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やさしい異世界転移   作者: みなと
転移!学園!そして……
27/262

【26話目】はじまり

 翌日、俺は普通に学園へ登校して教室に入った。


 教室に入った瞬間、教室にいる生徒達の目線が俺に浴びせられる。

 その目線の多くに俺に対する敵意があるのを俺は感じた。

 そして生徒達は俺から目を逸らして、チラチラと俺を見ながらコソコソと話を始めた。


「おい、きたぜ。」


「よく平気な顔してこれたな。」


 そんな声が聞こえた。

 その声は嫌な感情を感じた。

 何を話しているのだろうか?

 そう思いながら俺は教室を見てレイナがいるか見た。


 昨日チユさんが治してくれたと言っても、あんな事があったから無事に学園に来れたか不安になったからだ。


 しかし教室にはレイナの姿はなかった。

 やっぱり昨日の事が原因だろうか。


 そんな事を考えていると、教室にいたデイが俺の方へと近づいて来た。


「ちょっといいか。」


 デイは俺の耳元で小声で言い教室を出て廊下の方に来い、そう伝えるような仕草をした。

 俺はデイに付いて行って誰もいない廊下まで行った。


 デイは俺の方を見る。

 デイは怖い顔をして俺の方を見る。


「ユート、大丈夫か?」


 とデイは心配するように聞いてきた。

 昨日の出来事による、体の負傷の事かな?


「体の方はこの通り、大丈夫だぜ。」


 そう言って俺は体を軽やかに動かして、大丈夫と言葉と体を通して伝える。


「いや、そっちじゃないんだ……。」


 デイは暗く俺の言葉を否定する。

 体の方じゃない?

 じゃあデイは何について心配しているのだろうか?


「ユート……ちょっと面倒な事になった。」


 デイはそう言った。

 面倒な事……?

 何の事だろうか、と俺は不思議に思う。

 いや、実はうっすらと何の事だか察しはついているのだ。

 ただ、俺はその事を自覚したくはなかったのだ。


 デイはその事を話すのが気まずいのか、目が泳いで、少しの間口を開けずに黙って、廊下には静かな時間が流れる。


「まったく、いつまでそうしているつもりですの!?はやく話しなさいよ!!」


 その静かな時間を終わらせるような声が廊下に響いた。

 俺とデイはその声の方を向いた。


 廊下の向こう側から赤い髪をなびかせながら俺達に向かって歩いて来ている人物、ヴァーリンがそこにはいたのだ。


「ヴァーリン!?どうしてここに!?」


 意外な人物で驚きの声を出した。

 俺の驚いた顔を見て、ヴァーリンは少し勝ち誇ったような顔をする。

 一体何しに来たんだ?

 さっきのヴァーリンの言葉を聞くに、どうやらデイの事と関係あるみたいだ。


「貴方がそうやって離さないのなら、私が代わりに話して差し上げましょうか?」


 ヴァーリンはデイを煽るように言った。


「待て、俺が言う。だからお前は少し黙ってろ。」


 デイは、さっきのヴァーリンの言葉にムカついたのか少し荒めの言葉をヴァーリンに返した。


 するとヴァーリンは特に反論せずに、デイに話してみろと言わんばかりの顔をして少し後ろへと下がる。


 そしてデイは俺の方を向く。

 どうやらさっき言おうとしていた事を言うようだ。

 俺は話を聞く為デイの方を向いた。


「実は昨日のレイナの魔力暴走の一件、全部お前の仕業って事で学園中に伝わっている。」


 どういう事だ?

 昨日の件が全部俺のせいってなっているのか?

 何故だ?

 デイの言葉に脳内に様々な考えが浮かんで理解が追いつかなかった。


「……どうしてそんな事に?」


 訳がわからずデイに事情を聞く。

 デイは少し口を閉じて俯いたが、すぐに顔を上げる。


「ユインだ。」


 デイは一言、俺に言う。

 その一言で脳内に浮かんでいた考えが纏まっていくのがわかった。


「あぁ、そうかそういう事か。」


 俺はそう呟くように言った。


 朝から感じていた、敵意や嫌な感情についての疑問が全て理解した。


 簡単な話だ。

 ユインが俺に顔面を殴られた腹いせにこの一件の元凶を俺に仕立て上げたのだ。


 俺に殴られた事自体は事実なのと、俺は倒れていて弁解する時間がないのが合わさって、この話が学園中に伝わっていったのだろう。


 デイはその後、事情を説明してくれたが、内容は大体俺の考え通りだった。


 デイはレイナの魔力暴走がいた時、一緒にいたからその話は信じずに、逆に他の生徒達の誤解を解こうとしていてくれていたようだ。


 デイはわかるにしても、何故ヴァーリンまでここにいるのだろうか?


