【187話目】 テント地区でのあれこれ
俺とデイはアーデンのテントからパートリーを置いて自分達のテントを探していた。
「あーやべ、どこにあるのかわからねぇな……」
「これ……パートリーとか置いてきて大丈夫だったのか?」
ここのテントはどこに誰が泊まるかなどは決まっておらず空いてる場所に泊まる……そんな感じのシステムらしい。
先にテントを取りに行ったレイナとヴァーリンがどこにいるのか……辺りを見ても見当たらない。
「あっちの方とか探してみよう──」
「ユーウートーッッ!!」
別の場所を探そう、そう提案しようとした俺の腹部に強い衝撃が走った。
「えぇっ……と確か君は……」
腹部に衝突してきた人物を見ながら俺は少しばかり記憶を辿る……その記憶が正しければ。
「ダイヤくんだっけ?」
「はい!はい!!覚えてたんですね!!」
少年は顔を上げてこちらを嬉しそうな表情で見つめてきた。
少し距離を置こうとするもダイヤは俺から離れようとはせず、ずっとくっついている。
「あの……そろそろ離れてもらえると……」
「あっ!そうだよな……ごめん!!」
ダイヤは意外にも聞き分けがよくすぐに俺の体から離れてくれた。
そんな彼は俺に謝罪し終わったあと笑顔を向けてくる。
今日はなんだから謝られること多いな……
「っていうかなんでそんなに俺に対してそんなテンションで接してくるんだよ……?」
「えぇっ!?だって!だって!!俺の同じ歳くらいの人が十戒士を倒した!それだけで尊敬!尊敬!!」
ダイヤは目を輝かせて俺のことを尊敬してると言ってくれる、まぁ俺1人で十戒士を倒したわけではないがそういうことを言われると少しばかり照れるというものだ……
「それとあなたに聞きたい事が──」
「えーっとまず敬語やめない?俺達大体同い年くらいだからさ」
俺はダイヤの俺に対する敬語に違和感を感じていた。
彼は見た感じと先ほどの彼の発言から俺達と同じくらいの歳……そんな人に敬語っていうのは少しばかり気が引ける。
「あっそうか、それならわかった!……これでいいか?」
彼は少しばかり暴走するとかはあるけれどなんだかんだ言って聞き分けのいい子なんだろうとこの少しのやり取りで理解した。
「うん、それでいいよ。ところでさっき言いかけてた事って?」
「…………?あれ?興奮しすぎて忘れた!ごめん!!」
ダイヤは俺からの問いに首を傾げて何かを考え……忘れたと素直に話して謝罪してきた。
「いやまぁ……思い出してからでいいよ」
「ありがとう!ところでなんでユウト達はここに?」
「仲間達がどこのテント取ってるかわからなくて探してるんだ」
「ユウト達の仲間ならさっきあっち!あっちで見かけたぞ?」
ダイヤからの質問にデイが答える、そしてなんとダイヤがレイナ達を見かけたと言ったのだ。
「それ本当か?」
「うん!」
デイからの再度の問いにもちゃんとYESと答える、俺ばかりを盲信しているのかと思いきやちゃんと周りも見てるんだなと素直に感心してしまった。
「じゃあ俺達はひとまずそっち行く、ありがとう!ダイヤ!!」
「いいえ!こちらこそ有意義だった!!」
そうして俺達とダイヤは別れダイヤの指差した方へレイナ達がいる方へと向かっていった。
そして場面は移り変わりディハンジョン外、地上では……
「はぁはぁ……ようやく着いたな」
「無事に帰れてなによりです」
2人の男がディハンジョンから外へと出ていた、1人は片腕を正体不明のヤドカリによって失っていた。
彼等はヤベとヨボ、ユウト達によって命を救われこうして戦線を離脱した男達である。
「そこそこ……いるな」
ヤベは辺りを見て呟く、地上にはヤベ達と同じ戦線離脱した連中がその辺をふらついていたり、地上に待機している奴等に傷の治療等を受けていた。
そんな中2人は歩く、この持ち帰ったヤドカリの甲殻の一部を地上に待機している解析班に渡すために。
「おーい!そこの2人大丈夫か〜!!」
そんな2人を気にかけ手を貸すように男達が近付いてきた。
「大丈夫か?手を貸すぞ?」
「あぁ、ありがとう」
「……ん?その手に持ってるのはなんだ?」
そのうちの1人がヨボの手に握られたヤドカリの甲殻を見て反応する。
「あぁ、コイツは俺の腕を斬り落とした奴だ……とても強く、俺の知る限り序層、中層には存在していない魔獣だ」
「「なっ……?」」
ヤベの発言を聞き辺りがどよめく……
見たことのない強力な魔獣……そんな存在が自分たちがさっきまでいたディハンジョンにいたというのだから……
「それでその魔獣はお前達がヤったのか?」
「この魔獣は……」
1人が魔獣について聞いてくる、ヤベは少しの沈黙の後……
「なんと!あの十戒士を倒したユウトとその仲間達が倒して俺達を助けてくれたんだ!!」
先ほどの沈黙は一体なんだったのか……そう思うほどに高いテンションでヤベは語る。
「そ、そうなのか!?」
「あぁ、そうさ!おら!全員集まれ!!俺が彼等がどんな感じで俺達を助けてくれたか……お前達に語らねばならぬ」
テンションが高いままヤベは腕がないのを忘れたかのように大声で近くにいる奴等を集めてそしていかにして自分達が救われたのかを
語り始めたのだった。