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やさしい異世界転移   作者: みなと
転移!学園!そして……
28/275

【27話目】学園襲撃

 ルコードの魔法が響き渡り、学園が襲撃された事が学園中に知らされた。


 俺とノルトはその知らせを聞いて、互いに殴ろうと向き合ったまま止まっている。


『2年生と戦える教員は玄関へ向かい、迎撃を行え!1年生及び非戦闘員の教員は入学式を行った講堂へ避難!繰り返す!2年と戦える者は玄関で迎撃!1年と非戦闘員は講堂に避難しろ!!』


 更なる放送がされた。

 その放送を聞いてノルトは拳を下げた。


「なんだよこれ……行くぞ!」


 小声で文句を言いながらノルトは自分と一緒にいた男にそう言って俺に背を向け歩き出した。

 ノルトと一緒にいた男もノルトについて行くように歩き出す。


「ど、どこに行くんだ……?」


 ノルト達の行動を見て、頭が混乱した俺は思わず、ノルトに向かって発言した。

 俺の言葉にノルトが反応して後ろを振り返った。


「放送があっただろ?お前もさっさと講堂へ行け。」


 後ろを振り返ったノルトは俺に講堂へ行くように言った。


「……わかった。」


 戸惑いながらも俺はノルトに返事を返す。

 その言葉を聞いたノルトはこの場を去ろうとしたが、すぐにまた俺の方を振り返った。


「いいか、俺はまだお前の事を許してない。この襲撃か終わったら決着をつけてやる、逃げんじゃねぇぞ。」


 ノルトは俺に向かってそう宣言して、玄関の方へと向かって行った。


 ノルト達がいなくなって、しばらくして俺も歩き出した。

 きっと講堂にデイ達の他にレイナもいるのだろう、そう思って講堂へ向かった。


 講堂へは無事に着いた。

 道中、玄関の方へ向かっていく2年とも数人すれ違ったが、1年とは合流は出来なかった。


 恐らく、教室より俺がいた廊下の方が講堂から遠い為、合流が出来なかったのだろう。


 俺は講堂の扉を開ける。

 講堂の中には既に殆どの1年が着いていたようだ。

 中にいた1年達の多くは入ってきた俺には目もくれずに生徒同士で話し合っている。

 どうやら俺の事よりも学園が襲撃されている事の方が話題になっているようだ。

 当たり前といえば当たり前だが。


 そんな事よりも俺は来ているはずのレイナ達を辺りを見回して探す。

 レイナ達を探して、講堂の奥の方へ行くとデイがいる事に気付いて、デイに近づいた。

 デイはソワソワと辺りを見回して俺には気付いていないようだった。


「デイ!よかった、無事だったんだな。」


 デイに近づいて声を掛ける。

 声をかけられたデイは俺に気付いてこちらを見た。


「ユートも無事……とは言えないな。」


 デイは俺の顔を見て少し驚いたような感じで俺に返事を返した。

 俺の顔はさっきノルトに殴られた為、少し腫れていたようだ。


「俺の事はいいんだよ、それよりレイナはどこにいるか知ってるか?」


 ひとまず、俺の事を置いておいてレイナがどこにいるかをデイに聞いた。


 レイナの事を聞いた瞬間、デイは言葉を詰まらせて喋らなくなる。


「レイナさんならぁまだ来てませぇんよ。」


 いきなり現れ、レイナが来ていない事を言ってきたのは黒髪の男子生徒のパートリーだった。


「レイナが来ていない!?あの放送は聞こえてた筈だろ?なんでまだ……」


 いきなりパートリーが話に割って来たのは気にせず、レイナが来ていないというパートリーの話に驚き、声を上げる。


「あっえっ……多分ですけどね……ルコードせんせぇは魔法を教室付近にいた生徒限定に使ったんだと思いまぁす。」


 パートリーは一瞬、俺の声に驚いたがルコードの魔法についての自分なりの解釈を教えてくれた。

 パートリーは確か学力が高くて試験を突破した生徒、だから他人の魔法に関する理解力も高いのだろう。


 パートリーの解釈が正しいなら、あの時レイナはユインと共に俺より教室から離れている場所まで行っている為、放送は聞こえていなかったって事になる。


 つまりレイナ達はまだ襲撃を受けている場所から避難していないという事だ。


 そう思った瞬間、俺の体は勝手に講堂の扉の方を向き、足を動かして扉の方へ向かおうとしていたが。


「おい、どこへ行く気だ?ユート。」


 その言葉が聞こえた時には体がそれ以上扉に近づけなくなった。

 振り返って原因を確認すると、俺の腕はデイに力強く掴まれていた。

 デイは何故か必死な顔をして、パートリーは心配そうな顔で俺を見ていた。


「どこって、レイナの助けに決まってるじゃないか。その手を離してくれ。」


 この拘束を解くには相当力が必要そうだ。

 俺はレイナを助けに行くと説明して、デイの拘束を解くように頼んだ。


 だが、デイの拘束が緩まる事はなかった。

 デイはさっきの必死そうな顔から険しい顔になって俺を見ている。


「お前昨日から無茶しすぎだ、少しは自分の体を大切にしろよ。」


 デイは力強い言い方で話す。


 自分の体?


 別に体は大丈夫だし、デイが心配する事ではない。

 デイは一体俺に何を言いたいのか?


