【67話目】 十戒士
「全員、揃ったな。」
凶震戒の本部のとある部屋
扉は2箇所あり、それぞれ反対方向に設置されている。
片方は十戒士達が入ってきた扉である。
その扉の間には巨大な円卓があり、その円卓を囲むように5人座っていた。
うちの2人は先程バットルから帰還した白髪の老人シルド、そして桜髪のフレリア。
そして全員揃った事を確認したのは十戒士のリーダー的存在なアーサー・ノエルだ。
「ボスはもう少ししたら来る。それまで待っていろ。」
「ちょっと待ってよ〜、おじさんがまだ来てな……。」
「待ってください。アーク、リィト、ウルラは死亡。あと1人は自分の領地から出てこない引きこもりですけど、ブラッドハンドが来てませんよ。」
全員揃ったと言い進行しようとするアーサーに対して物言いをするフレリアに被さるようにドギツイ紫色の長髪の女性ケニラが反応した。
ちなみにブラッドハンドは仮名らしく、彼の本名を知る者は凶震戒のボス以外いないという。
「ちょっとおばさん、私の言おうとしてる事取らないでよ。」
自分の言われた事を取られたのが悔しかったのかフレリアはケニラに対して文句を言った。
「はぁ!?あなた今、私の事をなんて呼びましたか!?」
対するケニラはフレリアの文句の事など無視して、フレリアのおばさん呼びに対して激怒した。
「落ち着けケニラ。」
アーサーが激怒してフレリアに攻撃を仕掛けようとしたケニラに一言威圧するように発言をする。
その言葉に怯んだのかケニラは動きを止めた。
「ブラッドハンドについてだが、どうやらボスから直々に命令を出されたらしく、今はそっちに優先しているようだ。」
ケニラを落ち着かせて、ブラッドハンドがいない事に対しての説明をする。
「ハッ!ハッ!ハッ!なんだよボスもイジワルだな!!俺にも声をかけてくださればよかったのに!!」
筋肉隆々で頭に響くような大声を発しているの大男がマッチスだ。
「マッチス殿、声量を少し下げてもらえませんかな?少々老体には堪えますので。」
マッチスの隣に座っていたシルドが声の音量を下げるように注意した。
「ハッ!ハッ!そいつは済まなかったな!シルドの爺さん!!これからは気をつけるよ!!」
気をつけると言いながらも声の音量が変わってはおらず、シルドは注意する事を諦めるような表情を浮かべた。
「……まあそうですね。そういう事でしたら私達にも言ってくださればよかったですのに。」
ケニラはマッチスに同意する意見を言った。
「えぇ〜おばさん達じゃ役に立たないから言わなかったんじゃないの?」
そこにフレリアが辛辣な評価を言った。
「そろそろいい加減にしてはどうです?このクソガキ」
ケニラの顔が真っ赤になって声は先程よりは静かだが、声からは確かな怒りを感じた。
「私にそんな事言うのは、私に一度でも勝ってから言いなよ……おばさん。」
しかし、そんなケニラには怯まずフレリアも言い返す。
この言葉に怒りが頂点に達したのか、ケニラは立ち上がってフレリアに攻撃を仕掛けようとした。
だが次の瞬間
「落ち着けって言ったよな?これは警告だケニラ。次こんなことしたら……殺すぞ。」
いつの間にかアーサーはケニラの首元に剣を突きつけていたのだ。
さっきまで中央にあった円卓は消えており、アーサーの手にはその円卓と同じ材質の剣が握られていたのだ。
「騒がしいな。」
部屋の奥、十戒士達が入ってくる扉とは反対に位置する扉の奥からその声は聞こえてきた。
その声を聞いた途端、十戒士全員の背筋がザワついた。
そして扉が開く。
そこから出てきたのは凶震戒のボスである人物。顔は仮面に隠されており見えないが、それでも巨大な魔力が体全体から溢れ出ていた。
「何か大きな音がしたが、どうした。」
ボスは静かに状況を聞く。
「はっ、それが少々言い争いになってしまい私がその言い争いを収めておりました。」
アーサーはボスの方を向き、さっきまであった事を簡潔に説明した。
「ほう、だが貴様以外は大人しくしておるようだが?」
「えっ?」
ボスの言葉にアーサーは振り返って他の十戒士達を見た。
そこにはさっきまで何も無かったかのように静かに全員席に座っていたのだ。
全員さっきの騒動を無かった事にするつもりのようだ。
「さぁ早く円卓を元に戻して、席に着けアーサーよ。」
ボスの指令を聞いてアーサーは他の十戒士達に怒りの眼差しを向けながら、手に持っていた剣を円卓の形に戻して自分も席に着いた。
そして全員が席に着いている事を見たボスも自分の席に座った。
「それでは、今後の方針について語ろうではないか。」
ちなみに十戒士とありますが十戒とは特に関わりはありません




