【82話目】 アーニスとの会話
学園の職員室、俺はまたそこに来ていた。
騎士団へ入るための進路について、話に来たのだ。
職員室の扉を3回ノックする。
「入れ。」
入室の許可が降りて俺は扉を開けた。
「失礼します。」
一応一声かけてから職員室へと入った。
「……きたか、進路についてだろユウト。」
職員室にいたのはアーニスだった。
俺は扉を閉めてアーニスがいるところまで歩く。
アーニスのところへ歩く途中、壁にかけてあった服が目に入る。
その服は女性用の服とかではなく、何かの制服でその服に近いものを見覚えがあった。
「それで、お前はどの進路にすすむんだ?」
壁にかけてあった服に意識が向いていたがアーニスの声かけにより、意識が壁の服からアーニスへと戻った。
そうだった、俺の目的は進路についてだった。
そう思って俺はアーニスの方を見た。
「俺は……パゼーレ騎士団に入ります。」
「……は?お前正気か?」
アーニスは信じられないといった表情で俺のことを睨んできた。
「はい正気です。」
俺は面と向かってそう言い放った。
「お前、一年経てば元の世界に帰れるんだろ?何も死ぬかもしれない騎士団なんてやめとけ!」
アーニスは騎士団に入ることを止めようとしていた。
その時俺はアーニスの言った言葉に疑問が浮かぶ。
「なんでそんなに騎士団に入団する事を否定するんですか?
それに、なんで一年経てば俺が元の世界に帰るって知ってるんですか?」
俺はアーニスに思い浮かんだ疑問符を投げかける。
その言葉を聞き、アーニスは少しため息を吐く。
そして、自分の着ている服をいきなり捲り上げたのだ。
「な、何してるんですか!?」
いきなりの事で動揺して、俺は咄嗟に顔全体を手で覆い隠した。
まさか、アーニスさんってそういう趣味?
「いいから、見ろ!!」
怒鳴るようにアーニスは自分の事を見るように言う。
俺は恐る恐る手を退けて、アーニスの事を見た。
アーニスは服を腹部が見えるほどにしかあげていなかったのだ。
いや、驚くべきはそこではない。
本当に驚くべきなのはアーニスの腹部だった。
腹部全体を覆う深い傷や火傷痕、アーニスの腹部には痛ましい傷跡がいくつもあったのだ。
「わたしは、元騎士団員だ。」
アーニスは自分が騎士団に所属していた事を明かした。
通りでさっき見えた壁にあった服に見覚えがあったと思った。
あの服は騎士団の服だったのか。
「わたしは騎士団で何人もの同僚が死ぬのを見てきた、お前のような甘ちゃんがいてもただ死ぬだけだ。諦めろ。」
アーニスは自分の過去の事を語る。
これは俺の事を心配してくれてるんだ、そんなことはすぐにわかる。
それでも……
「お気持ちはありがたいです。それでも、俺は決めたんです。この道を行く事を!」
俺はディーオンの時のようにアーニスを真っ直ぐ見つめる。
その目には覚悟が決まっていた。
「言っても聞かんか……」
また、ため息を吐くアーニス。
「お前で10人目だ。騎士団に入団するのはわかったから早く出て行け。」
アーニスは疲れたかのように話す。
俺はアーニスに言われた通り、部屋を出ようとした。
その時、ディーオンからの言葉を思い出したのだ。
「そうだアーニス先生、ディーオンがよろしくだそうです。」
振り向き様にディーオンからの言伝をアーニスに伝えた。
「……そうか、わかった。」
アーニスは一瞬、驚いた顔をしたがまた表情を戻して俺の言葉に対応した。
俺は部屋を出て、自室へと戻って行った。
◇ ◇ ◇
「そうか、ディーオンと知り合いだったか。
ユウトが出た後、そう独り言を言う。
今でも思い出す騎士団時代の事。
一緒に戦って、そして去年元の世界に帰った彼は元気にやっているだろうか。
そんな事を思ってアーニスは微笑したのだ。




