【66話目】混ざり合う運命
「……虚しいな。」
人で賑わっている出店が立ち並んでいる中、ボソッと呟いた。
俺はバットルの市場に来ていた。
今日は試合が行われず、都市バットルに来た日以来の自由散策だった。
いろんな人を誘いたかったが、俺が起きた頃にはもう何処かへ出かけていたようで結局1人で出歩いてるわけだ。
明日の決勝戦に向けて英気を養おうとするが、まぁ1人でいるのも結構キツイものだ。
こんな事なら、今日はもう帰って明日に向けて準備でもしてようか。
そう思って寮へ戻ろうとした時だった。
「ちょっとお嬢ちゃん?お金払ってくれないと困るよ。」
「えぇ〜そんな事言ったて持ってないのもは持ってないよ〜」
何か言い争う声が聞こえた。
興味本位でその言い争う声の方に目線を向けた。
そこには出店の店主とリンゴ飴らしき物を片手に持った1人の少女が言い争っている光景が見えた。
どうやら、少女が金も払わずにリンゴ飴を食べてしまったようでそれに対する支払いについて揉めてるようだ。
これはほとんど勝手に店の物を食べた少女が悪い。その少女は桜色の明るい髪にちょっと無邪気な表情が印象的な少女だった。
年は背丈的に俺の妹(14)と同じくらいか?
まったく、親は一体何やってんだよ。
そう思った時だった。
「お兄ちゃ〜ん!」
少女が俺の方を見て、俺に駆け寄って来てそう言ってきたのだ。
「なんだい、兄妹かい。ほらさっさと払いなお兄ちゃん。」
店主も何を勘違いしたのか俺とこの少女の事を兄妹と思って俺に代金を請求してきた。
「い、いや待ってください。俺は……」
「……駄目なの?お兄ちゃん。」
すぐに誤解を解こうと弁明しようとしたが、少女が俺の事を今にも泣きそうな目で見つめてきて、動揺してしまう。
別に俺はこの子の兄では無いが、そんな顔をされると断り辛くなってしまう。
「わかりました。」
俺は渋々、店の店主に商品の代金を支払った。
「あいよ、ありがとよ兄ちゃん。」
「お兄ちゃん!私、今度はあっちのお店のが食べたいな〜」
店主に代金を支払った瞬間、少女はすぐに別の店へと走って行った。
俺は放ってはおけなくて、少女の後へと着いていくのだった。
その後も少女に振り回されて、様々な店を回った。
その度にその少女に店の商品を奢らされまくっていた。
「ありがとね!お兄ちゃん。」
「ったく、いいように奢らせやがって。」
俺たちは一通り市場にある出店を回り終えて人気のないところに来ていた。
「そういう事、あんまりしない方がいいぞ。俺だったからよかったものの。」
「えへへ、ごめんなさい。でも優しいんだねユウト兄ちゃん。」
少女は俺の名前を呼んだ。
「なんで、俺の名前を?」
「マジックフェスティバルに参加してるんだから結構有名だよ?」
それもそうか、たしかに俺は大会参加者だから少しは名前が知れ渡っているのか。
「それより、試合見たよ。すっごい強いんだね。」
少女は俺の試合を見ての嬉しそうに感想を言ってくれた。無邪気そうに笑う顔は本当に幸せそうだ。
「そうか、ありがとうな。」
「そうだ!これからちょっと遊んでよ!」
遊ぶ?遊ぶってどういう事をするのだろうか?どういう内容の遊びとかは気になったが。
「今日はちょっと疲れたな。また今度な。」
今日一日はこの子に振り回されて、多少なりとも疲労が溜まっていた為、やんわりと断った。
「ちぇっ、仕方ないな。じゃあ私はもう帰るね!」
少女は残念そうな顔をして帰宅しようとしていた。
「大丈夫か?親御さんとかは?」
こんな少女1人で出歩かせられないと思い、親はどこにいるのかを質問した。
「大丈夫、じゃあね!今度あったら遊ぼうね。」
少女は俺に手を振りながら、走って見えなくなった。
不思議な子だったな。でも、すこしは楽しかったかな。
◇ ◇ ◇
1人の少女は嬉しそうな表情を浮かべて歩いている。桜髪が特徴的な彼女は1人の青年と楽しい時間を過ごして今はいい気分なのだ。
少女は少し暗めで人気が少ない路地へと入っていった。
「おいおい嬢ちゃん、迷子か?」
「へへっ俺たちが保護してやろうか?」
「おいで、お嬢ちゃん。」
すると路地からは薄汚い男性が3人も出てきて少女の前を塞いだ。
「ねぇ……おじさん達、私今……すっごくいい気分だったんだけど。」
無邪気そうな少女の雰囲気が一気に変わる。まるで相手を敵として認識したように、目付きが鋭く男性達を睨みつけたのだ。
そして少女は服のポケットに手を入れて何かを取り出そうとした時だった。
「「「うわっっ!!」」」
少女の道を塞いでいた男性3人の足元に何か黒くて、穴のようなものが現れて男性3人が落ちていくように消えていった。
「おっほっほっ、ここで騒ぎを起こしてはいけませんよ。フレリアさん」
いつのまにか少女の後方に1人の老人が立っていた。
白髪に目を閉じている黒いコートを羽織ったその老人は少し歩いて少女の真横に止まる。
「みなさん、待っていますよ。」
「はーい。」
少女はその老人の言葉に返事をした次の瞬間には、2人は暗い路地から姿を消していたのだ。
次に2人が現れた場所は何か大きな城の前だった。周りにある木々はどれも枯れておりその事からもこの場所がいかに危険かわかる。
「まったく、この城の場所ってどこなのか未だにわからないんだけど。」
「ふぉっふぉっ、仕方ありませんよ。幹部の中でも私だけしか教えてもらえませんからね。」
2人が話していると城の門が開いた。
門が開いて、現れたのは無数の人だった。
どの人も同じ服を着ており、道を開けるかのように整列をしていた。
そしてその人達は2人に向かって。
『おかえりなさいませ。十戒士のシルド様、同じく十戒士フレリア様。
他の十戒士の方々がお待ちです。』




