【17話目】結果発表!
コンコンコン
コンコンコン
朝、扉を叩く音で目覚める。
俺はベッドから起き上がって、扉を開けに玄関まで歩いて行った。
玄関まで着いて俺は扉を開けた。
俺の部屋にやってきた訪問者は、レイナだった。
「おはよう、ユート。もうすぐ試験の結果が出るよ!一緒に見に行こうよ!」
そういえば今日は、試験の結果発表の日だったなと、思い出す。
どうやらレイナは、一緒に試験結果を見に行こうと俺を誘いに来たようだ。
「あぁ、わかった。着替えるからちょっと待ってて。」
そう言って俺は扉を閉めて着替えに戻った。
試験結果か、合格出来るか少し不安だ。
そう思いながら着替え終えて、俺は部屋から出て、レイナと共に結果が発表される場所へと向かった。
結果が発表される場所は、食堂の前の少し開けた場所でされている。
もう結果が発表されているのか、多くの試験生が結果が出ている紙が貼ってある壁に密集しており、ここからでは結果が見えない。
多くの試験生は自分の合否を見て喜んだり、悲しんだり、悔しがったりしてその場を離れずにいた。
すると、その密集している場所から1人の男が離れて歩いていた。
その男はザーコオと共にいて、戦闘試験でデイと戦ってボロ負けした男だった。
その男はトボトボと歩いている。
その表情は暗く、この世の終わりみたいな絶望顔をしていた。
その顔を見て恐らく、試験に落ちたのだろうと俺は思った。
そのまま男は足をふらつかせながら俺の事が見えなくなっているのか、俺達を無視して横を通り過ぎて自分の部屋の方へと行った。
そんな事はさておき、俺はレイナの顔を見合わせて自分が合格しているか別々で確認しに行った。
何故なら試験の合否については、紙に名前で五十音順で書かれているようで、俺は神洞の頭文字である"シ"の方から見に行こうと頭文字が"レ"であり、"シ"とは別の場所にあるレイナとはひとまず別れて見に行った。
見終わった後また合流しようと約束をして。
時間がある程度経った為か、人混みが若干解消されていて、俺は少し強引に人混みの中を割って入って行った。
しばらく人混みを掻き分けていくと、合格者が書いてある紙が見える所まで着いた。
俺は必死になって自分の名前が書かれていないか確認していた。
サ行を発見して、"シ"の場所が目に入った。
そのまま血眼になって"シ"のゾーンから俺の名前を探した。
しかし、俺の名前が無いまま"シ"のゾーンが終わってしまった。
俺は何回も見直したが、シンドウという名前は見当たらなかった。
名前が無くて唇を噛み悔しそうにする。
だが、俺にはまだ望みがあった。
実はこの発表の頭文字は、苗字ではなく名前の方だった。
なので俺が合格発表されるんだったら"ユ"の方で発表されるのが自然だったが、不安だった為にまず"シ"の方から見たのだった。
結局、"シ"の場所に名前が無かった為"ユ"の方へと移動した。
すぐに"ユ"の場所へと着いて名前があるか確認する。
結果はすぐにわかった。
ユイン・クリルという名前の下にしっかりと
ユウト・シンドウという俺の名前が書かれてあった。
「よしっ!」
自分の名前を見つけて少し嬉しくなり、その場で小さくガッツポーズをとった。
ガッツポーズをとった後、他の人の邪魔にならないように俺は人混みから離れた。
人混みから抜けて、辺りを見渡しレイナを探した。
レイナはすぐに見つかった。
人混みから少し離れた場所に他の人といた。
しかし、レイナは涙を流して泣いていた。
もしかして試験に落ちたのか!?
そう思って、レイナの方へと駆け寄った。
レイナの近くに寄ると、その側にいた奴の事に気付いた。
レイナの近くにいたのはデイだった。
何故か2人は一緒にいた。
レイナは顔を上げ、俺の事を泣きながら見た。
「ユ、ユート……」
泣きながらレイナは俺の名前を呼んだ。
デイは何も喋らず、ただ立っていた。
「どうした?もしかして、落ちたのか?」
俺はレイナにそう聞いたが、レイナは首を横に振った。
どうやらレイナは、落ちてはいないようだ。
なら何故?
俺はそう疑問に思った。
「私は受かったけど、ユートが……」
え?
