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やさしい異世界転移   作者: みなと
転移!学園!そして……
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【7話目】ディーオンの不安

 ユウトを寮へと送った後、ディーオンは城に帰って来て城内の廊下を歩いていた。


 彼はユウトを送った事を自分が仕えているセリティアの所へ報告しに行っている途中であった。

 誰もいない蝋燭の灯が灯った廊下を1人で歩いている際、ディーオンは先程一緒にいたユウトの事を思い出していた。


 正直に言ってしまえば不気味な存在だった。


 行動に対する感情はわかるのだが、その行動に対する考えが全くわからない。

 そう思いディーオンは彼から貰ったスマホを取り出して見た。


 このスマホだってそうだこれを渡した事で俺達とっては役に立つかもしれない、だがもう待遇のされた彼にとっては得がない為渡す必要が無いのだ。

 もしかしてこれはあまりあっちの異世界じゃそんなに価値のない物なのだろうか。


 まぁいいか、確かにいくらか不思議な所はあったが恐らく彼とはもう合わないだろう明日からはまたキョウシンカイのアジト捜索やらの仕事に戻るのだから。

 そう思って歩いているとセリティアの仕事部屋まで着いた。


 俺は扉を3回ノックをした。


 そして部屋の中からセリティアのが部屋へ入る許可を出して貰い、扉を開けて部屋へと入った。

 部屋の中はセリティアの仕事机のランプしか明かりが灯っておらず少し薄暗く、扉から両脇には多くの本棚が並んでおりいつ見ても相当の数の書物が収納されていた。


「お帰りなさいディーオン。それで優斗はどうだったかしら。」


 仕事机で資料の整理をしていたセリティアがさっきの転移者について聞いてくる。

 その姿はどんな神さえも一目惚れさせる程美しくいつまででも見ていたいと思う程だ。


 そういった私情はとりあえず心の中に留めて置くだけにして報告を行う。

 話した内容、行った店や彼の魔法使いとしての実力まで事細かに説明した。

 説明し終わった後、セリティアは特に驚きはせず、冷静に会話を続けている。


 まぁ魔力が解放できていない事に関しては異世界人とかは関係ないからと思い会話に専念する。


「そうでしたか。まぁ魔力の方は彼自身の問題ですし私達がどうにか出来る訳じゃ無いですからね。そちらよりも貴方は彼といて何か感じた事はありませんでしたか?」


 とセリティアは俺に聞いてきた。

 魔力の方は確かに俺達にはどうする事も出来ないし放置しておくとして、ユウトについての印象についてを素直に言っておこう。


「正直に言って、不気味な奴だった。考えている事もあまり分からなかったし、それに俺があいつから感じた魔力のオーラも異質な感じだった。」


 基本的には一般人には魔力のオーラなどはわからないがディーオンの様な高度な魔法使いなら感じ取れると言われている。


 そのディーオンが感じ取った魔力というのは魔力解放が出来ていない事では無く人それぞれの潜在的な魔力の事だった。


「ほう、異質……ですか?どういった感じなんですか?」


 少しセリティアの反応が変化した。

 どうやら少しセリティアはユウトに対して興味があるみたいだ、それに関しては少し嫉妬してしまう部分はあるがセリティアが気になると言うのだからそれについて答えねばならない。


「あいつの魔力に関しては今まで俺ですら感じた事がねぇような、俺のとは違う感じ魔力だった。」


 魔力というのは人それぞれ違う物だが、それでも一般人は魔力の感じは近いのだが、ユウトの魔力はその一般人や凶震戒といった俺がこれまで会ってきた奴等の魔力とは違う物だった。

 あいつの魔力はどちらかというと……


 いやそれは無いな。


 例え異世界人といえどもそんな魔力を持つの事はありえないだろう。


「そうですか、貴方とは違う魔力ですか。貴方が言うのであれば間違え無いでしょう。それで、貴方はなぜ彼の考えている事がわからないとその思ったんですか?」


 そう話題を切り返して俺のユウトへの評価について聞いてくる。


 ユウトについての評価か……


 と軽くさっきまでの出来事を振り返りえってみて何を言うか考える。


「そうだな……俺はあいつ何考えてるのかわからなねぇ。」


 買い物している際何回も和ませて笑わせようとしたが結局一回たりとも笑った事がなかった。

 笑顔になった事があったが心から笑ってないのが凄く分かった。

 恐らく無理にこちらに気を使っているのだろうそのユウトの行為に気味の悪さを感じた。


「なるほど……そうだったのですね。」


 セリティアは俺の言葉を聞いて少し不安そうな顔をする。

 やはりあいつの事についてなのだろうか?まぁあんな感じの奴だったし、わからなくはないが少し心配し過ぎないか?