「全然平気だよ、それよりレイナの事が心配だ早く行かないと……」


 俺は大丈夫だとデイに言い、レイナを探しに行こうとする。

 けれどもデイが手を離す様子はなかった。


「おいそろそろ手を離してくれ、早く……早く行かない……」


 デイに手を離してくれる様に言おうとした瞬間だった。

 俺の顔面にデイの拳が直撃した。


「てめぇ……いい加減にしろよ!!」


 デイは俺の顔面を殴りつけてそう叫んだ。

 殴りつけられ、地面に倒れ込んだ俺はデイを睨みつける。


「お前はそうやってまた、自分だけを犠牲にすれば解決するって考えてるだろ。

 お前が傷ついて悲しむ奴の事も少しは考えてくれよ!!」


 地面に倒れ込んでいる俺に向かって、デイはそう叫んで訴えかける。


 デイの言っている事は至極真っ当である。

 昨日のレイナの魔力暴走事件が解決された後保健室に運ばれたユウトをデイは見ていた。


 ユウトの体は見るに耐えない程酷い状態だった。

 ユウトは問題ないと思ってはいるが、それはチユの魔法で回復してもらったからだ。

 そのユウトの姿を見て、デイはあの時ユウトだけに吹雪の中へまで行かせた事を後悔していた。


 だからこそ、デイはユウトにこれ以上無理して欲しくはなかったのだ。


 そんな事を知らない優斗は立ち上がりレイナを助けに行こうとしている。

 講堂中は襲撃の事で周りの人達は様々な事を話していて騒がしいのだが、ユウトとデイの2人の周りだけは別空間の様に静かで険悪な空気が流れる。

 だが、そこに……


「なに喧嘩してるんですか貴方達!」


 ユウトとデイの膠着状態は一言で終わりを告げた。

 いつの間にか俺とデイの間にヴァーリンが挟まって立っていたのだ。


「まったく、こんな時に喧嘩なんて馬鹿なんじゃないですか?」


 呆れた顔でヴァーリンは俺達2人を見ながらそう言った。

 ヴァーリンの介入によりユウトとデイの間にあった険悪な空気が解消された。


「ひとまず話は聞いてましたが……とりあえずユウト!!」


 ヴァーリンは少しため息を吐き、指を俺にビシッと指した。

 いきなり目の前に指を突きつけられて少し体をビクッと反応させる。


「レイナの事なら心配いらないですよ。

 今襲撃者達は先輩方が玄関で迎撃して、学園内には入って来てはいないはずです。

 それにもし、レイナ達が玄関付近にいたとしても先輩方がきっと保護してくださってるはずです。

 だから貴方がわざわざ行かなくとも、大丈夫だと思いますよ。」


 ヴァーリンは俺をなだめる様に話す。

 ヴァーリンの言葉は優しく、荒ぶっていた気持ちが少し落ち着いた。


「そ、そうだよな。レイナ達は大丈夫だよな。」


 ヴァーリンの言葉を聞いて落ち着きを取り戻した俺は自分を安心させる様に言い聞かせる。


「そ、そうでぇすよ!」


 俺とデイの争いを少し遠くで見ていただけのパートリーがもう安全だと思ったのか、俺達へ再び近づいて明るく言った。


「そぉんな先輩達が襲撃者を通すわ……」


『……急!!緊……!!こち……被が……ん大!!……してこの襲撃の主犯……男1人が校内へ……行った!!講堂にいる者はいつでも逃げれる様に……準備をしておけ!!』


 パートリーの言葉を遮る様に放送が流れた。

 途切れ途切れで放送の全貌は明らかでなかったが、それでも何が起こったか理解するのには十分だった。


 襲撃者の1人が校内へ侵入した。

 それに、先輩やルコード達は今も必死に戦っている事、そして。

 レイナが危険だという事だ。


 講堂内では放送を聞いた生徒達が慌てふためき、混乱した状況になる。

 そんな中俺は再び扉へと向かう。


「待てよ、ユウト。」


 デイに後ろから呼び止められる。

 恐らくまたデイは俺の事を静止しようとしているのだろう。

 俺は後ろを振り返り、デイの言う事を否定しようとする。


「流石にこの状況、止める気はねえ。だけど俺も連れてけ、1人より2人の方がマジだろ?」


 意外にもデイは俺を止めるどころか一緒に連れて行けと言ってきたのだ。

 確かにデイは俺より強い、いたら物凄く頼りになるだろう。

 だが……


「いや、俺1人で行く。デイはここで待っていてくれ。」


 俺はデイの提案を断ったのだ。


「……はっ?待てユウト、俺はお前よりは強い。俺を連れて行って困る事はないだろ?」


 デイは驚いたように声を上げる。

 またさっきと同じ空気が流れる。


「お前にもしもの事があったら嫌なんだ。」


 ただ一言デイを連れて行かない理由を話す。

 単純に俺はデイが傷ついて欲しくない、というそれだけの理由だった。


「じゃあお前はどうなってもいいってのか?お前にも、もしもの事があったらどうするってんだよ!!」


 デイは俺の言葉に対して怒りを表し怒鳴った。

 俺はそんなデイに近づきそして……


 ゴッッ


 俺の拳がデイの腹部に直撃した。

 腹部を殴られてデイはその場に倒れ込んだ。


「ガハッ……ユウト……おまえ。」


 痛む腹を抱えながらデイは俺を見上げていた。


「ごめんデイ、でも俺にはもう人を助ける事しかないんだ。」


 そう言い残して、俺は扉へと走る。

 まだ混乱している生徒達とすれ違い、扉を開けてそのまま講堂外へと飛び出した。


 後ろからデイやヴァーリン、パートリーの俺を止める声があったが、それも途中で消えていった。

 恐らく誰かに引き留められたのだろう。


 後ろを一切振り返る事なく、優斗は玄関方面へ全力で駆けていった。

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