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やさしい異世界転移   作者: みなと
ディハンジョン
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【193話目】 そして進み続ける

 俺達はラスフさんが来た場所へと進む。

 この道は先ほど魔獣が通って行った道、いないかもしれないが近くに潜んでいるか警戒しながら進む。


「……ここだ」


 しばらく歩いては分岐してる道をラスフさんが指定した方向に進んだ後少し広がった空間に出てラスフさんが立ち止まり呟く。


 どうやらここが彼の仲間と逸れた場所……

 しかし人の影はなく……あったのは……


「血……それも引きずられている……」


 赤く何かが引きずったかのような模様が地面に書かれていた。

 おそらくこれは誰かの血……しかも触った感じ比較的に新しい血痕、だとするとこの血の持ち主は……


「多分、俺の仲間のだ……」


 この様子を見たラスフは静かにそして震えながら呟く。

 受け入れられないと……希望を諦めたく無いと彼は思い涙を地面へとこぼす。


「それで、これからどうするんですの?」


 そんな時にヴァーリンが切り出す。

 俺達も仲間のパートリーが魔獣の種により命の危険に晒されてる……ここで立ち止まっている暇はない。

 このままラスフに来た道を聞き引き返してパートリーを治療するのが先決……なのだが


「ここからは俺だけで仲間を探す……君たちは戻っているんだ」


「なっ……!!」


 ラスフが俺たちにそう告げる。

 1人であんな魔獣がいるこの中層をうろつくだなんてほとんど自殺に近しい……

 そんな無謀を許していいのか?こんな死にに行くような真似を黙って見過ごせるのか?


 けれどパートリーが危険なのも事実、ラスフについて行けばパートリーの死ぬ可能性だって高い……


 そもそもこれは治せるものなのか?

 誰もが思っている不安、それを口に出す事を俺達はためらっている。


 だからこそ、一旦序層に戻らないという決断を俺達はしない……俺達は。


「わかっ──」


 デイがそう判断を下そうと口を開いた時だった、ヴァーリンに背負われているパートリーの手がデイの袖へと伸びてしっかりと握っていた。


「……パートリー?」

 

 突然のことにデイはパートリーへと疑問の眼差しを向ける、パートリーは喋らない。

 けれど強く真っ直ぐな目がデイを見つめている。


 パートリーが何を訴えているのか……俺は理解出来た、それはデイも同じで……


 デイは黙り、1人葛藤する。

 パートリーの無言の願い、そしてラスフの仲間を思う心……

 あの魔獣の強さ、それと戦闘してのこちらの被害……その2つを天秤にかけどちらかを選ぶのだ。


 俺は口を出さない、それは隊長の判断に任せるからだ。

 彼の葛藤はすぐに終わる。


「あの魔獣を……倒しに行く」


「な、なんで!?」


「パートリーさんはどうするんですか?このまま見殺しにでもするんですか?


 デイの判断に疑問を投げかけたのはレイナとヴァーリンだった。

 それでいてヴァーリンは少し口調が強めに反対する。


「パートリーを助けたいのは俺もそうだ、でもこの状態のパートリーを治せる人が序層に残ってるとは限らない……もしも地上にいてもそこに行くまでパートリーが持つかはわからない。

でももしあの魔獣を倒せば種が枯れるとすれば?」


「あの魔獣を倒してもパートリーさんの種が消えるとは限りません、もしも倒しても治らなかったらどうするつもりですか?」


 自分の意見を語るデイにヴァーリンも疑問をぶつける。

 

「その時は……」


「その時ですよ」


 デイの少し戸惑った言葉に被せるようにパートリーが発言をする。


「パートリー!?」


「みんな……僕を心配してくれてありがとうございます。けれど僕はまだ大丈夫です、だから僕はデイに賛成です」


 デイの意見に賛成するパートリーに驚くレイナをよそにパートリーは話す。


「……ありがとうパートリー。レイナ、ヴァーリン、確かにこれは危険な賭けだと思う。

だけど、助けられるのならその数は多い方がいい。

俺はパートリーもラスフさんの仲間達も助けたい!」


 パートリーに感謝の言葉を述べながらレイナとヴァーリンに自分の意思を改めて伝える。

 どうせ助けられる確率が同じならラスフの仲間を見捨てて戻るより、ここから進んで魔獣を倒してラスフの仲間を助けてそれでいてパートリーも救う。

 まるでハッピーエンドのような結末を彼は望んでいたのだ。

 レイナは何も言えないという風に下がる。


「デイの言い分はわかりました、でもあの魔獣を倒せるんですか?」


 ヴァーリンはデイの意見にやれやれ、と納得する多分ヴァーリンは元々デイの意見には賛成してたんだと思う、それでいてデイの覚悟を確かめみんなに納得させる理由を語らせるための問答だったのだろう。

 そしてそれとは別に魔獣戦について聞く。


 デイは隊長として自身の意見を語りそれを納得させる。

 だから次は……


「俺がいる、アイツは俺が倒す」


 ──俺の番だ。


「いいのか君達、あの魔獣の恐ろしさはもう知っただろ?」


 俺達を心配するようにラスフは話す。

 そんな彼に俺はこう返すのだった。


「隊長命令だ、断れねぇよ。それに……俺はあの魔獣よりも強い相手と戦ってる。

たとえあの魔獣が強くても足掻いて足掻いて最終的には勝ってやるさ!」


 強気に語り俺達はあの魔獣を倒すために、ラスフの仲間を助けるために、パートリーも助けるために再び進み始めた。

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