【73話目】黒き鎧
試合が始まった瞬間、俺とクラックは武器同士でぶつかり合って鍔迫り合いになる。
お互いの力が均衡しているのかしばらくその状態が続いた。
その均衡を崩したのは俺だった。
3本目のジン器を遠隔で操り、クラックへと差し向けた。
それを躱そうとクラックは後ろへ飛び、互いの距離が離れる。
その隙を俺は逃さなかった。
後ろへ飛んだ瞬間に俺は放ってた短剣、両手に持っていた短剣を風の魔力で高速回転させながらクラックに投げつける。
短剣を投げつけるのと同時に俺もクラックへと畳みかける。
クラックの四方を俺と短剣が囲む。
「くっ、させるか!」
クラックの周りに黒い魔力の靄が立ち込め3つの短剣を靄でガードし、短剣の動きが止まる。
しかし、短剣の動きを止めるのに注視しているため全体的な防御力はそれ程高くはない。俺はそれを狙っていた。
防御層が薄くなったところを狙って単身で殴り込む。
魔力を込めた拳はクラックの薄くなった靄を突破する。
靄の中に入ってきたことでクラックは刀を構えて檄撃する構えをとり俺に斬りかかる。
しかしその太刀筋をギリギリで躱し、そのまま拳を叩き込みにいく。
その時だった。
「ゴホッッ!!」
刀を振り終わった後、クラックの口から赤い液体が飛び出てきた。
吐血だ。
その瞬間を見た時、とある思考が俺の脳内に浮かんだ。
─このまま戦ってもいいのか?─
クラックは病人、このまま戦えばもしかしたら命を落とすかも知れない……
クラックが死ねばリリノが悲しむだろう。
しかし……
クラックの表情を見た。
まだやれる!と、まだ戦いたい!とそう言っている気がした。
だから俺は
その拳を止めようとはしなかった。
クラックの顔面に俺の渾身のパンチが直撃し、黒い靄を吹き飛ばしながら後ろへと飛んでいく。
『ニャんと!クラック選手、ここで痛い一撃を喰らったぁ!!』
───
……実況席から声が聞こえる。
俺は俺の事を全力で殴ったユウトを見た。
アイツは俺のこの体の事を知っていて、たった今発作が出たとわかっていても攻撃をしてきた。
楽しい……
少しの攻防だったが、アイツは俺と互角の力を持っているのがわかる。
だからこそ、アイツをどうしてもねじ伏せたい。
だから……
力を、魔力をよこせ!
心で強くそう念じた瞬間、クラックの体から膨大な魔力が溢れた。
ここでクラックの魔力についてだ。
クラックの潜在魔力は最高基準である赤判定である。
その膨大な魔力がクラックの体に集まる。
一瞬でクラックの周りを黒い靄が囲んで、すぐに晴れる……
そして晴れた瞬間、優斗および観客全員が見たものは
クラックを包む黒い鎧、黒い大楯、そして黒い大剣だった。




