【217話目】 守り繋ぐ
サブルンの高魔力に気を取られ鎧騎士を含むその場の全員が彼の存在を忘れていた。
パゼーレ騎士団、中隊長ゼンの弟デイ。
ユウトが所属する隊の隊長を務めている彼だって只者ではなく強者なのだ。
彼は両手を前に突き出し指で円を作りそこに稲光く魔力を集め鎧騎士へと向けていた。
彼はサブルンが戦闘に入ろうとしたその時に声をかけられていた。
「デイさん、お願いがあります。多分僕だけじゃあれは倒せない……なので僕がやられた後の事は……皆さんで任せます」
彼はそう真っ直ぐデイを向きながら言って鎧騎士との戦闘を始めたのだ。
あまりにもなキャラ変と想像以上の強さへの驚きと多少の嫉妬で集中力を欠きそうになるも必死に魔法の準備へ行う。
そしてサブルンが鎧騎士の拳により叩きつけられた時には後少しでこの魔法を撃てる!というところまできた。
そしてそのタイミングでサブルンへ向けられていた意識が今この空間で1番魔力を蓄えてる俺へと向けられたのだ。
『優先排除脅威を確認 直ちに排除する』
デイの魔力を確認した瞬間、鎧騎士は後ろいっぱいに下がり弓を構えデイの放とうとする魔法への対抗とする。
「まずいっ!」
鎧騎士が矢を放つ。
それは1発だけじゃない……もう1発、少し遅れさせながら放った。
ゲンが魔法を発動してデイ達を守ろうとするも、矢の速度が速く先ほどと同様の鎧騎士と矢を入れ替えての自爆は距離が離れた影響でゲンの魔法範囲外であった。
ならば……とゲンの姿がその場から消え、デイ達の目の前に現れる。
自分を対象とした場合の魔法範囲は広がる、そういう特性の元、ゲンはデイ達の前……そして向かってくる矢の前に姿を現したのだ。
「1発は拙者がなんとかするでござる!だからもう1発はそなたらに頼む!!」
跳ぶ、彼はそうとだけしか言わなかった。
そのまま先に向かってくる矢へと接近し腰の携えた刀を強く握りしめ……
矢の間際にきた瞬間、鞘から刀が顔を出す。
居
両
合
断
い
一
閃
ゲンの一刀は見事と言うしかないほど美しく反射なのかそれほどまでの魔力を込めているのかはわからない……けれど矢を両断したかたなは光輝き矢を消滅させた。
しかし矢が消滅する際に強い衝撃波が放たれゲンはそのまま飛ばされ戦線から離されもうこの戦いには戻っては来れない。
ゲンの刀に感心している場合じゃない、問題はまだ残っている、残ったあと1本の矢……あれをどうにか防がなければ……
「任せてっ!」
「私達がここを護る!!」
そんな時前に出てきたのはレイナとヴァーリンの2人だった。
レイナは自身の人器である氷の結晶の盾を地面に突き立てるように置き魔力で防御範囲を広げる。
「ヴァーリン!!」
「言われなくとも!」
レイナの言葉にヴァーリンはすぐ自身の水の魔力をその防御範囲内に纏わせて更に防御を強化する。
どうやら2人はこれで耐え切ると言う作戦だ、危険だが……この一瞬のバディズ代替案が思いつくわけがなく、矢が到来する。
そして矢が2人の防御に直撃し強い衝撃が俺達を襲う。
「ぐっ……」
「なんとか……耐えるのですよ!!」
はやく、はやく魔力よ溜まれ……このままじゃみんなが危険な目に遭う!
あともう少し、あともう少しなんだ!!
「く、くぅぅ!!」
「まず、まずいですわ……」
2人の防御が押され始める。
このままじゃ……
「まだ、まだオレがいる!!」
2人の防御魔法の周りに岩が現れる。
その岩は2人の防御魔法を強化するようにガッチリとくっ付き防御魔法が強化される。
ここで力を貸してくれたのは……
「いけ!勝って!!」
ダイヤだった。
彼はゲンの一閃、そしてレイナ達が矢に耐えている間に近くまで来て魔法で援護を始めたのだ。
三位一体の防御魔法と矢がぶつかり合い、そして……防御魔法が矢の衝撃で耐えきれずに崩壊して3人がその反動で吹っ飛ばされる。
けれど……3人の防御魔法の破壊に力を使いすぎた矢も消滅する。
それと同時に……準備完了だ。
「ありがとうみんな、チャージ完了」




