俺は膝から立ち崩れた。
「ユート!大丈夫か!!」
真っ先にデイが俺に駆け寄ってくる。
「まったく無茶しすぎですよあなた!」
ヴァーリンもゼンに続いてやってくる。
その他にも「俺のために……」とか「自分の身分を弁えて……」という声が聞こえたが俺は立ち崩れた状態でゼンに振ったはずの右拳を眺めているだけだった。
衝撃だった……
─ゼンがあんなに強かったことが?
違う
─いきなり不思議な感覚におちいったから?
それも気になったが違う
俺とゼンの拳は明らかに全力ではなかった。
それでも……あの拳を受け止めたディーオンの手……
あの手からは何一つ魔力を感じなかった。
つまり俺たちの拳をディーオンは魔法、魔力一切使わずに受け止めたんだ。
これが俺とディーオンの力の差……
流石にありすぎて笑えてくるよ……
──
「まったく何やってんだお前さんは」
廊下を歩く2人の男、1人はさっき優斗と戦っていた中隊長ゼンそしてもう1人はパーゼレ魔法騎士団大隊長のディーオンである。
ディーオンはあきれながらもゼンに問いただす。
「別に……アイツが仕掛けてきたことだ」
そっぽを向きながらディーオンの問いかけに答えるゼン。
「まぁいいけどよ。それより、ユウトの奴はどうだった?」
ため息を1つ吐いて、ディーオンは話題を変える。
「まぁ多少強いとは思う、小隊長クラスくらいかな。でもそれだけ、サギヌマと比べたら大したことない」
ゼンは多少の評価をするが、でも前までいた異世界人の方が強いと話す。
「そうか……」
ディーオンは残念そうな顔をしながら反応する。
「別にあなたが助けるほどの価値はなかったですよ」
と冷たく話すゼン。
「……いや、俺が助けたのはユウトじゃなくてお前の方だ。」
「は?」
ディーオンのトンチンカンな言葉にゼンは顔をしかめる。
なぜ俺の方が助けられなければいけないのかと疑問に思う。
「あれを見て確信したんだ、ユウトはまだ自分の強さの壁を越えられるってな!」
自信満々にユウトのことを話すディーオン、それ見て意味がわからないといった表情をしながらゼンは廊下を歩いて行った。