俺がどうしたのいうのだろうか。
「ユートの名前、探したんだけど無くて、もしかして、試験の時の事が問題になって不合格になっちゃったんじゃ無いかって……」
俺が試験に落ちた?
そんな筈はない、俺はさっき確かに自分の名前があったのをこの目でしっかりと見た。
それにレイナが言っている試験の時の事は、恐らくヴァーリンの事だろう。
俺が思うにヴァーリン自体はもし、俺を権力で落とせるのだとしても俺を落とすなんて事は多分しないと思う。
理由はというと、彼女は去り際にしっかりと俺に『学園で会った時は覚えていなさい。』と言った。
彼女は、俺に負けた時の約束をしっかりと守ってレイナに謝った。
約束は守る主義の彼女にとって、俺に言った事を曲げるとは思えない。
もし、俺を落とそうとするんだったらどっちかと言ったらヴァーリンの執事の方だろう。
だが、俺の名前があったのは事実である。
そんな俺を落とすなんて策略的な事は無かったのだろう。
しかしなんで、レイナは俺の名前が無かったと言っているか疑問に思った。
「え?俺の名前はあったよ。」
と俺は不思議そうに言った。
「えっ本当に?」
レイナは顔を上げてそう聞いた。
俺のその言葉にデイも反応した。
「本当だよ、ほらあの辺りに。」
もう大分、時間が経っている為か人混みは結構薄れていた。
俺はレイナ達を連れて俺の名前の所へと連れて行った。
レイナとデイは俺の名前の書いてあるところを見た。
レイナは俺の名前の見て訳わからない顔をしていた。
「えっ?ユ、ユウト?ユート?え?」
レイナは何度も俺の名前を呼んでいた。
レイナが呼んでいる俺の名前は、呼ぶごとに何故かイントネーションが違っていた。
あれ、もしかして?
俺は、今まで感じていたレイナの俺への呼び方の違和感に気が付いた。
いや、でもそんな事あるか?
「えっと、レイナ?い、一応俺の名前はユ"ウ"トだよ。」
まさかとは思ったが、俺はウを強調して、レイナに俺の名前をまた言った。
俺の名前を聞いたレイナの動きが固まった。
レイナの白い肌が、だんだんと赤くなって、体がフルフルと震えていた。
あぁ、どうやら俺の予感は当たっていたようだ。
レイナは俺の名前をユウトではなく、ユートと間違えていたようだ。
ウとーを間違える事なんか普通あるのか?
いや、この世界の名前は、日本で使われている名前とは違う。
どちらかといえば、海外で使われている名前がほとんどだろう、日本形式の名前にあまり馴染んでいないレイナにとっては、間違えてもおかしくないのかも知れない。
「ご、ごめんなさい。私、ユ、ユウトの名前ずっと間違えてたままで。
嫌、だったよね。」
さっきまで体が固まっていた、レイナが謝罪をしてきた。
まぁ、レイナが間違っていたとはいえ、俺だってその間違いにずっと気付けずにいた。
俺だってわからなかったんだ、悪いのはレイナだけではない。
「いや、こっちだって気付けなかったのが悪いし、それに嫌ではなかったよ。」
そうレイナに伝えた。
それにしたって、レイナもそうだが、デイも俺が不合格になったと思ったという事は、名前を間違えて覚えているのだろうか?
「そういえば、デイも俺の事試験に落ちたとか思ってたみたいだけど、俺の名前をユートって間違えてたのか?」
俺はそうデイに聞いた。
「いや、俺は名前があったのを見た後、泣いてるレイナを見かけたから訳を聞いたら、ユウトが落ちたって聞いただけだ。」
いや、聞いただけかよ!
そしてしれっと、自分が合格したのをデイは報告してくる。
その言い方だと、デイは俺の名前の事は間違えて覚えてはいないのだろう。
「こ、今度からはちゃんと呼ぶね。ユーいいや、違う。ユ、ユウ……」
デイと話しているとレイナが俺の名前を言いずらそうに言っていた。
今まで呼び慣れていた呼び方をすぐに変えろというのは、難しい事だろう。
こういった時にどう行動すればいいかわからないが、俺がとった行動は。
「よかったら、今までと同じ様にユートって呼んでくれないか?
