【180話目】 人の形をしたモノ
俺達はディハンジョンへの道を馬車で進む。
現在はデイの運転に揺られながら俺は昨日のことを思い出していた。
あの美しい竜について俺は静かに考えこむ。
色々と思うところはある。
人語を介す魔獣の事だとかそもそもなんであのドラゴンはあんな傷を負っていたのかだとかそれはもうたくさん……
でもまぁ俺が考えても結論は出ないだろう。
そんなことを考えていた時だった。
ギィッッ!
いきなり馬車が止まり、座ってた俺達は多少バランスを崩した。
「どうしたデイ!?」
いち早く体制を立て直した俺は馬車を運転しているデイにそう声をかける。
「どうやら団体様のご登場だ……」
デイの発言を聞き外へ飛び出す。
そして俺達の目の前に現れたのは……
人、のような形をしたナニか。
見ただけでわかる、ぱっと見は人ではあるが眼が真っ青であり肌の色が赤くなっている、そういったモノが数十人ほど馬車の前に立っていたのだ。
「クソッ!数が多い……」
「──おせ……」
デイが焦るように辺りを見渡しながら発言した時、人型のナニかが口を開く。
「──よ、こせ……」
寄越せ?一体何を……
「気を付けて!ユート!こいつらが昨日言った人の言葉を話す魔獣!!」
モヤ達の言葉に疑問を抱いていると隣にいるレイナが注意を促してきた。
こいつらが昨日レイナが言ってた魔獣……そしておそらく昨日のドラゴンも言っていたやつ!
戦闘能力のないパートリー以外全員が戦闘体制へと移っている、だから俺は……
「待ってくれ!」
みんなにそう呼び止めた。
「どうしたユート!?」
「ユート……まさか……」
俺の言葉を聞いて多分みんな不安がよぎったのだろう、俺がこの魔獣達を殺せないというそんな不安が……
「コイツらは……俺1人で倒す!」
しかし俺はそんな不安とは逆に1人でこの魔獣の討伐を宣言した。
俺は魔獣へと近寄るために前にいるゼン達を追い越しながら歩き出す。
「ユート……」
皆が不安げにこちらを見ている。
「大丈夫」
彼ら彼女らに笑顔で答える。
これは俺なりの覚悟の証である。
そして魔獣である人型のモノたちの目の前までやってくる。
「よぉ……こぉ……せぇ!」
彼らはただそういうだけで何もしてこない。
「何がほしいんだ?」
俺はそのモノらに寄り添うように耳を傾ける。
「お……お……」
「お?」
寄越せ以外の言葉が彼らの口から出てきて、聞き返すようにする。
「おまえ……たちの……」
俺の中で結論が決まり始めた。
あぁ、彼らは……
「いのちっっ!!」
魔獣がその発言と共に襲いかかってきたその瞬間には、俺は風の刃でその魔獣の喉元を掻き切った。
コイツらは魔獣だ、俺達とは相容れない。
1匹やられた魔獣達は俺目掛けて襲いかかる。
「ユート!」
後ろからみんなの俺を呼ぶ声が聞こえた。
その声はどこか不安そうで焦りを感じる。
だから俺は……
「みんな……まかせろ!」
そんな彼らに安心させるよう一言だけ発して戦闘へと移る。
ジン器を手に構え、襲いかかってくる魔獣達を次々と切り捨てていく。
速くはあるが俺を狙ってくるという単調な動きから回避は余裕でそれからの反撃により1匹1匹を確実に潰していく。
ただ魔獣達を蹂躙していく。そんな光景が変わらないままに魔獣達は全滅しその場には返り血だけを浴びた俺が立っている。
「ユート……大丈夫?」
レイナが俺に心配するように近付き声をかけてくる。
「あぁ、俺は大丈夫だ!」
これが俺なりの覚悟、たとえ人と似ていても俺は魔獣を殺せる!
その認識がディハンジョンへ着く前にはっきりと出来てよかった。
「まぁ大丈夫ならいい、さぁ乗れ!もう少しで到着だ」
デイの言葉を聞き俺たちへまた馬車に乗り込み進む。
さぁもう少しでディハンジョンだ!