【240話目】 合技
「……とりあえず今日はここまでだな」
ディハンジョンに行く前、パゼーレでの俺達の隊は連携の練習をしていた……
どんな陣形でどんな時に誰が動くかなどをあらかたシミュレートしてそれに対応出来るようにしていた。
そんな中でも合技……
2人以上の魔法使いが互いに魔力を合わせて強力な魔法にする技法……
デイもレイナもヴァーリンも攻撃系の魔法じゃないパートリーでさえもとりあえず誰かとは合技が出せていた。
隊の中で俺だけがみんなとの合技に失敗していたのだ……
「そんなに落ち込むなよ!」
「そうだよ!ユートは合技なんて使えなくても強いんだから!!」
みんながみんな俺の事をフォローしてくれている、わかってる俺がみんなとは違う異世界人だから……俺は人と何か合わせるのが苦手だから……
だから俺はみんなと合わせることが出来なかったんだ……
この喪失感はいつか埋められるのだろうか……
「フレリア!!」
場面は戻る、ディハンジョン深層の王城内でのブェイオンの結界魔法を破ったがその最後の抵抗が如く攻撃がフレリアへと集中し直撃して血飛沫が上がる。
振り返り叫ぶがそのすぐにブェイオンが俺へ攻め立て彼女の心配をしている場合ではなくなる。
今すぐにでも彼女の元に駆け寄りたいというのに……!!
ガキンッ!ガキンッ!!
と剣同時がぶつかりあう、ブェイオンの怒涛の攻めに神眼を通し攻撃を先読みしてはその対応をすぐに迫られ油断のない戦いが継続される。
残り魔力が少ない……まともな攻撃は次で最後……ここで決めなきゃ、もう後はない!!
バックステップでブェイオンから距離を離す、最後の攻撃のため最大限助走をつけるため。
剣を強く握りしめ鋒をブェイオンへと向ける。
そして俺は深く深呼吸をする。
ここで俺が決めきれなかったらどうなる?俺だけじゃない、フレリアもそして上にいるみんなも危険に晒す。
それだけは何としてでもさせてはいけない!
後のことは考えるな……今俺が出来る最大をヤツにぶつける!!
地面が沈むほどに踏み込み加速する──
俺の歩1つ1つに巨大生物が通ったように足跡で深く地面をめり込ませる。
「くるかっ!!」
待ち構えるブェイオン、受け止める気だ……俺の攻撃を。
それでも止まらない!この一撃に渾身の力を込めて今、刺し穿つ!!
剣とブェイオン腹部の外殻が衝突する。
激しく火花を散らしながらブェイオンは踏ん張りを効かせ動かない、剣が刺さらない。
それでも諦めるなっ!!
このまま押し通す!!
貫け……貫けっ!
硬い、今の俺の魔力じゃ届かない!!
くそッ!くそッ!くそッ!!
魔力が段々と尽きてく……まずいブェイオンが段々と押すように前へと進もうとする。
「諦めろよ!俺の勝ちだ!!」
「くそッ!ここで終わり……かよ」
絶望しそうになりながら力を緩めようとしたその瞬間だった。
「──まだ!私がいるっ!!」
背後からの声と共にブェイオンの体にもう1本、剣が穿たれた。
そして俺はすぐ横から桜色の可愛らしい色の髪が見える。
フレリアだ。
体から血を流しながらも彼女は俺と並びブェイオンへ共に剣を穿とうとしていた。
「フレリア……傷は……?」
「私なら大丈夫!だから今は……」
彼女のその姿を見て彼女も限界が近いのを感じた、さっきの傷による肉体的ダメージ。
そして2度の結界魔法使用による激しい魔力消費……おそらく彼女もこれが最後の攻撃となるだろう。
なら俺もフレリアも限界同士のコンビとしてこの一撃に全ての魔力を込める!!
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」
その想いは重なり合い、2人の魔力は合わさり絡み合う。
「ぐぉぉぉぉぉ!!」
そして2つの魔力は1つの巨大な豪炎と化しブェイオンの外殻を貫き体の内部にまで到達しヤツに焦りが見え始める。
今まさに、ユウトができなかった……
「「──合技!!」」
合技の使用である。
「──業火滅尽!」「フルブレイカーハリケーン!!」
2人の合技がブェイオンに炸裂する。
灰燼全てを焼き尽くさん炎に焼かれこの世全てを斬り刻まんとする風がブェイオンに反撃の隙すら与えずに内と外で斬られ焼かれていく。
合技による絶大な威力の魔法にブェイオンの再生能力は追いつく気配すら見えない。
「ふざけ……れが、こんな……ころで!!」
途切れど切れに叫ぶも声はかき消され体は斬られた隙に焼かれて灰と化す。
2度と再生する事を迎えない体に別れすら俺達への呪いの言葉すら激しき炎と斬撃の音にかき消されそしてブェイオンはゆっくりと灰となってそのまま散る。
厄災であったブェイオンに勝利を収めたのだ。




