【181話目】 集まりし者達
道を馬車で進み、ようやくセリティアさんに知らされていた集合地点に付近までやってくる。
「着いたぞ」
馬車を運転しているデイが俺達に声をかける。
ここはディハンジョン近くの荒野、辺りには何もなく見晴らしが良く近くに来たものをすぐに視認できるという利点がある。
そんな場所に仮拠点として複数のテントが張られていた。
俺達は馬車から降りて歩く。
今回の掃討任務に呼ばれたであろう人達と何人もすれ違う、外にもいるがどうやらテント内にもいるようでもう既にかなりの人数が来ているようだ。
そしてそんな場所を歩いていると感じることはある。
「なんか……見られてない?」
俺は一緒に歩くデイ達にそう小声で囁いた。
歩いているとそこら辺にいる人達からの視線が集まっているのがわかる。
その視線は新しい人が来たというものなのかはたまた……
「まぁお前じゃねぇか?」
「えっ?」
デイの返答に素っ頓狂な返事を返す。
「だってお前、十戒士を倒したって話結構広がってると思うぞ?」
「あぁ…………」
あぁ十戒士絡みか……確かにサンスインには俺達以外にも他都市から来たって人は沢山いたからそこから……?
でもこんな感じで目立つのはあまり慣れてない……やりづらい……
そんな事を考えてると真正面から人が歩いてきてるのがわかる。
身体は俺達よりも多少小柄なその少年は俺達に違和感なく近付き、そして……
腕にゴツい岩を纏い俺に殴りかかってきたのだった。
「ユート!!」
いきなりの攻撃にレイナが叫ぶ。
しかし俺にとってその攻撃の対処は容易だ。
「大丈夫!!」
それだけ言うと小節に風の魔法を纏って襲いかかってくる少年の腕を弾き纏っていた岩を破壊して剥す。
「ぬぐっ!!」
少年は自身の攻撃が弾かれ体をのけ反らせるも再び岩を腕に纏おうとしていた。
そこに間髪入れず、少年の腹部に強く回し蹴りを入れテントへと突っ込ませる。
今の攻防でわかる少年の実力……大体十戒士候補よりも弱い程度である。
少年は起きあがろうとするもダメージがダメージが大きいのか、うまく起き上がれていない様子。
俺達の騒動で少しばかり人が集まってくる。
このままだとまずいと思い俺はなんで攻撃してきたのかを聞くために少年に近付こうとテントへと歩こうとした
その瞬間であった。
「──待つでござる」
そんな物語の侍のような口調が聞こえたと同時に背筋に寒気が走る。
このまま動けば無事では済まない……そう思えるほどの威圧感を背後の男から感じ取っていた。
「お主、その者に何をする気でござるか?
拙者らはこれから共に戦うべき仲間……その仲間に何をする気かと問いてるでござる!」
ジャキッ……
背後から聞こえてくる金属が擦れる音が聞こえてくる。
刀か……?