「少し過保護過ぎやしないか?あいつの記憶覗いた時に何かあったのか?」


 他にも転移者はいたがセリティアがここまで気にかけたのは俺が知る限り、あいつが初めてだろう。

 だからこそ、ここまでなのが少し気になったのだ。


「彼から過去について聞いたのですか?」


 ハッとした驚いた様な顔をして俺の方を凝視した、おどろいた顔もとても綺麗だ。

 やっぱりこの人はどんな顔をしても綺麗なんだなと再確認する。


 ……って、今はそんな個人的な感情はいいだろ!


「いや、ただ見てたらそんな感じがしたってだけだ、やっぱりその事が原因か?」


 わからなかったあいつの感情だが、1回程あいつの本当の気持ちがわかる場面があった。

 それは飯屋に入って話している時、車という物の話をしている時だった。


 その時だけは負の感情みたいなのが本当に出ていた気がした、感情を出さないあいつにとって珍しいと思って印象に残っていた。


 その時は、まぁ自分達の世界の物をそんな風に使われたんじゃそりゃ嫌な気分になるよなと思っただけだったが後から思えばそれだけじゃないと思えてきた。


「それもあるんですが……それよりも気になる事があったので」


 一応その事もあるのかそれでもそれ以外にもあいつに他の転移者とは違って気になる記憶があるのか思った。

 セリティアはそのままユウトに関して思った事を続けて語った。


「彼がこちらの世界にやって来る直前の記憶が見えなかったんです。」


 それは本来ありえない事だった。

 なぜなら記憶は本来偽る事が出来ないのだ、記憶というのは人が無意識に物事を保持している。たとえ忘れていようとも脳の隅には必ず残っている物だ。

 セリティアの魔法はその記憶を隅々まで読み取る魔法だからだ。


「店が多い場所に来たところまでは見えたのですが、一瞬真っ暗になったと思ったらいきなり空の上に放り出されたのです。明らかにここに来るまでの記憶が消されているのです。」


 記憶が改竄されている……?


 そんな事などあり得ない、たとえ記憶が改竄されいようとも普通の人間の魔法だとしてもセリティア程の魔法使いならばその改竄なんて関係なく、記憶を見れる筈なのである。


「じゃあユウトは……」


 セリティアでさえ見えない記憶があるという事でとある考えが頭を過ぎる。

 今までユウトの情報からしてある存在との関わりが浮かぶ。

 いや、そんな事あり得るのか?


「まだ、確証はありません。

 ですがもしもの事を考えて貴方には他の試験生が来るまでの数日間優斗に戦闘試験の特訓をしてもらえませんか?」


 それはセリティアからの提案だった。

 実質監視を言い渡されているのだが、それは別にいい問題は何故特訓をしなければいけないかという事だ。


「いや待て、得体の知れない奴の特訓は流石に危険すぎないか?何故素直に監視をしろって言わない?」


 これに関しては流石にリスクが高い、そう思い俺はセリティアに異議を唱えた。

 しかし俺の意見を聞いてもセリティアはそれには賛成しそうになく、逆に俺に対しての意見を言おうとする。

 どうやらセリティアにも考えがあるようだ。


「優斗がいた世界では平和で戦いとは無縁なんですよ。流石に転移補正があるとしてもちょっと不公平じゃありませんか?

 それにたとえもし、優斗が危険な存在であっても私には頼りにしている騎士がいるんですよ。」


 そう言ってセリティアは俺に微笑んだ。

 流石にそれはちょっとズルいだろ……

 そんな事を言われて、そんな笑みを見せられたら断る事なんて出来ないじゃないか。


「……ったくわかったよ。言われた通りあいつをみっちりと鍛えてやればいいんだろ?」


 少しため息をつきながら俺はセリティアの意見に同意する事にした。

 一応この事はユウトには言わないと決めた。

 下手な事を言ってその場で暴れられたらたまらないからな。

 そんなこんなあり話が一通りまとまった所で俺は明日に備える為に自室へ戻ろうと部屋を出ようとした時、セリティアが……


「これから大変になると思いますが私は貴方の活躍を楽しみにしています。」


 と言ってきた。

 そんな風に笑顔で言われたら仕事のやる気が上がるもんだ、言われなくても俺は貴方の期待に応える覚悟はあります。でもこの事は俺が言うのも少し恥ずかしいから心の内側にしまって置くことにした。

 それから俺はその言葉に対して軽く返して部屋を出た。


 そしてディーオンは城の廊下を考えながら1人歩く。

 セリティアの事を考えるのはいつもの事だが、今日来た異世界人の事についても考えていたのだ。

 明らかに他とは違うあの男に対してディーオンが多少の不安を抱いた。


 ……ユウト……、お前は一体何者なんだ?


 ちなみにセリティアとディーオンが話し合っていた間のユウト本人はというと……

 頭を強く打ち付けられ、未だに気絶している真っ最中であった。

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