【80話目】 今後について
マジックフェスティバルも終わり、パゼーレへと帰ってきた俺は1人のんびりと街中を歩いている。
もうじきパゼーレ魔法学園は廃校になり俺達学生には様々な選択肢が与えられていた。
他の都市の学園へと通うか、それとも学園には通わずにどこかで働くか。
俺はどうするべきかを悩んで、気分転換にでもと思い街を歩いていたのだ。
俺がこの世界にいる期間は後10ヶ月半もある。
その限られた時間で俺は何をすればいいのか、何をするべきなのか、何がしたいのか。
その答えを俺はまだ見つけられていない。
マジックフェスティバルでは強くなりたい!そして俺が今どれほど強いのかを確かめるのがきっかけで参加した。
その結果、実際に俺は強くなれたし、優勝もできた。
だから俺は次の目標を目指しているんだ。
人を助けたいという目標を。
だとしたら働くという選択がいいのだろうか、そもそもこの世界に警察という感じの組織はいるのだろうか?
そんな事を考えながら歩いていると。
「キャァァ!!ひったくりよ!!」
女性の声が聞こえた。
その声の方を向くと、奥の方にはおそらく声の主であろう女性がいた
「うぉぉぉ!どけどけぇ!!」
女性の方角からひったくり犯であろう男が盗んだと思われる荷物を持って俺の方へと走って来ていたのだ。
それなら……
指にはめてある魔性輪に力を込め、魔法が使えるようにする。
俺は男の前に立ち、片手に魔力を込めた。
とはいっても、相手は一般人。ひったくり犯だとはいえ、全力で魔法をぶつけるのはいけない事だ。
だから俺はいつもより力を抑えて、風の魔力を男の足元目掛けて放つ。
見事に魔法は命中!男は俺の魔法に足を取られて転びそうになる。
その時、男はあの女性から盗んだであろう荷物を手から離して荷物が宙に舞う。
俺は荷物の落下地点を予測しながら、荷物が落下する場所に行き、両手で落ちてきた荷物をキャッチした。
荷物をキャッチした俺はすぐさま、持ち主であろう女性の元に走っていった。
「これ、あなたのですよね?」
持っている荷物を女性に差し出しながら、この荷物の所有者という事を女性に聞いた。
「えぇ、そうです。取り返してくださりありがとうございました。」
差し出した荷物を受け取りながら女性は笑顔でお礼を言ってくれる。
その女性は金色の髪と優しそうな顔立ちをしておりとても綺麗だ。
しかし髪や顔よりも目を惹いたのは。
「そのお腹、もしかして赤ちゃんが?」
そう不自然にも膨れ上がっていたお腹、そして服装もそれに適した物だった。
「そうなの。もうすぐ産まれるのよ。」
大事そうにお腹を撫でながら女性は笑顔で言う。
しかしそんな話をしている中、俺がふと後ろを振り返ると、ひったくり犯は立ち上がりその場を離れようとしていた。
「おいまて!」
俺に反応して走り出すひったくり犯、俺も追いかけようとした時だった。
後ろから何が通った気がした次の瞬間にはひったくり犯の体は男に地面に押さえ付けられていて、両手を拘束されていた。
そしてひったくり犯を押さえつけていた男を俺は知っている、彼は……
「ディーオンさん!?」
俺の声に気が付いて、俺に顔を向けた男、ディーオンは。
「おぉ、ユウトじゃねぇか。久しぶりだな。」