いや今はそれは一旦おいておけ、今するべき行動は……
「いや、先にあっちからやってきたから反撃しただけで俺自身は敵意はない……」
俺は両手を上へ伸ばし攻撃の意思はないことを表す。
そもそもだ俺は被害者サイドだ、出来ることならこれ以上の戦闘は控えたい。
そう思いながら俺は頭だけを後ろへと振り返らせ白金の瞳で後ろにいる人物を見た。
長髪をポニーテールのように後ろでまとめ、目は鋭くこちらを睨みつけており服装は和服を若干着崩した格好をした少し老け顔の青年が腰の刀に手を添えまるで居合いの構えをとっていた。
彼のその格好はまるで侍を思わせるようだ。
「だ……そうでござるが、そちらの童はどうでござるか?」
背後の侍の男は俺を襲った少年に向かって問う。
以前、威圧感を放ったまま……
なんだこの威圧感……この感覚、まるで結界魔法のような……いや違う似てはいるけれど明らかに別の何か……
そして少年は起き上がる。
「…………が」
「が……?」
何か少年が言いたそうにしてたので聞き直そうとした……その時だった。
「さすが!さすが!!!さすがユウト!!!!」
いきなり俺へと飛びかかってきた、あまりにも急すぎて俺は回避できずに少年に抱きつかれたのだ。
「えっ……?」
「な、なぁぁ!?」
あまりの出来事に俺は唖然としそれを見ていたレイナは驚愕の声を上げる。
「ちょっとダイヤ!何してるの!?」
そんな時、少し離れた場所からピンク色の髪の女性がこちらへと向かってきていた。
「だって!ユウト!!」
「はいはいわかったから……すみません、ウチのがご迷惑をかけました」
やってきた女性は俺から少年を剥がしながら謝罪してきた。
「この子、十戒士を倒したユウトさんが来るって聞いて凄くはしゃいじゃってまして……」
「強かった!あっ、オレはダイヤ!よろしく!!」
謝罪している女性とは裏腹に元気そうな少年ダイヤ、茶髪で無邪気な笑顔を浮かべてくるその子はどうやら俺のことを聞いて戦いたかったらしい。
「それでは私達はこれで本当にごめんなさい……ほらいくよダイヤ!」
「あ〜引っ張らないでよラーラ!!また!ユウト!!」
そしてダイヤはラーラと呼ばれる女性に引きずられるようにしながらも俺に手を振りながらその場を離れて行った。
静かな空気が慣れたが……そういえばもう1人……
「……って事だけど?」
俺はそう言って改めて後ろを振り返り侍のような風貌の男に話しかける。
まぁ互いに誤解があったわけだったが彼の反応は……
「いやぁ申し訳ない!拙者の早とちりでござった!!」
と気前よく謝罪をしてくれたのだ。
「それにしてもお主がユウトでござったか!その節はお世話になったでござる!」
と彼は続けざまに言葉を発した。
ん?お世話になった……?なんの事だ?
俺の記憶では彼と出会ったことなんて一度もない、それなのに彼は俺と何やら面識があるみたいな言い方だった。
「えーっと、誰かと間違えてません?」
俺は彼に聞く。
俺にこんな侍の知人なんていないぞ?
「いや、間違えてはおらぬ。拙者はゲン・クゥでござる!弟が世話になった!」
ゲン・クゥと名乗った彼は俺の問いにそう答えた。
弟……いったいなんの事だ……?
いや待て、ゲン・クゥ?どっかで聞いたことあるような…………
俺が彼のことを思い出せずにいるとデイが俺の近くにきて。
「もしかして……ドウ・クゥの事じゃないか?」
と耳打ちで話してきた。
ドウ・クゥ?えーっと確か……
「マジックフェスティバルで一回戦ゲドウに不戦敗したあの」
デイの言葉でようやく彼を思い出す。
そうだマジックフェスティバルだ!
そういやそんな名前の人いたな、会ったことすらないからまったくわからなかった。
「あ〜ドウ・クゥの事……」
ようやく思い出した俺は目の前のゲン・クゥに確認するように話す。
「そうでござる!弟の無念を晴らしてくれた事、誠に感謝する!!」
俺の言葉を聞くなりゲンは頭を下げて俺に感謝の言葉を述べる。
無念を晴らしたと言われても……俺個人としても奴をボコボコにしてやりたかったってのもあったからなぁ……
「いえいえ、そんな感謝されるほどのことでは……俺個人としてもアイツを許せなかったですし…」
俺はゲンの言葉に遠慮するようにする。
「それでもでござる、結果として弟の敵討ちをしてくれたことには変わらぬでござる!
この仮はこの任務にでも拙者の方から返す所存でございますのでどうぞよろしく!!」
そしてゲンは俺に向かって手を差し伸べ握手を求めてきた。
まぁ色々とありそうだが、この人は悪い人ではないし断る理由はないな!
そう思い俺は握手に応じた。
そして任務開始の時が刻々と迫ってきた。