【183話目】 ディハンジョン序層突入
「すっかり出遅れたな……」
5人集合した後食料等の準備に手間取ってしまい俺達は他の人達とは完全に出遅れてしまっていた。
「まぁそこまで急ぐ必要はないだろ」
ディハンジョンへの入り口は開始の声がかけられたテント……その裏側にある階段だった、
幅広く苔が生い茂った下へと続く階段がそこにはあり、どうやら全員ここを通ってディハンジョンへと向かったらしい。
「よし行くぞ!」
デイの声と同時に俺達は階段を降る。
「薄暗いな」
「大丈夫か?足滑らすなよ」
「ユートも気を付けてね」
割とゆっくりめに階段を降りる。
苔のせいで足元がヌルヌルしており気を抜いて転んだらそのまま下へ真っ逆さまだ。
「うわぁっ!!」
そんな時誰かが足を滑らせる声が聞こえる。
その声を聞いた俺はすぐさまその声へと近づきお姫様抱っこのように受け止めた。
その相手は……
「ありがとうございます、ユウト」
パートリーだった。
「まったく……気を付けろよな」
そんな俺とパートリーをレイナはジッと見た後脚元を静かに見る。
「転びたいなら転ばせてあげますわよ」
そんなレイナを見てヴァーリンは嘲笑うように声をかけた。
「なっ!そんなことない」
「あらそうでしたの?てっきり転んで助けられたいのとばかり……」
「そういうあなただって誰かさんにお姫様抱っこしてもらいたいんじゃないの!?」
「なっ!!あなたじゃないんですから!!」
ギャーギャー
2人してケンカするように言い争う、ケンカするほどなんとやら……あの2人仲良いのかな?
「あの……そろそろ降ろしてもらえると〜」
俺の腕に抱かれているパートリーはあんあわしていた。
「そろそろだぞ、気を引き締めろ」
デイは前方を警戒しながら後ろにいる俺達に声をかけ俺達も会話をやめそして階段を降り切った。
階段を降りきった先には広い空間が広がっていた、どうやらディハンジョン内部に到達したようだ。
「ここが……」
「なんか不思議な感じ……」
「意外と明るい?」
中は暗いと思ったが、そんなことはなく視覚は普通に働くくらいには明るい。
ディハンジョンの内装へ洞窟みたいで岩肌に囲まれていて静かで冷たい。
「さて、どこに行くか……」
デイが目の前の光景を見て呟く。
目の前にあるはいくつもの大穴、おそらく他の人達もいずれかの穴に入って行ったのだろう。
そしてらこの選択肢が重要、どこが魔獣が多くて成果を上げられるのかも大事だがディハンジョンは広いという。
広さはだいたい一階層だけでも都市一個分、この掃討任務ではこの下の中層までしか行かないが、都市一個分の広さがさらに下に四階層もあるのだから全部攻略というのはまぁ無理な話だ。
話を戻して、都市一個分の広さなのだから下手な道を選べば最悪遭難の可能性が出てくる。
まだこの階層の魔獣は弱いとは聞くが、迷い続けていると体力が尽きる。
それらを加味して道を選ばなくてはいけない。
アーデンの話ではこの階層にキャンプ地があるそうで休むためにもそこの近くにいきたいものだ。
「う〜ん…………」
悩む、デイはどこに行けばいいのかを悩んでいる。
隊員の命を預かる立場としての責任がデイを襲う、失敗したら自分だけじゃなくて俺達にまで被害がいくことをデイは恐れているのだ。
「迷っているんなら、全員でどこの穴に行くか指さして決めるっていうのはどうですか?」
そんな時、ヴァーリンがデイに助け舟を出すように提案を出す。
「確かに……みんなの意見を聞くってのもありか……それでいいか?」
デイは俺達に確認を取る。
それに対しての俺たちの回答は
「あぁ、それで大丈夫だ!」
「うん!大丈夫だよ!」
「ここにジッとするよりは良いですかね」
とそれぞれで返事を返す。
「ふふんっ!」
提案を出したヴァーリン本人は何やら満足げな表情をする。
「わかった。それじゃあ!せぇの!で指さすぞ!
…………せぇの!!」
デイの呼び声と共に俺達は各々に穴に指を差す。
そしてその穴の位置は……
「…………全員同じ?」
五つの指が真正面の穴を指さしていたのだった。
「「「「「………………」」」」」
「「「「「アッハハハハ!!!」」」」」
顔を見合わせた俺達はその場で盛大に笑う、流石に全員が同じところを指差すなんて誰も予想してない、まさに奇跡みたいなもんだ!
「ふーっ!よしっそれじゃあ行くぞ!!」
落ち着きを取り戻したデイはそう音頭をとり俺達もそれに続き穴へと向かうのだった。
──
俺はさっき十戒士を倒したっていうユウトってガキの事を煽っていたヤベ。
俺はこれで4度目のディハンジョン掃討作戦に参加している……序層や中層はある程度把握していた。
それなのに……それなのに!!
「オイオイオイオイ!なんなんだよ!!?」
魔獣達のいきなりの襲撃に遭い、俺とユボは他の仲間達と逸れてしまった。
それだけでも異例だというのに……
「うわぁっっ!!」
「っ!?大丈夫か!ヨボ!!」
後ろでヨボが転けた、焦りで脚が絡まったか?クソッ!助けに戻れねぇと!!
「ばかっ!俺のことはいいから早く逃げやがれ!!」
カサカサカサカサ
ヨボの更に後方から足音が聞こえる。
そうだ俺達は逃げている、あのバケモノから……
「そんな事言ってられねぇよ!!」
俺は静止するヨボの言葉を聞かずに彼に肩を貸し立ち上がらせようとする。
しかし上手く立ち上がらない……ヨボだけじゃねぇ俺も初めて見た恐怖に脚が震えてやがる……
「き、来やがった!くるなぁぁ!!!」
そしてヤツが俺達の視界に入る。
そんなヤツの姿を見たヨボは恐怖のあまり魔力の玉をヤツへと放つ。
カキンカキンッ!
しかしヤツの体には傷1つ付かない。
そしてヤツは脚が止まる俺達に接近しヤツの持つ7色に輝く鋭い刃を振り上げる。
「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
そして7色に輝く刃をヤツは容赦なく振り下ろされる。