「ところで、ヴァーリンはなんでここに?」


 デイの話を聞き終わって、横で少し暇そうにしているヴァーリンにそう尋ねた。


 いきなり話しかけられて、少し驚いたように反応したが、すぐに落ち着きを取り戻して俺の方を向いた。


「まったく……私は貴方が無実だって思っているからここにいますのに、その言葉は少しショックですわよ。」


 少し不服そうな声でヴァーリンは話した。

 確かに俺の事を信じてここにいてくれるのに、少し軽めに尋ねた俺の言い方が悪いのだが。

 とにかく、ヴァーリンは俺がこの一件に関して悪くはないと思ってくれているようだ。


「ヴァーリンは、俺の事を信じているのか……?」


 俺はそうヴァーリンに聞く。

 するとヴァーリンは呆れたように溜息を吐いて口を開く。


「試験の日にレイナの為にわざわざ私と戦った貴方がそんな事をする筈がないですから。」


 ヴァーリンは試験の時の事を覚えていての考えのようだ。

 なんだかんだいってヴァーリンは俺の事を信用してくれているんだなと思い、少し心が暖かくなる。

 まぁ殴ったのはほんとなんだがな。


「そうかありがとうな、ヴァーリン。それと……レイナは今日は来てないのか……。」


 俺はヴァーリンに感謝の言葉を述べると同時にレイナの事について聞いた。


 さっきレイナが教室にいなかったのが気がかりだった。

 やっぱり昨日、あんな事があったから今日、来れていないのだろうかと心配だったのだ。


「確か……ユインと一緒に何処かへ行くのは見ましたけど、何処へ行ったかはわかりませんわ。」


 ユインと一緒に……?

 ヴァーリンのその言葉に不安を感じる。

 何処へ行ったかはわからないが、あの2人だけだなんて不安を感じない方がおかしい。

 はやく、レイナを探さないと……。


「おい、ユウト。」


 レイナを探さないと……そう思った瞬間、声を掛けられた。

 俺達はその声の方を振り返った。

 俺に声を掛けてきたのはノルトだった。


 ノルトともう1人の男と共に立っていた。


「ユウト、話がある。来い。」


 ノルトは冷たい声で俺に言う。

 既にどういう話かなんて、想像はつく。


「おい、先輩。いきなりなんだよ。」


 デイは俺達の前に出て、ノルトに威嚇するように言う。


「お前には用はない。ユウト、来い。」


 ノルトはデイを一瞬見ては俺の方を再び見ながら言う。

 どうやらノルトは俺だけをご指名のようだ。


「……わかった。」


 俺は静かにノルトの方を見ながら返事を返す。

 多分、ノルトの要件は俺だけが実際に悪い案件だ。

 なら行くのは俺だけで十分だろう。


「おい、ユウト。」


 デイは俺が行くのを止めようとする。

 彼は善意で俺の事を思ってくれているのだろう。

 本当にいい人なんだな、デイは。


 でも、これに関しては……。


「これは俺の問題だ。俺1人で行くよ。デイ達はレイナの方を頼む。」


 俺はデイにそう言って、ノルト達について行った。


 鈍い音が廊下に響いた。


「ぐっ……」


 俺はノルトに顔面を殴られて、床に倒れていた。


「お前、自分が何したかわかっているのか?」


 ノルトは怖い顔で俺を見下しながら、床に倒れている俺に近づいてくる。

 俺は殴られた場所を手で押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。


「あぁ、わかってますよ。」


 立ち上がった俺はノルトを睨みながら、そう返す。


「お前……よくもユインを……それによく自分の友達を刺して、酷い目に合わせられたな。このクズめ!!」


 ノルトは震えながら、俺に罵倒を浴びせる。

 どうやらユインの事の他にユインの流したデマを、信じているみたいだ。


「おい、ノルトそこまでにしておけよ。」


 ノルトの近くにいる男はノルトを止めようと声をかけた。


「うるせぇ!ユインや自分の友達を酷い目に合わせるような奴は許せねぇんだよ!」


 ノルトは抑制の言葉を振り切って、俺に拳を振り上げて再び俺を殴ろうとする。


 あぁ、この人は自分の彼女やレイナの事でこんなにも必死に怒れる良い人なんだろう。


 でも……


 俺は寸前まできたノルトの拳を躱し、ノルトの顔面を殴った。


「ぐおっ!?」


 殴られたノルトは、後ろに下がった。


「てめぇ……何しやがる!!」


 ノルトは俺を睨み付けながら大声で叫ぶ。


「確かに、俺はユインを殴りました。あの時冷静な判断が出来ずに殴ったのは俺も反省してます。だから俺は貴方に殴られても仕方がないです。」


 俺は睨み付けているノルトを見ながら落ち着いた声で言う。


「ですが、俺が殴ったのは一回だけ。その分はさっき受けました。なのでこれ以上、俺が殴られるのは納得が出来ません。それでも貴方が続けるのであれば俺は正当防衛を行使するだけです。」


 俺は戦闘の構えをしてノルトに忠告する。

 ユインの件については今思うと俺がやり過ぎなところもあった、だからノルトの拳を一発は受けた。


 だが、二回目となれば話は別だ。

 やった分の何倍も無駄に喰らうのは流石に嫌だ。


「……おもしれぇ、じゃあお望み通りボコボコにしてやる!」


 ノルトもそう言いながら、構える。

 どうやらやる気らしい。


 俺とノルトは互いに見合って、攻撃する機会を伺い、そして同時に相手目掛けて殴ろうとした時だった……


『緊急事態!緊急事態!』


 学園中に大音量の放送が鳴り響く。

 俺はその放送に気がいって動きを止めた。

 ノルトも俺と同じように動きを止めていた。

 これは……ルコードの魔法?


 緊急事態?

 一体、何が起こったんだ?


 その疑問はその後の放送で明かされる事になった。


『武装集団がこの学園に侵入した!これは訓練ではない!繰り返す!武装集団がこの学園に侵入した!これは訓練ではない!』


 学園が武装集団に襲撃されたのだ。


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