なんだかその呼び方の方がしっくりくる。」
俺はレイナにユートと呼んでくれるように言った。
本名とは違って、なんだか親しみ易くていい呼び方だと思う。
元の世界で俺の事をあだ名で呼んでくれた人は、"あの子"以外いなかったからなんだか少し嬉しく感じる。
「いいの?」
レイナは心配そうに聞いてくる。
「あぁ、俺は構わないよ。」
俺はやさしい口調で返した。
その言葉を聞いたレイナの顔が笑顔に変わっていった。
「わかったわ。それじゃあ、これからもよろしくね、ユート。」
レイナが笑顔で俺に言った。
その表情は明るく、俺には眩しく感じる。
「お〜い、俺の事忘れてないか?」
自分が忘れられているのが気になっていたのか、デイが俺の肩に腕をまわして、近くまで引き込んで、レイナとの会話の間に入ってくる。
「なぁ、俺もユートって呼んでいいか?」
デイはそのまま、俺にあだ名で呼んでいいか聞いてきた。
別に呼ばれて嫌な感じはしないし、もっと仲良くなりたいから拒否する理由はないな。
「あぁ、いいぜ。それと、これからもよろしくな、2人とも。」
俺はデイのあだ名で呼ぶ事を許可して、レイナとデイによろしくと伝えた。
俺の言葉を聞いてレイナとデイは笑った。
俺はレイナとデイにつられ、笑顔を造って笑う。
なんだかんだあったが、これで3人とも試験に合格し、一緒に学園に通う事になる。
学園生活が楽しみになってくる。
これからどんな出来事が待ってるんだろう?
その後、俺達はひとまず別れて、自室へと帰って行った。
俺は自分の部屋の前に置いてあった大きな箱を見ていた。
なんだろう、そう思って見ていると箱に宛名らしき物が書いてあるのに気付いた。
ユウト・シンドウサンアテ
どうやらこの箱は俺に送られてきた荷物らしい、俺はその荷物を自分の部屋へと運んだ。
何が入っているかはわからないが、想像よりも荷物が重たくて部屋に運ぶのに苦労した。
誰が送ってくれたのか、何が入っているのかわからない俺は、部屋に荷物を入れた後、ゆっくりと箱を開けて中身を確認した。
箱に入っていたのは黒色の服、本が何冊かあり、その上には手紙が置いてあった。
誰からの手紙だろうか?
俺は手紙を取って差出人を見た瞬間、俺はハッと驚いた。
そこに書かれてあった名前は。
セリティア・パゼーレ
俺が異世界に来た時に助けてもらって、魔法学園に通うように誘ってくれた人だ。
その人がくれた手紙を俺はすぐに読んだ。
手紙はほとんどカタカナで見にくかったが、大体の内容はこんな感じだ。
『試験合格おめでとうございます、ユウト。
一応、学園の関係者ですので、早めに貴方の合格を知る事ができ、こうしてすぐに学園に必要なものを揃えて、貴方に届ける事が出来ました。
私からは、学園の制服と教材一式を送ったので、是非使ってください。
1年という短い期間ですが、友達を多くつくって、学園生活をたのしんでください。
ですが、貴方がもう少し長くこの世界に居たいというのなら、もっと居てくれても私は構いません。
もし、その気があるなら、私に手紙をください。
それではユウトの学園生活が充実する事を願ってこの手紙を終わりにします。』
所々端折ったが、手紙の内容はこんな感じであった。
手紙を見終わった俺は、荷物の中に入っていた教材を手にとった。
教科ごとに何冊も入っていたが、文字がカタカナばっかりで読んでいると頭が痛くなりそうだったので、俺は教材達を箱に戻した。
教材をしまった後、俺は箱に入っていた制服を手にとった。
制服は黒を基調として、複数箇所に黄色やら赤色の線が入っている物だった。
制服を持った俺は、すぐに着てみたくなったので、制服に着替える事にした。
制服のサイズは俺の体にはピッタリだった。
異世界に来た初日に行った洋服屋で寸法していたからだろうか?
俺は黒より白色の方がいいなぁ。
部屋に飾ってあった鏡越しに制服を着た俺の姿を見てそう思った。
制服を着た事で、学園に入学する事に実感が湧いてくる。
あと数日で入学だ、少しは入学の準備とかしておこう。