【174話目】 あの日の焼景
真っ赤な炎に包まれた小さな村、私がいた村だった。
村を包む狂気の厄災、みんなみんなみんな殺されていくのを私は何もできずただその厄災が消えるまで隠れていた。
そして焼け野原になった村にとある集団がやってくる、凶震戒と名乗った人達に私は拾われた。
それは私、フレリアに強く刻まれた記憶。
──
「…………またあの夢」
自室のベッドの上で目を覚ます。
私は身支度を済ませて部屋を出た。
ここは凶震戒のアジト。
いつもはシルドお爺ちゃんに連れてきてもらうから、どこら辺にあるかなんてわからない。
そもそも場所なんてほとんどの人が知らされていないしどこにあるかなんて私には関係ない。
「起きたか」
廊下で背後から聞き覚えのある声をかけられて振り返る。
「──おじさん!!」
彼を見て笑顔を浮かべる。
この人は私と同じ十戒士のブラッドハンドって呼ばれてる人。
こうやって顔を合わせるのは久しぶり!
だから私はいつも通りに……
「遊ぼうよ(戦おうよ)!おじさん!!」
フレリアは笑顔でブラッドハンドにそう告げた。
彼女にとって戦いは遊び、楽しむ為の行為である。
強い相手ほど戦った時に感じる楽しさが増えるいわば戦闘狂といった人種だ。
それゆえに彼女は……
「断る、だいたいお前の相手は面倒だ」
「え〜!一回くらいいいじゃん!!私おじさんと戦ったことないんだよ!!」
やれやれ……といった表情でブラッドハンドは断る。
それに対してフレリアは頬をプクーっと膨らませて怒る。
「疲れてるんだ、ボスに報告が終わったから俺は部屋で寝る」
ブラッドハンドはそういってフレリアから背中を向けて離れていく。
「も〜!だったらなんで私のところに来たの!」
離れていく彼の背中を見ながらその場で何度も強く足踏みをしてフレリアは怒る。
「もういいもん!お義父さんに構ってもらうもん!!」
不貞腐れるようにフレリアはその場から離れる。
彼女がお義父さんと呼ぶ存在、それは凶震戒においてボスと呼ばれる人物であり彼がフレリアを拾った事でそのような関係になっている。
フレリアが訪れたのはボスの部屋、扉を開けた瞬間に攻撃を仕掛けて遊んで(戦って)もらう、それが彼女にとっての日常。
けれどその日は違った。
ボスの部屋で声が聞こえたので攻撃はやめて聞き耳を立てる。
「そうか、やはりクラディは叛逆しようとしていたんだな」
「はい、なので指示の通りに」
部屋から聞こえる声……これはボスとアーサーの声である。
話の内容はサンスインでのクラディの反乱についての報告の様子。
私が戦いたかったな〜と思いながらもフレリアは会話の続きを聞く。
「よくやった、それで何かあったのか?」
「えっ?」
「お前のその顔を見ればわかる、何か良き事があったのだな?」
私からは見えないがどうやらアーサーは嬉しそうな顔をしているらしい。
なんだろう、すぐにでも部屋に突入したいのに私はこの話が聞きたいと思ってる。
予感……私の心を動かすような事が起きる気がする!!
「はい、サンスインで1人強き者を見つけました。その者はクラディと……我ら十戒士に近しい実力、潜在能力を備えておりまして……」
強き者……!
アーサーが認めるほどの人がサンスインに!?ますます私が行きたかった!
どんな人なんだろう?どこの人なんだろう?戦いたいなぁ。
「そうかお前が認める奴か……して名前は?」
「ユウト……ユウト・シンドウと名乗るパゼーレの者です」
ユウト……シンドウ?
胸の鼓動が早くなる……だってその人を私は知ってる!
彼は私がバットルで見つけた人……強くなるって確信していつかは戦いたいって心に決めていたお兄さん!!
そうか〜もう私達と戦えるまで強くなったんだ!やっぱり私の人を見る目は確かだったんだ!
気分があがってウキウキ気分で扉から離れる。
でも見つかってしまった、アーサーに見つかってしまった。
私より先に彼がユウトと戦って負けたらきっと殺される、彼はそういう人だ!
だから……誰かに殺される前に私が戦ってあげないと。
ならもう行動に移さないと!今すぐにでもユウトと戦いに行く!!
あぁ、あの人がどれだけ強くなったのか今から戦うのが楽しみだなぁ〜