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やさしい異世界転移   作者: みなと
ディハンジョン
193/242

【192話目】 魔が残したもの

 深層より来た魔獣は逃げ一時の休息の時が訪れた……なんて事はなかった。


「パートリー!!」


 安心の時はレイナの声によって消える。 

 地面に倒れるパートリーを介抱するように座るレイナとヴァーリンの元に駆け寄る。


「これは……」


 そこで俺が見たものは……


「根っこが取れないの……切っても切ってもまたすぐに伸びて……」


 呼吸も乱れ苦しそうに倒れるパートリーと

 そのパートリーに種が直撃したちょうどその位置……そこから細くも長い根が無数に生えてきてた。

 

「俺に任せてくれ」


 その様子を見た俺はすぐに根を切り、種を退かそうとする。

 しかしレイナの言った通りすぐに根が生えてきて種を退かすのを妨害する。


 それだけならよかった。


「多分……元になってる種はパートリーの体の奥に埋め込まれている」


 根を切り落とした直後ですら種を直接確認はできなかった……それどころか撃たれたはずのパートリーの体にそんな穴はなく、とある箇所から根が伸びてきているのだけが見えたのだ。


 これから察するにこの種は撃ち込まれた相手の内部に埋め込みそこから成長していく……そんな感じだ。

 でも何を栄養にしている?血かそれとも……


 ──神眼


 神たる眼でパートリーを見る。


「……やっぱりだ」


 その様子を見て確信する。


「この種はパートリーの魔力を栄養源として成長してる……!」


 少しずつだがそれでも確実にパートリーの魔力が種……根に流れていってるのが神眼を通してよくわかる。


「そんなっ!それじゃあこのままだと……」


「多分魔力を全部この植物に吸い尽くされて……」


 これ以上は言えなかった……

 みんなの表情を見て魔力を吸い尽くされるということがどういう事なのか薄々察してしまったからだ。


「……これからどうする?戻ろうにも来た道は潰されてる。俺達はここを通らなきゃいけない」


 デイはそう言い、あの魔獣が逃げていきツタで塞がれてる通路に目線をやる。

 このまま立ち止まっていてもパートリーに埋められた種をどうにか出来るはずもない、テントに戻り誰か治せる人に頼もうとしても来た道は塞がれ戻れない。


 俺達は危険を承知でツタを退かし進まなければいけなかったのだ。


「そういえばアンタここから来たよな?こっちに行っても上へ戻れるのか?」


 デイは魔獣に襲われていた男性に向かい尋ねる。

 先ほどまでは動けない様子ではあったが今は立ち腕の出血を抑えるように抑えていた。


「あぁ、でもかなり迷った挙句にあの魔獣に襲われてみんな……仲間があの魔獣のことを伝えてくれと託して俺を逃してくれた……

でもたぶん……」


 彼の話す表情が段々と暗く険しくなり俯いていっている。

 この人も仲間がどうなっているのか……心配なんだ。


「そこまでの道は覚えてますか?」


「え、はい……」


「ユート……」


「とりあえず、そこまで行けば序層に戻れるルートがあるかもだろ?このままここで話してる時間はないぞ。どうする、デイ?」


「……わかった、ひとまずはその案で行こう。

ヴァーリン、パートリーを頼めるか?レイナは彼に肩を……」


「いや、俺はもう1人で動けるよ……残念だけど戦闘に参加できるほどではないが。

それと俺はラスフだ、生きて帰ろうな」


 そうして俺達の隊はラスフさんを入れ再度出発しようとする。

 ……とその前に


「デイ、いいか?」


「……なんだ?」


 俺はみんなから少し後ろの方にデイを連れ出す。


「まぁ……さっきの事についてだ。デイが俺のことどう思ってるのか……それはわからない。

だけど……

俺はデイじゃないし、デイも俺じゃない」


「……?何がいいたい?」


「俺はデイよりも強い、それは俺がデイより優れてるところだ」


 俺はキッパリとデイの顔を目を見て告げる、デイは少し不服そうな顔をしたのがわかった。

 だから俺はこう続けた。


「でも、デイだって俺より優れてる……つまり何が言いたいかって言うとだな。

俺はデイに期待してる、デイは俺よりも凄い奴だって信じてるって事」


「……それだけ?」


 デイはわけが分からなさそうな表情を浮かべた、まぁ俺だってどんな伝え方をすればいいのかわからない。

 でも……


「あぁ、それだけだ。それを忘れないでくれ。

……じゃあ進もっか!」


 拳をデイの胸に当てそれだけを話して俺は先にレイナ達の方へ戻っていった。


「期待してる……か」


 デイは優斗の手が当たった箇所に手を置き一言だけ呟いてそのままみんなと合流していき本格的に探索は再開されたのだった。

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