【63話目】クラック
俺と同じ位の歳で、俺より強い奴なんて見たことがない。
このマジックフェスティバルだってそうだ。俺より強い奴なんて見当たらない。
俺は小さい頃から天才だと持て囃されて、これまで勝負に勝ってきた。
だからなのだろうか。
そんな生まれ持っての才能を神は気に入らなかったのだろうか、俺は生まれつき体が弱かった。心臓に異常があるみたいだ。
時々発作が起こり、心臓が痛くなってしまう事がある。
だが、体が弱いからなんだというのだ。
体が弱いなら、それなりに鍛えればいい。俺はいつもそうして強くなってきたんだ。
けれど、医者にはその体は限界だと言われた。今回のマジックフェスティバルには無理を言って参加させてもらった。
マジックフェスティバル優勝をもって、俺はしばらく戦いから離れるつもりだった。
マジックフェスティバルに出れば今まで会った事の無いような強い奴と戦えると信じていた。だが現実はそんなに甘くはなかった。
俺がこのマジックフェスティバルで戦ってきた2人は今までと変わらなく弱かった。
正直ガッカリだった。けれども1人だけ、たった1人だけは違った。
人器が変化していたあの男、俺と同じ学園のウィングルを倒したあの男。
あいつならもしくは……
そう考えている間に俺はグラウンドへと足を踏み入れていた。
相手は紫と白の縞々模様の髪をした男。はっきり言ってコイツの戦いを見たが、強くはなさそうだ。
『それではマジックフェスティバル3回戦!第2試合クラック対コンウを始めるニャ!!』
実況の奴がいつのように宣言して、審判が前に出てくる。
「それでは魔性輪の準備を。」
いつもと同じ様に審判が準備を促す。今回は人器だけで充分か。
俺は魔性輪をはめて人器である、刀を手で握った。
相手は棍棒だろうか、それが人器らしい。
「それでは、試合開始!!」
速攻でカタをつけてやる。そう思い足を踏み入れた瞬間だった。
突如として心臓に強い痛みを感じた。
間違いない、これは……発作だ。
こんな時に出るのかよ……
俺は心臓を手で押さえて、相手が様子を伺う。
相手は俺の異変に気づかないようで、戦闘を続ける様子だ。正直これは助かった。
こんな所でこんな終わり方なんてまっぴらごめんだ。
そんな事よりも相手を倒さなければ、途切れ途切れになる息。普段であればこの程度の相手なんてすぐに倒せていた。
けれど、心臓の痛みで相手に集中が出来ない!思った通りに体が動かない!
そしてついに……
「オラァ!!」
その短調で動きが丸わかりな相手の魔法が俺に当たる。
「グッッ……!!」
始めてだった、相手に攻撃を受けた事なんて。魔法自体は大した事はない、大した事はないのだ。
体が動かない間にも攻撃は止まらない。何度も何度も弱い攻撃が俺へと響く。
いくら弱いといっても何度も、そして心臓が痛んでいる時であればダメージは通るのだ。
反撃が出来ないまま、俺は攻撃を喰らい続ける。
これは罰なのか?
俺がこんなに強く生まれた事がそんなに妬ましいのか!?
体が傷だらけになって、次第に体力も無くなってくる。
俺は……ここで……
弱音を吐きそうになる。心臓さえ良ければ、万全の状態なら勝てる相手にここまでされて精神が弱くなってしまう。
なら……この試合で負けるなんて事ないようにな。
心の中で誰かの声が聞こえた。
そうだ俺がここで負けたら、あの男が俺になんて言うかわからない。
そんなの……悔しいだろ!
人器を握りしてる。まだ諦めるな、俺はここで……負ける訳にはいかないんだ!
今までは人器か魔法で充分だった。
だけども、今はその2つを合わせて戦う。
体が痛くても、体が動かなくても関係ない。力を振り絞れ、この一撃を相手にぶつける。
黒い魔力を紺色の鞘ごと刀を包み込む。
深呼吸をして……今!!
刀を抜き、相手にそのまま刀で斬りつけにいく。しかし、体の痛みで刀の太刀筋は遅く相手の棍棒によって防がれてしまう。
刀だけならそれで防ぎ切れるだろう。刀だけならでの話だがな。
刀の太刀筋をなぞる様に黒い魔力が素早く通った。
黒い魔力は相手の棍棒をすり抜けて、そのまま相手の体を斬りつけた。
「グォォォォ!!」
その一撃だけで相手は地面に倒れて戦闘不能へとなった。
あっけない終わりだったが、これで……あの男、ユウトと戦える。
この勝負でアイツは俺に何かを教えてくれるのだろうか、いつもの連中と同じく何にもならないまま負けていくのか。
それはその時にならないとわからないか。




