【213話目】 吹き燃える
四大守護騎士兵との戦闘は激化する。
フレリアと共に攻撃を仕掛けては防がれ、鎧騎士からの攻撃は回避しながら奴の攻撃によって破壊される街中を移動して場所を変えていく。
そして着いたのは水路、下には大きな川くらいの強い流れで水が流れており対岸側は崩れて渡れなくなっている。
つまり俺達は追い込まれたというわけだ、ここで決着をつけなければいけない。
周りに建物はなく、なんの障害物のない少し広いだけの平地。
鎧騎士はジリジリと距離を詰め、攻撃の隙を窺っている。
ならばと、攻撃する機会を作ってやるとでも言うように俺は飛び出して行った。
当然鎧騎士も俺が突っ込んできた事に対処しようと斧を真っ直ぐ俺目掛けて振り下ろす。
そんな斧をジン器の刀で受け止め鍔迫り合いへと発展する。
『!!』
力の押し合いでは鎧騎士が強い……だけど魔力を刀と脚に込めて鎧騎士の斧と拮抗する。
「今だっ!!」
俺はそう声を上げるとフレリアが炎を鎧騎士へと放ち怯ませる。
攻撃の手が緩んだことで俺との拮抗が出来なくなりこっちにも攻撃のチャンスが生まれる。
「くらえっ!!」
その瞬間に風の刃を鎧騎士へと撃ち込む。
確かにダメージは受けた……けれど鎧騎士の体には傷をつけられない。
そのまま俺とフレリアで魔法を叩き込むがそれも少しの時間稼ぎにしかならない。
『効かぬ』
鎧騎士は体制を整えて再びこちらへ斧を振ろうとする。
『攻撃方法を変更する』
そして俺の白金の眼が斧がいつも以上に魔力を溜めている変化を察知していた。
「跳べっ!!」
俺がそう叫び2人して高く飛んだ瞬間、鎧騎士は斧を薙ぎ払うように振りそんな斧から魔力の刃が飛ばされた。
斧+魔法による混合攻撃……あのまま後ろへ避けようとしていたら体が斬られていたかもしれない。
だが空中に浮かんでいる俺達を鎧騎士が見逃すはずもない。
斧で振り切った後、鎧騎士が俺へと拳を振るう魔力強化により威力、素早さが強くなった拳はそのまま俺を打ち抜き、地面へと叩きつける。
「やるねっ!!じゃぁ!!これは!どう!?」
フレリアは殴り飛ばされた俺を少し気にした後、炎の剣を振りかざして鎧騎士へと振り下ろす。
彼女の濃い魔力が込められたその一撃は鎧騎士の頭部を叩きつけるように振り下ろされ鎧騎士の頭部を深く凹ませる。
「うわっ!すっごいへこむ」
『見事である』
思っていた以上に凹んだ鎧騎士の兜に気を取られフレリアは兜の間から覗く赤い眼のような光から魔力が放たれていることに気付くのに遅れる。
「ギャッッ!!」
ビームのように放たれた魔力はフレリアに直撃し彼女はそのまま動かなくなって落ちていく。
たった一撃でフレリアに大ダメージを与えた……それほどの攻撃。
『終わりだ』
しかし鎧騎士の攻撃はそれだけでは終わらない、落ちていくフレリアに斧を振り下ろしてトドメを刺しにいく。
「ッッ!!」
すぐに俺は地面を蹴り飛ばして斧が直撃する寸前に彼女の元へ跳ぶ。
フレリアのキャッチに成功するが斧は俺達に振り下ろされた。
地面に落ち血を流す、左肩に深い傷跡が俺に刻まれたがそれ以外は無事だ。
俺もフレリアも。
「よかった……」
「……ん?お兄……ちゃん?」
地面に着地して少ししてフレリア目を覚ます、ただ気を失っていただけだったらしい。
「……大丈夫、任せろ」
フレリアにそう言い残して俺は鎧騎士と対面する、左腕がまともに動かない……それならいっそ……
鎧騎士へと突き進む、相変わらず斧は俺へと振り下ろされる。
そして俺は振り下ろされる斧に合わせるように構える。
居合い、左手を鞘に見立てて右手で強く刀を握りそして下される斧を迎撃するために振り抜く。
『な──に、?』
刃が鞘の役割を果たしている左手を斬るがそれは織り込み済みだ。
代償制約
体の一部を代償に魔力を高める技術。
手を斬るかもしれないという代償、そして俺自身の血を代償にした。
恩恵は薄いがそれでもたった一瞬に力を込めて斧を振り弾く。
鎧騎士はその反動で仰け反り、隙が生まれそのまま突き進む。
だが鎧騎士にはまだ手がある、魔力による遠距離攻撃、突き進む俺の前に魔力が飛ばされる。
ダメージ覚悟で突っ込む。
「いいなっ私もっ!」
背後で既に動けるようになって立ち上がっているフレリアの声が聞こえる。
彼女は人器で自身の手のひらを切って血を流しその血を人器へとかける。
「燃えろ!フレイムフラッシュ!!」
後ろから炎の斬撃が鎧騎士が放つ魔力へと向かい、鎧騎士の魔力ごと燃やしながら進んでいき鎧騎士へと直撃してその全身を燃やす。
代償制約、彼女の血により強化された魔力は俺達を邪魔する全てを物を燃やし尽くして鎧騎士を打倒するために道を作る。
ありがとうフレリア。
心の中で感謝して再び跳ぶ、狙うはさっきフレリアが強く凹ませた頭部。
『させぬ』
赤い光が兜から見え俺へと魔力を放つ。
「ハァァァァァ!!!!!」
全身を魔力で包み込み大きく叫びながら鎧騎士へと突き進む。
ダメージを軽減させながら、それでも全身に痛みが走りながら俺は鎧騎士へと到達する。
「終わりだぁぁッッッ!!!」
赤い光が見える兜の隙間に刀を突き刺し風の魔力を刃先に込めて鎧騎士を内部から斬り裂く。
『まだ、だ……』
鎧全体に響く魔力、鎧の中に何があろうともその全てを斬るっ!
鎧騎士が今までよりも高い魔力を溜めようが関係ないここで倒し切る。
「お兄ちゃんっ!!」
『見事であった……ゆえにワレは自身の命を持って貴殿らを排除する』
フレリアがそう叫んだ瞬間、鎧騎士は溜めた魔力を自らを巻き込むように放ち自身ごと爆発する。
「がぁっっ……」
鎧騎士の原型は無くなり倒せはした、それでも最後の爆発がトドメとなり俺は抵抗出来ないまま近くの水路へと落ちた。




