【86話目】さらば魔法学園
魔法学園の廃園式が終わり、とうとう住んでた寮の退去の日の朝になった。
俺は最後の確認としてカバンの中の荷物を整理する。
魔法学園の教科書、魔力でインクが出る魔法のペン。これらは魔法学園で使っていた物だ、学園を離れるとなると不必要な物となるのはわかってはいるが思い出として残しておきたかったのだ。
ちなみに元の世界の教科書等は教室に置いてきているため今は持っていない。
それと弁当箱、これは元の世界で俺が使っていた奴だちゃんとこの世界に来た時に洗っているためそんなに汚れてはいない。
あとは服とかは流石にカバンには入りきらないため、新しくカバンを買ってそこに入れる。牛皮のカバンと聞いたがかなりいい代物のようだ。
あと何かないか、そう思いながら元の世界のカバンの中を手探りで探す。
すると何か布を掴んだ感触があり、それをカバンから出してみた。
「なつかしい……」
出した物をみてつい口に出してしまう。
俺が出した物は赤いハチマキ、そのハチマキには"必勝!"と刺しゅうが施されてあった。
これは俺の母が俺の受験のために用意してくれたハチマキで、必勝!という文字は母自身が刺しゅうを施してくれたのだ。
これをつけて受験勉強に精進して、希望の高校に進学することがかなった。
まぁ俺にとってはお守りみたいな物だった。
俺はそのハチマキをカバンにしまってそのままカバンを持ち、寮から出る。
寮から出る際にはだれとも出会いはしなかったが、寮の入り口にだれか立っているのに気がついた。
「きたか、待ってたよ。」
俺がきたのに気づいたのかその人は俺に声をかけてきた。
その人は3年のバリオン・フォルコメンだった。
「ありがとうございます。……でもどうして?」
俺のことを待っていてくれたバリオンさんにお礼をいう。
それはそれとして、なぜバリオンさんは俺のことを待っていてくれたのか不思議だった。
「まぁ最後だからね、それとアーニス先生から聞いたけど、騎士団に入るんだってね」
いつのまにアーニスはそんなことをバリオンさんに言っていたのかは分からないが、まぁ最後だし別に構わないか。
「はい、まぁ……バリオンさんはこの後どうするんですか?」
俺は自分のことを少しはぐらかしながら、バリオンさんのことについても聞いてみる。
「俺はこれからちょっと世界を旅してみようと思う。」
バリオンさんは旅をすると言った。
凄いな、これから大変で長い旅に出るのだろうか。
「そうですか……それじゃあもう会えないんですね。」
騎士団の仕事でいろんなところへ行く可能性はあるが、そこでバリオンさんと会えるなんてほとんどないだろう。
これでお別れ……そう考えると胸の奥が変な感じがした。
「いやまた会えるよ。」
バリオンさんは少し微笑みながら手を差し伸べて握手を求めてきた。
「……きっとね」
俺とバリオンさんは強く握手を交わしてそのまま別々の道へと進んだ。




