【228話目】 デイVS深層の魔獣
イカズチを纏いし少年が光と成って下層の地を駆ける。
その光は今まさに深層の魔獣へと向かっていく、その速度に魔獣は対応させる事なくイカズチが魔獣へ衝突後にそのまま貫き魔獣との距離が離れた。
「大丈夫か?パートリー」
駆け抜けたイカズチであるデイの手には先ほどまで魔獣に囚われていたパートリーが掴まれていた。
「う、うん……でも……」
パートリーの表情は暗い……みんなの足を引っ張らないようにしていたのに結局自分は誰かに助けてもらうんだ……とそんな自分の中の無力感に晒されている。
「いや、戦闘初心者が深層の魔獣相手にここまで粘れない……お前はしっかり頑張ってるよ。
まぁ?俺の教え方が良かったかもだしな」
顔を俯かせているパートリーにデイは少し砕けたような喋り方でパートリーに労いの言葉を話す。
「だから……ここから出た後も教えたい事あるからよ……まだ諦めるなパートリーは歩き始めたばかりだろ!」
絶望しているパートリーに強い感情で訴えてかける、彼の顔を背に向けて見ないまま……
「ひとまずは俺の背中を見ていてくれ」
そしてパートリーに自分の戦い様を見せるように彼の道が進みやすくなるようにと!
人器を強く握る、全身雷に撃たれたようにビリビリと震え上がる。
雷は俺の体の一部みたいなもの……だからこそ俺は雷と同化したように雷速で駆け抜ける。
「速いっ……!」
パートリーの視線から俺が消えてその反応をした頃にはすでに深層の魔獣の元に辿り着いていた。
デイ・マックラーゲンが魔獣の元へ駆け抜ける、魔獣は反応出来ないまま人器は断罪のごとく振り落とされれる。
魔獣の右腕が宙に舞う、種を射出してくる面倒な箇所である。
「さてとまずは右腕か」
地面に落ち転がる魔獣の腕をデイは足で踏み潰しながら魔獣を睨みつける。
「まだまだだ……俺だって至らないところがたくさんある……だけど俺は今のコイツに勝てる」
深層の魔獣に人器を向けて宣言する、そりゃアーデンが話してくれた情報的には昨日の中層の魔獣達を取り込んで強くなりまくった魔獣よりはこの魔獣は強くはない……はず。
それでも深層の魔獣相手に彼はそう豪語したのだ。
そうして再開される戦闘、デイの動きに翻弄されながらも残された左腕から繰り出すツタによる攻撃は動きが速くなっていくデイを次第に捉えつつあった……
けれどそれも遅い、ツタが完全にデイを捉えるその前に魔獣の左腕が宙を舞ったからだ。
現在の魔獣は両手もとい攻撃手段を失った木偶の坊……そんな魔獣を見てもデイは油断や慢心は生まれなかった。
跳ぶ、地面を蹴り上げて魔獣よりも高くそして人器に魔力を込めバチバチと周囲に電撃を撒き散らしていく。
「終わりだっ!!」
振り下ろされたデイの人器は雷が落ちたように激しく音と衝撃をこの地に走らせ魔獣の脳天を打ち砕いたのだった。
「痛めつけられたパートリーの分込みだ」
デイは真っ二つになった魔獣を見下しながら告げていたのだった。
「……デイ」
ほとんど魔獣を圧倒していたデイを見て僕は心が……踊っていた。
あの強さに憧れを抱いた。
「さぁ戻ろう、みんなの元へ」
そう言いながら伸ばしてきたデイの手を僕は掴んだ。




